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NPOサポート ファンド事業評価の結果 Vol.3

公益財団法人 パブリックリソース財団
チーフ・プログラムオフィサー 田口由紀絵

2010年に行った第1回目のPanasonic NPOサポートファンド事業評価では、2002年から2009年までの8年間に助成を受けた112団体を対象に、アンケート調査、およびヒアリング調査を実施した。2012年には引き続き、2010年の助成団体(22団体)を対象に、助成の成果に関するアンケート調査を実施した。
これらの評価結果から、同助成事業を実施した助成先団体は高い成長を続け、主要事業のアウトカムが改善・向上していることが明らかになった。

今回は新たに、2011年の助成団体(21団体)を対象に、助成の成果に関するアンケート調査を行った。回答内容等をもとに評価を行った結果、2011年の助成団体においても、組織運営上の課題が解決し、主要事業のアウトカム・インパクトが改善・向上したことがわかった。

1. 組織運営上の課題が解決し、組織基盤が強化された

(1)70%の団体で、助成申請の際に抱えていた組織運営上の課題が80%以上解決した

Panasonic NPOサポート ファンドの助成により2011年に組織基盤強化に取り組んだ団体のうち、有効回答を寄せた20団体のうち14団体(回答団体の70%)が、「助成申請の際に抱えていた組織運営上の最大の課題が、事業を実施することによってどのくらい解決されましたか?」という問いに対して、「目標を上回って解決された(目標の120%)」「目標どおり解決された(目標の100%)」「ほぼ解決された(目標の80%)」のいずれかにあてはまると回答した。助成によって、70%の団体で課題解決が進んでおり、本助成の有効性を示している。

目標を上回って
解決された
(目標の120%)

目標どおり
解決された
(目標の120%)

ほぼ
解決された
(目標の80%)

あまり
解決されなかった
(目標の60%)

まったく
解決されなかった
(目標の60%未満)

全体

1

5.0%

5

25.0%

8

40.0%

6

30.0%

0

0.0%

環境分野

0

0.0%

3

33.3%

3

33.3%

3

33.3%

0

0.0%

子ども分野

1

9.1%

2

18.2%

5

45.5%

3

27.3%

0

0.0%

組織基盤強化の具体的な内容については、環境分野の助成先団体においては、「中期ビジョン・中期計画」「事業開発」の策定が最も多く、10団体のうちそれぞれ4団体が取り組んだ。「中期ビジョン・中期計画」の策定に取り組んだ団体のすべてが、外部専門家のアドバイスやファシリテーションを得て、ワークショップ形式等で組織内の合意形成を行いながら取り組んでいたことが特徴的である。「事業開発」についても外部の専門家のアドバイスを得て行った団体が、4団体中、3団体を占めた。
また10団体のうち2団体は、複数の団体が連携して基盤強化事業を行う「コンソーシアム助成」を受け、アドボカシーのためのネットワークの強化や、中間支援組織の機能強化に取り組んだ。

例えば、特定非営利活動法人 森の生活では、組織規模の拡大に伴いビジョンの共有が必要になっていた。同団体では、助成事業を通じて中期ビジョンや事業モデルの策定を進めたが、その過程で事業部門の分離独立や世代交代という大きな変化が起きた。外部の視点を取り入れながら助成事業に取り組むことで、ビジョンの共有や組織体制づくりに取り組む組織文化が生まれ、組織基盤が強化されたと実感している。
また設立後約10年を迎えた特定非営利活動法人 しずおか環境教育研究会では、集客力低下などの課題を抱えていた。中期計画の策定、人材育成プログラムの策定、プログラム開発等に取り組んだ結果、若い世代の事務局職員の組織運営に対するコミットメントが深まるという波及効果が生まれた。また受託事業の割合を減らし、主催事業の収入割合を拡大するという方針転換をしたことで、総収入額は減少したものの、アウトカム・インパクトを生み出す素地ができたとの自己評価である。

助成事業によって、組織にこのような変革がもたらされた団体が複数あった。組織が変化することには痛みが伴うが、それを乗り越え組織基盤の強化につなげるために、外部のアドバイザーや、助成事務局のアドバイスが必要であったというコメントも少なからず見られた。

一方子ども分野では、組織基盤強化の内容としては前回の評価時と同様、「人材の育成」が最も多く、11団体のうち3団体が取り組んだ。そのほか、「事業開発」「ファンドレイジング」「施設の設置・改修」にそれぞれ2団体が取り組み、「中期ビジョン・計画の策定」と「データベースの整備」に取り組んだ団体はそれぞれ1団体と、多様であった。
「人材の育成」に取り組んだ3団体は、助成2年目あるいは3年目であり、腰を据えた人材育成と、人材育成の仕組みづくりを行った。育成する人材は、事業を実施する専門人材、組織運営を担う人材、事業を担うメンバーなどさまざまである。どの団体も、「目の前にいる受益者に対応することに精一杯」という状態から一歩抜け出し、組織を運営するという自覚を持ったり、事務局が意識改革をしたりといったことに、真剣に向き合い、時間をかけて組織の基盤を強化している。

そのほか、特定非営利活動法人 アトピッ子地球の子ネットワークでは、相談内容や、受益者・支援者・関係者名簿を一元管理できるデータベースを構築し、事業の効率化や情報発信力の向上を図った。ハイチの会や、特定非営利活動法人子育て支援を考える会TOKOTOKOでは、施設の設置や改修を行うことで、受益者の数やサービスの質を向上させた。

(2)助成対象団体の助成後の総収入は微増

助成前年(2010年)と助成1年後(2012年)の年間総収入を比べた場合、平均して4%の収入の増加が見られた。前回評価時の30%増に比べると微増にとどまった。内訳を見ると、寄付が平均で5倍増えたことが特徴的である。

実施翌年

現在

変化率(%)

n

変化率(%)

n

総収入額

104

19

113

18

内訳

会費

125

13

122

14

寄付

507

17

471

16

助成金・補助金等

189

19

181

18

事業収入(委託費)

168

9

115

11

事業収入(自主事業)

101

19

119

18

内訳計

108

19

109

18

総支出額

117

19

118

18

自主収入

104

19

115

18

自主収入/総収入(%)

107

19

113

18

(3)有給スタッフ、ボランティア数が増加し、組織運営や活動の担い手が増えた

助成先団体の有給スタッフ数は、常勤・非常勤をあわせると、助成実施前と現在とでは平均19%増加した。一方で無給スタッフ数は、常勤・非常勤をあわせると2%減少している。有給スタッフ数が増加傾向にあり、組織運営の体制が整う方向にあるとみられる。
またボランティア数においても、助成実施前と現在とを比べると、2.5倍以上に増加している。活動の担い手であるボランティア人材の育成・強化が図られたといえる。

実施翌年

現在

変化率(%)

n

変化率(%)

n

有給・常勤スタッフ

111

17

98

16

有給・非常勤スタッフ(パートタイマーなど)

116

11

158

12

有給計

108

19

119

18

無給・常勤スタッフ

122

3

122

3

無給・非常勤スタッフ

89

5

83

5

無給計

103

6

98

6

スタッフ計

111

21

117

21

上記以外のボランティア

181

12

259

12

2. アウトカム・インパクトの改善・向上がはかられた

組織基盤強化の取り組みにより、主要事業のアウトカム・インパクトの改善・向上がはかられたかについて、以下の5つの項目で自己評価してもらった。

   (1)受益対象者の範囲や人数の拡大
   (2)取り組んでいる社会課題の解決に対する影響
   (3)取り組んでいる社会課題について、社会の意識に与えた変化
   (4)取り組んでいる社会課題に関連した政策に与えた影響
   (5)同じ社会課題の解決に取り組んでいる他団体、企業などの行動に与えた影響

助成先団体の90.5%が、少なくとも1つの項目について改善・向上がはかられたと回答した。本助成による組織基盤強化の取り組みが、主要事業のアウトカム・インパクトの改善・向上に有効であったことを示している。

(1)「受益対象者の範囲や人数が拡大した」団体は76.2%

例えば特定非営利活動法人 しずおか環境教育研究会は、主催事業の実施回数が2011年度の202回から2012年度は307回と1.5倍に増え、それに伴い参加者も2011年度5248名から2012年度6610名と1.3倍に増加した。特定非営利活動法人 森の生活では、新たに指定管理を受けた「美桑が丘」で各種企画を集中して実施することで、これまで関わりの少なかった地域住民と新たな関わりが生まれ、2013年上半期には延べ167名の参加を得た。
子ども分野では、拠点となる施設の改修や完成、一般を対象とした講演会等の開催等が、受益対象者の範囲や人数の拡大要因としてあげられた。

大いに拡大した

拡大した

変化はない

わからない

全体

3

14.3%

13

61.9%

4

19.0%

1

4.8%

環境分野

2

20.0%

5

50.0%

3

30.0%

0

0.0%

子ども分野

1

9.1%

8

72.7%

1

9.1%

1

9.1%

(2)「取り組んでいる社会課題の解決に対して影響を与えた」団体は71.4%

環境分野では、例えば特定非営利活動法人 日本エコツーリズムセンター(コンソーシアム助成)は法規制の課題について冊子にまとめたり、シンポジウムを開催したことで、問題の存在を知らせることができ、他団体と情報を共有することで、今後の状況改善にむけての基盤づくりができたとしている。熱帯林行動ネットワークは、FSC管理材の評価において、先住民族の権利状況について適正な評価を行うことが可能になったとしている。

子ども分野では、例えば特定非営利活動法人 全国不登校新聞社は、課題の解決にあたっては「当事者からの発信」の重要性が指摘されていたが、その具体性を示すことができたとしている。特定非営利活動法人 チャイルドライン支援センターはこれまでチャイルドラインのなかった地域での活動開始、特定非営利活動法人 シンフォニーネットは下関市での「若者しごとサポートセンター」の設置や、「下関おしごとクラブ」をもとに山口県が国の「発達障碍者支援開発事業」の一環で県内4か所で「アスール・ラボ・プロジェクト」を展開するなど、具体的な事業の進展を課題解決に対する影響としてあげている団体もあった。 

(3)「取り組んでいる社会課題について、社会の意識に変化を与えた」団体は57.1%

取り組んでいる社会課題について、社会の意識に変化を与えたかどうかについては、世論、地域コミュニティ、ある年齢層やグループの人たち、ステークホルダーなどの意識、認識、意見などに変化を与えたかどうかという視点で回答してもらった。

環境分野では、例えば特定非営利活動法人 荒川クリーンエイド・フォーラムが、ごみに対する意識を「発生抑制」まで考えるように変化させたとしている。特定非営利活動法人自然体験共学センターは、同センターが活動を行う地域に意識を向け、地域の団体との連携や地域の方とのコミュニケーションに取り組んできたことで、地域の側の意識も変わり、同センターとどのように連携して地域の活性化を図るかに意識を向けてもらえる状況になったと述べている。

子ども分野では、特定非営利活動法人 アトピッ子地球の子ネットワークが、同団体による情報提供により、マスメディア等の情報で生じた誤解が解消され、疾患に対する認識や患者への理解が深まったとしている。特定非営利活動法人 チャイルド・ケモ・ハウスは、地域の企業が自動販売機や募金箱支援による同団体のサポートを通じて、日常的な社会貢献が行われるようになったとしている。

(4)「取り組んでいる社会課題に関連した政策に影響を与えた」団体は28.6%

取り組んでいる社会課題に関連した政策(国際機関、官公庁、地方自治体、シンクタンク、大学等の策定する政策)に影響を与えたかどうかという質問に対して、28.6%の団体が影響を与えたと回答した。

環境分野で政策に影響を与えた例としては、一般社団法人 環境パートナーシップ会議(コンソーシアム助成)の協働取組推進事業は、コンソーシアム団体が、地域ニーズをもとに政策提案をして実現した事業であり、2012年10月に施行された環境教育等促進法の具体的な活用を促す事例となりつつある。

子ども分野では、例えば特定非営利活動法人 プレーパークせたがやが実施した「公園活性化セミナー」で、公園の厳しい規制に悩む公園設計者(デザイン会社)、公園活用団体(指定管理者業者)、行政等から公園活用の方法や責任に対する考え方に大きな影響を受けたとの感想が寄せられており、プレーパークの考え方を取り入れたいと考える事業者が増えている様子がうかがわれる。

(5)「同じ社会課題の解決に取り組んでいる他団体、企業などの行動に影響を与えた」団体は47.6%

同じ社会課題の解決に取り組んでいる団体や地域の他団体、企業などの行動に影響を与えることで、課題解決が進むということがあったかという視点で回答してもらった。

課題解決が進んだ具体例として、環境分野では、例えば特定非営利活動法人 森の生活は、未集計・未公開のままとなっていた北海道庁による「緑化活動団体実態調査」について、NPO法人北海道市民環境ネットワークや北海道大学と連携して分析手法の提言などを行なったことで、集計の促進と結果公開への動きが生じたとしている。

子ども分野においては、例えば特定非営利活動法人 シンフォニーネットの活動に参加した企業が「NPO支援補助金」という助成制度を新設した。

3. おわりに

今回のアンケート調査の結果から、Panasonic NPOサポート ファンドの助成により2011年にキャパシティビルディング事業に取り組んだ団体においても、組織基盤の強化が進むとともに、主要事業のアウトカム・インパクトが改善・向上していることが改めて確認できた。

今回の調査対象である21団体において、「組織が変化した」というコメントを寄せた団体の多くは、「中期ビジョン・計画の策定」あるいは「人材の育成」に取り組んだ団体であることが特徴的である。組織に変化を起こすことは容易ではなく、大きな痛みを伴う。Panasonic NPOサポート ファンドの資金支援や、外部の専門家によるアドバイス、助成事務局のサポートは、団体がその変化を乗り超えることを後押しし、理事やスタッフの意識変革を促した。

また子ども分野の団体からは、「組織基盤強化」とはどういうことなのか、助成事業に取り組みながら理解していったというコメントが複数聞かれた。受益者に向き合うことから活動がスタートする子ども分野の団体にとっては、組織運営の必要性にあらためて気づくことが組織基盤強化のスタートであり、アウトカム・インパクトを生む団体に変革するための第一歩となっていることがうかがえた。

今回アンケートに回答した団体からは、本助成プログラムに対して感謝の言葉が数多く寄せられた。
●課題を掘り下げ、目標や目的を設定・共有し、組織で向かっていくという、いまとなっては当たり前の意識も、貴助成金に出会えなければ気づくこともなかったと思います。組織基盤の根幹となる理念の再構築に、有識者の方々のアドバイスと資金をいただき、時間をかけて組織内の意思疎通ができたことは、法人化10年目の当団体の大革命となりました。
●自分たちの組織のことを客観視することができ、中長期的な視点での事業運営について考えることができたことが、最大の成果でした。
●ただお金だけいただくということではなく、組織基盤強化について様々サポートしていただけたことがよかったと感じています。
●本当によい助成に巡り合えたと感じました。現在、さまざまな団体から相談を受けますが、このNPOサポートファンドをみなさんに勧めています。ぜひ変わらぬ支援を、市民社会の活性化のためにお願いします。

【調査概要】

1)調査目的

Panasonic NPOサポート ファンド組織基盤強化事業の2011年助成実施団体について、本事業による資金提供及び非資金的取組み(組織基盤強化ワークショップ、選考過程でのヒアリング、贈呈式、中間インタビュー、成果報告会等)が、助成の受け手における組織基盤の強化、活動の充実による社会課題の解決の促進に与えた影響等を検証する。

2)評価対象期間

2011年助成(2011年1月1日~12月31日)

3)調査方法

助成先団体の応募用紙、報告書類の分析

助成先団体へのメールアンケート

  • 実施時期:2013年1月
  • 回収状況:21団体(100%)

アンケート項目
(ア)成果を測る

  • 基盤強化:助成時の強化項目の確認と成果の自己評価、事業規模、財源、有給スタッフ、活動の参加者、独自ノウハウの充実、横展開の実現、新規事業の開始、認知度の向上
  • 助成先団体のベネフィシャリへの波及効果(受益者数等)

(イ)満足度を測る:サポートファンドによる支援内容
(ウ)ニーズを知る:今後の組織基盤強化に関する支援ニーズ

分析方法

  • 助成先団体における主観的な自己評価を得ると同時に、組織基盤をあらわす定量的指標の変化を把握する。
  • アンケートは記名式とし、助成前(2010年)と助成後(2012年)で、指標の変化を分析する。

回答団体名

特定非営利活動法人 森の生活
特定非営利活動法人 アースウォッチ・ジャパン
特定非営利活動法人 荒川クリーンエイド・フォーラム
特定非営利活動法人 ボルネオ保全トラストジャパン(BCTJ)
特定非営利活動法人 しずおか環境教育研究会
特定非営利活動法人 自然体験共学センター
社団法人 西土佐環境・文化センター 四万十楽舎
特定非営利活動法人 日本エコツーリズムセンター
熱帯林行動ネットワーク
一般社団法人 環境パートナーシップ会議
特定非営利活動法人 アトピッ子地球の子ネットワーク
特定非営利活動法人 チャイルドライン支援センター
特定非営利活動法人 プレーパークせたがや
ハイチの会
特定非営利活動法人 子育て支援を考える会TOKOTOKO
特定非営利活動法人 福井県子どもNPOセンター
特定非営利活動法人 チャイルド・ケモ・ハウス
特定非営利活動法人 シンフォニーネット
特定非営利活動法人 銀杏の会
特定非営利活動法人 全国不登校新聞社
特定非営利活動法人 こどもコミュニティケア

調査実施者

  • 公益財団法人 パブリックリソース財団