アフリカ分野 2017年募集事業 選考委員長総評

「アフリカの国連」と言われるアフリカ連合が、今後のアフリカの50年プランである「アジェンダ2063」を制定してから4年、国連が2030年に向けた世界の目標である「持続可能な開発目標」(SDGs)を制定してから2年がたちます。アフリカでも、1960年代の独立以降の多くの苦難を乗り越えて、「持続可能な開発と包摂的な成長を基礎とした、繁栄するアフリカ」(アジェンダ2063)に向けた努力が、政府、民間セクター、市民社会等の努力で進められています。

その一方で、アフリカでも世界の他の地域と同じく、経済成長が一部の富裕層への恩恵に留まり、多くの人々の貧困化や格差の拡大が目立つ状況となっています。結果として、アフリカで活動する多くのNGOからは、全体的な治安の悪化や犯罪の増加などで、NGOの活動環境はむしろ悪化した、という声が多く聞かれるようになっています。紛争も、最悪の状況であった90年代よりは少なくなっているものの、以前から存続してきた低強度の紛争が拡大する、また、イスラーム聖戦主義によるテロリズムが波及するといった状況も生じています。
アフリカの問題はもちろんアフリカの風土や歴史、社会に根差しているものですが、これが世界の経済・政治のトレンドによって増幅され、アフリカが自らの力で自立し、「繁栄するアフリカ」を作り出していくことを一層難しくしているのです。

日本は、こうしたアフリカの状況に対して、TICAD(アフリカ開発会議)という外交ツールや、ODAによる援助、さらに民間セクターの進出によって向き合い、取り組もうとしています。多くの日本のNGO/NPOはアフリカの人々とともに歩んできました。日本とアフリカが市民レベルでつながり、日本とアフリカとの関係をよりよいものとし、日本の貢献が「持続可能な開発と包摂的な成長を基礎とした、繁栄するアフリカ」の構築に資するものにしていく必要があります。
「Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ」は、アフリカに特化した唯一のNPOを支援するファンドとして、7年間、アフリカとつながる日本の市民の取り組みを、「広報基盤の強化」という観点から支援してきました。

今回、NPOサポート ファンド for アフリカには、新規9件、継続2件の11件から応募がありました。新規応募の中から、「紛争ダイヤモンド」の問題に注目し、現場から課題解決の取り組みを進める「ダイヤモンド・フォー・ピース」、アフリカゾウの密猟と象牙取引の問題に取り組む「アフリカゾウの涙」という、アフリカの個別・具体的な問題に取り組む2団体と、日本のNGOがずっとアジアで実施し、実績を上げてきた草の根開発のための手法を、アフリカにも導入し、取り組むことをめざした「ムラのミライ」が、新規助成の対象として選ばれました。また、アフリカの水・衛生問題に関する日本の市民レベルでの理解促進に取り組んできた「ウォーターエイドジャパン」が継続助成として採用されました。

アフリカと日本の距離は、以前に比べても、物理的にもずっと近くなってきていますし、より多くの企業などの進出によって、経済的にも近くなっています。一方で、NGOによる社会的な取り組みや、90年代から2000年代にぐっと強化された音楽、ダンスなどの文化・芸術面でのつながりは、以前よりも注目されなくなった感じがあります。そもそもは「遠い」アフリカ、市民レベルで距離を縮めていくための取り組みは不断に必要です。
NPOサポート ファンドfor アフリカの支援で、アフリカと日本の距離が縮まっていくことを願っています。

アフリカ分野選考委員長
稲場 雅紀

<選考委員>

★選考委員長

稲場 雅紀

特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会 国際保健部門ディレクター
一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク 専務理事・事務局長 ★

加藤 昌治

株式会社博報堂 PR戦略局 統合プラニング一部 部長

松尾 沢子

認定特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)連携グループ マネージャー

福田 里香

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケ―ション本部 CSR・社会文化部 部長