子ども分野・総評(2011年募集事業)

選考委員長 明石要一
選考委員長 坪井節子 社会福祉法人カリヨン子どもセンター

 この度、Panasonic NPOサポート ファンド 2011年 子ども分野(組織診断助成) 選考委員会の委員長を仰せつかりました。私自身、虐待等で居場所を失った子どもの緊急避難場所を運営する法人の責任者を務め、日々現場の子どもたちへの支援活動と共に、法人の組織基盤強化というテーマに向き合わされている者のひとりです。Panasonic NPOサポート ファンドが、既に10年にわたり、日本のNPOの活動の発展のため、活動費そのものへの支援ではなく、活動母体たる法人組織の基盤強化に取り組んで来られた、その先見の明には、驚きと敬意を覚えずにはいられません。そのようなファンドの選考委員長をお引き受けするということは、誠に畏れ多いことではありましたが、他の委員がそれぞれに子どもの支援分野での活動を担いつつ、当ファンドの選考委員をお務めになり、深い理解と知見をお持ちの方ばかりであること、運営事務局の視点の確かさと準備の周到さを支えとして、私自身の学びのためにもと、着任させていただいた次第です。そのような立場から、今回の選考委員会の審査を経ての総評をさせていただきます。

 審査は、応募されたすべての団体の応募書類を、各委員が事前審査をし、団体要件、社会的意義、問題意識の明確さ、活動(組織診断)に取り組む適時性、取組内容の計画性、組織の変革、創造性、社会貢献性などから分析し、ABCの総合評価をつけました。この審査をもとに、9月20日に選考委員会が4時間にわたって開催され、応募団体ごとに各委員が意見を述べ、討議するという形で、最終的に、グループコンサルティング希望5件、個別コンサルティング希望3件の団体への助成を決定したものです。

 今回の応募数は20件という、例年になく少ない件数であり、特に外国の子ども支援を目的とする団体からの応募が減りました。これはまず、助成対象団体に、設立後3年経過、経常収入1,000万円以上、有給常勤スタッフ1名以上という条件を付したこと、今回の助成が、組織診断事業助成とキャパシティビルディング事業助成の二段構えになったことから、組織診断事業助成の趣旨が十分に浸透していないということ、東日本大震災の被災者支援のために多忙となり、応募を行う余裕のない団体も多かったのではないかということが理由と思われます。

 まず応募要件についてですが、残念ながら応募された団体の中にも、この点について十分に理解されていない応募が、多数見受けられました。条件を満たしていないために応募を断念したであろう、他の多くの団体との公平を期するため、今回は応募内容の如何にかかわらず、条件を満たしていないものについては、審査対象としないということにしました。ただ応募要項には「直近の会計年度の経常収入が1,000万円以上であること」とされており、パンフレットには「財政規模が1,000万円以上であること」と記載されていました。今回の応募案件の中に、直近の会計年度の経常収入は1,000万円に若干届かないが、その前年度の経常収入額を平均すると、1,000万円以上となるものがありました。上記記載の齟齬が誤解を招いたことも考えられるので、この応募案件については、「財政規模1,000万円以上」に相当すると判断し、審査対象にしました。

 条件を満たしている応募案件については、上述した評価項目にしたがい、審査をしました。社会的意義の認められる活動を担っているが、現在、目的達成のための手段、人的体制、活動資金などに組織課題を抱えていることが明確に自覚されており、外部のコンサルテーションを受けて、組織課題の解決とさらなる発展をめざそうという姿勢が認められる団体については、委員の評価は助成の方向で、概ね一致したと思います。推薦された団体についての講評は、別項をご覧ください。

 審査の過程で、組織課題を団体全体で共通の認識としているのか、グループコンサルティングを一部のメンバーが受け、これを団体全体で共有をする方法が取れるのか、かえって個別コンサルタントを招き、全員で組織課題の発見と解決を模索するというプロセスが必要な団体もあるのではないかという議論がありました。今回の助成を受けられた団体は、是非、組織診断の経過および結果を、法人全体で共有する努力をして頂きたいと思います。

 また団体として、現時点で組織課題と考えていることが、真の課題ではないかもしれず、また解決策と考えていることが、必ずしも最善の策ではないかもしれない、だからこそ、外部のコンサルタントの指導助言を受け、最善策をあらためて模索する必要がある、という柔軟な姿勢をもって頂くことが大切という指摘もありました。

 なお、明確な目的意識をもって組織の拡大、発展をめざしている団体でも、外部のコンサルテーションを受けるのではなく、内部研修による担い手の養成を目的としている応募内容については、今回の助成の対象とはならないものとされました。

 選考委員会の推薦を受けた団体については、事務局が個別訪問をして、詳細なヒアリングを行いました。その結果いずれの団体についても、助成を行うということを決定いたしましたのでご報告します。

 今回の助成を受けた団体が、基盤強化のための組織診断の意義と効果を実証し、次年度以降の当ファンドの助成がますます実りあるものとなることを願います。

選考委員

坪井節子

社会福祉法人カリヨン子どもセンター 理事長(★選考委員長)

坂口和隆

特定非営利活動法人日本NPOセンター 事務局次長

米田佐知子

特定非営利活動法人神奈川子ども未来ファンド 事務局長

小川理子

パナソニック株式会社 コーポレートコミュニケーション本部
社会文化グループ グループマネージャー