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Panasonic NPOサポート ファンド2013年募集事業贈呈式&組織基盤強化フォーラム  団体の長所を見いだし、課題解決の打ち手を引き出してくれる組織基盤強化に欠かせない「第三者の力」について考える

2014年1月23日、東京都江東区有明のパナソニックセンター東京で、Panasonic NPOサポート ファンドの2013年募集事業贈呈式と、「組織基盤強化に第三者の力をどう取り入れるか」をテーマとした組織基盤強化フォーラムが開催されました。助成を受けられるNPOの皆様をはじめ、選考委員、NPO関係者、企業の社会貢献担当の方など120名が参加しました。

第1部 Panasonic NPOサポート ファンド贈呈式

この日は厳正な選考を経て今年1年、組織基盤強化に取り組むこととなった環境分野、子ども分野、アフリカ分野の15団体に助成通知書が贈呈されました。

開会にあたって、パナソニック ブランドコミュニケーション本部の担当役員である竹安聡が挨拶をしました。

「パナソニックは社会生活の向上と世界文化の進展に寄与したいとの思いから昨年、ブランドスローガンを一新し、『A Better Life, A Better World』といたしました。事業というものは、強い思いがベースになければ成功しません。と同時に、思いを持続させる基盤や仕組みがなければ、社会に貢献し続けていくことはできません。そんな思いを共有しながら、皆さんの活動がさらに発展されることを祈念して挨拶といたします」

パナソニック 役員 竹安 聡

続いて、各分野の選考委員長から選考総評が披露されました。

環境分野 選考委員長
NPO法人 国際自然大学校理事長
佐藤 初雄さん

「NPOは行政や国に働きかけるためにも、ぜひ今日のような機会を活用し、地域だけではなく全国区でつながってほしいと思います」

子ども分野選考委員長
社会福祉法人 カリヨン子どもセンター理事長
坪井 節子さん

「今回は団体の専門性がどこにあるのか、地域でどのような広がりをもとうとしているのかという2点をメルクマール(指標)としました」

アフリカ分野選考委員
NPO法人 アフリカ日本協議会 稲場 雅紀さん
(当日は欠席のためメッセージのみ)

「広報活動の強化によって誰に何をどう届けたいのか、申請書にきちんと表現されている団体を選定しました」

NPOサポート ファンドでは組織基盤強化の有効性を測るために、助成事業終了後1年が経過した時点で事業評価を実施しています。2011年に助成を受けた21団体のアンケート調査結果を、公益財団法人 パブリックリソース財団の田口由紀絵さんが報告しました。

「調査の結果、助成申請時に抱えていた組織運営上の課題が80%以上解決したと答えた団体は、7割を占めました。活動を担う有給スタッフは平均19%増え、ボランティア数も2.5倍以上に増加するなど、組織運営の体制が整う方向にあり、活動の担い手人材の育成・強化がはかられたと言えます。
さらに組織基盤強化の取り組みにより、主要事業のアウトカム・インパクトの改善・向上がはかられたかについて5つの項目で自己評価してもらったところ、助成先団体の9割を超える団体が少なくとも1つ以上の項目について改善・向上がかはられたと回答がありました。助成を受けた団体は高い成長を続け、主要事業のアウトカム・インパクトが改善・向上していることがわかりました」

先輩団体の実績を勇気に変え、社会に協力に役立つ組織へと成長

アジア日本相互交流センター・ICAN
事務局長 井川 定一さん

市民社会創造ファンド
運営委員長 山岡義典さん

事業評価の報告に続き、2009年と2010年に助成を受けた認定NPO法人 アジア日本相互交流センター・ICAN事務局長の井川定一さんが、取り組み事例を発表しました。
ICANは名古屋に事務局を置き、フィリピンのゴミ処分場や紛争地帯の子どもたちに教育等のプログラムを実施している団体です。助成前は「自己資金が1000万円ほどで伸び悩み、繰越金は3年連続の赤字」だったといい、倒産の危機に直面していました。

「まず団体の強みとやりたいことを見直し、他団体の経営を分析して、自己資金を増やす中長期計画を立てました。さらに会報を通じて既存の関わりを強化し、職員やボランティアの研修も行いました。それから4年後には資金調達がミッションの一部として定着したことから、自己資金は約6倍に増加、プロジェクト数も倍増し、表彰を受ける機会も増えました。また自分達の組織基盤強化の経験をもとに名古屋では外務省のNGO相談員事業を受託するまでになりました」
つらく苦しい日々も、「フィリピンの子どもたちの存在」と社会課題の解決に取り組む「仲間の存在」、「NPOサポート ファンド事務局の応援やアドバイス」が心の支えとなり、乗り越えることができたそうです。

式の最後には、NPO法人 市民社会創造ファンド運営委員長・NPO法人 日本NPOセンター顧問の山岡義典さんから、激励メッセージが送られました。

「15団体の皆さん、組織基盤強化は自己変革を伴うつらい闘いですが、今日で4割近くは終わっていると言えます。自分たちの組織的な弱点と向き合い、応募の企画書を書いたことで1割。その分析が正しいか第三者の視点で見てもらったことで1割。先輩団体が取り組んできた実績に勇気を得たことで1割。そしてこの贈呈式に続くフォーラムで議論し、交流会で仲間と話し合うことによって1割が終わります。あとの6割は地元に帰って本気で取り組み、社会に大きく役立つ組織へと成長してください」

第2部 組織基盤強化フォーラム

贈呈式に続いて、組織基盤強化に取り組んだNPOやコンサルティングの専門家、地域の支援センターの実践例を交えながら、組織基盤強化における第三者の役割について考察するフォーラムが開催されました。

冒頭で、主催者を代表してパナソニックCSR・社会文化グループの小川理子が挨拶をしました。

「企業人も、あらゆる第三者の力を借りなければ、このグローバルでスピーディーな社会において競争に打ち克つことは困難です。どのような場面で、どんな力を取り入れれば、どう変革していけるのか。頭を柔らかくして、皆さんと一緒に考えていきたいと思います」

パナソニック
CSR・社会文化グループ 小川 理子

パナソニックは2001年に、NPOの組織基盤強化を応援するPanasonic NPOサポート ファンドを設立しました。以来、プログラムの改善を重ねながら一貫してNPO/NGOの組織基盤強化を応援しています。現在は「客観的な視点を取り入れた組織基盤の強化」をテーマに、第三者による組織診断を実施し、その結果を踏まえて組織基盤強化の計画を策定する「課題抽出・解決策立案フェーズ」、その計画を第三者の力を借りながらブラッシュアップして実行する「組織基盤強化フェーズ」の2段階で構成されています。第三者とはNPO支援機関やNPOの経営支援の専門家などのことで、応募団体がご自身で選定することができます。

フォーラムでは、公益財団法人 パブリックリソース財団 事務局長の岸本幸子さんをファシリテーターとして迎え、4人のパネリストと共に、組織基盤強化に第三者を巻き込むことの成果や効果、今後の支援のあり方について議論を深めていただきました。
まずは、パネリストの皆様が、ご自身の取り組みを発表しました。

専門家としての第三者、パートナーとしての第三者

プレーパークせたがや
事務局 大垣内 弘美さん

「私たちは子育て支援や遊び場づくりに取り組む団体で、2001年から3年間、NPOサポート ファンドの助成を受けてきました。第三者による組織診断で指摘を受けて初めて、意思統一や情報発信ができていないといった問題が、事務局長の不在に起因していることがわかりました。事務局体制を強化し、この冬、事務局長も就任しました。組織のベースを立て直し、ゆっくりとですが成長曲線を描きつつあります」

「仙台を中心に、被災家庭・貧困家庭の子どもの居場所づくりや学習サポートをしています。就業支援をしている組織や家計支援をしている生協と共同体をつくり、行政からの委託事業を行っています。専門家にSROI(社会的投資収益率)を測定してもらい、その結果は今後、私たちのようなNPOと行政の協働事業をサポートする際に生かしていきます」

アスイク
代表理事 大橋 雄介さん

コーズ・アクション
代表 菅 文彦さん

「NGOや民間企業の勤務を経て、4年前から、地域のNPOの広報やファンドレイジングなどの組織基盤強化をコンサルティングしています。組織診断を行うときは、ビジョン・ミッションの共有がなされているか、中長期計画はあるか、意思決定とイニシアティブは誰にあるか、人的ネットワークの広がりはあるか、といった点に注目しています」

「静岡のNPO活動センターで中間支援をしています。県内に中間支援組織は約20ありますが、指定管理者や委託業務として施設の運営運営が優先になり、中間支援としてのソフト機能が充分果たせていません。NPOに公認会計士や税理士などの専門家を派遣する事業を通じて、まず個別のNPOの基盤整備を強化を強化しようと考えました。さらにNPOに専門家を派遣する際は、NPOセンターのスタッフも同行させることで、地域のNPOの課題を共有し、専門家の解決方法に学ぶようにしました」

プラットフォーム静岡
副代表 千野 和子さん

第三者は「よいところを伸ばすコーチ」

続くパネルディスカッションでは大垣内さんが第三者の役割と、その力をうまく取り入れるポイントについて語りました。

「外部からの客観的な視点によって、自分たちの魅力や生かしどころがわかりました。私たちの中から課題解決に使えそうな素材を引き出し、打ち手をたくさん見せてくれたので、好きな方法を自分たちで取捨選択することができました。問題解決のプロセスが身につき、自分たちでも応用できるようになりました」

菅さんは支援する立場から、第三者を「よいところを伸ばすコーチ」にたとえました。

「まず団体のポジショニングを示し、オリジナリティーを発掘して自信を植えつけます。そこから導き出した結論を実行可能なシンプル・プラクティスに落とし込む。この一連の作業に第三者は力を貸しはしますが、実際に取り組むのは団体自身です」

そして千野さんは中間支援組織の役割について、「プロフェッショナルなスキルと客観的な視点をもつ第三者に仲介するのが中間支援の役割ですが、その前にまず団体の課題を把握することが重要です。自分たちの課題を把握しきれていない団体が多くありました。中間支援組織が組織診断等を通じて、団体の課題抽出、解決の方向性を示せるようなコンサルティングができるようにしていきたい」と話しました。

また会場からは、「他団体の組織基盤強化のために時間やコストを費やせる、そのモチベーションは何か」との質問が寄せられました。これに対して大橋さんは、「私たちには貧困の連鎖を断ち切るというミッションがあるが、できることは限られている。他の地域のNPOがもっと円滑に活動できるようサポートすることも、ミッション達成への近道」と答えました。

他団体から刺激をもらい、決意新たに

フォーラム終了後には、参加者同士が意見交換や情報交換をすることで親交を深める交流会が開かれました。会場で、助成先の皆さんや参加者の方に贈呈式やフォーラムの感想、抱負などをうかがいました。

環境分野の助成団体 NPO法人 どんぐりネットワーク

「今回のフォーラムでNPOのあり方や組織基盤強化の重要性をあらためて認識することができた。今回の助成を機にどんぐりネットワークをより魅力ある団体に磨き上げていきたい」(会長 小林剛さん)

「まだ取り組みが始まって1カ月足らずですが、課題をこなすので精いっぱい。素人のような私たちですが、だからこそ利用者目線で真摯に組織基盤強化を進めていきたいです」(事務局長 白井章江さん)

子ども分野の助成団体 NPO法人 はちのへ未来ネット

「青森では、今日のような成功事例を聞く機会があまりありません。フォーラムで、たくさんの事例と支援者側の話を一緒に聞けたのが、すごくよかったです」(代表理事 平間恵美さん)

「今まで和気あいあいとやってきましたが、組織のいやな面と向き合う過程で厳しい局面を迎えることもあるかもしれない。そこを乗り越えていきたいと思いました」(事務局長 井ノ上洋一さん)

アフリカ分野の助成団体 認定NPO法人 ロシナンテス

「2度目の助成となる今回は、さらに広報を充実させて成果をだしていきたい。いろいろな団体が志をもって活動していることを知って刺激をもらい、責任感をもってやらなければと身の引き締まる思いがしました」(事務局長 海原六郎さん)

組織基盤強化フォーラムに参加して

「中間支援をしていますが、情報発信や資金調達のテクニック以前に、組織としての力が弱いことに気づかせるのも第三者の役割なのだと勉強になりました。こういう取り組みが地方でも充実すれば、NPOの底上げにつながると思います」(認定NPO法人 くびき野NPOサポートセンター 新保 絵梨さん)

交流会は組織基盤強化を支援する側と取り組む側が意見を交換する貴重な機会となりました。パナソニックは、これからもフォーラムや組織基盤強化ワークショップなどを通して多くの皆様とつながり、より「Panasonic NPOサポート ファンド」をお役に立つプログラムへと進化させながら市民活動の持続的な発展に貢献してまいります。