組織基盤強化フォーラム コロナ影響下でのNPO/NGOの組織基盤を考える

2021年1月27日、「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の贈呈式に続いて、日本NPOセンターとの共催で「組織基盤強化フォーラム」を開催しました。オンライン(Teamsライブイベント)で開催し、約200人にご参加いただきました。コロナ禍の今、基調講演や事例報告を通して、NPO/NGOの組織基盤を考える貴重な時間となりました。

●開会挨拶

かつてない難局は
かつてない発展の基礎になる

パナソニックは企業市民活動として、SDGsの中でも1番目に掲げられ、多くの項目に関連する「貧困の解消」に取り組んでいます。人材育成・機会創出・相互理解という3つの切り口で共生社会を目指しており、サポートファンドや本フォーラムは機会創出のプログラムになります。2020年は新型コロナに対する取り組みとして、3月に休校中の子どもたちの学びを支援するサイトを立ち上げ、5月には予防ワクチン・治療薬の研究開発支援として2億円を寄付しました。続いて6月に従業員による募金キャンペーンを行い、会社もマッチング支援して4,000万円を医療や子ども、社会福祉分野に従事するNPO/NGOに寄付しました。

松下幸之助創業者が「かつてない難局は、かつてない発展の基礎になる」という言葉を残しています。コロナ禍を逆手に取って、これからも皆様とパートナシップを組んで社会課題の解決に向けて積極的に活動していきたいと思っています。

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パナソニック CSR・社会文化部
部長 福田里香

●基調講演

コロナ影響下でのNPO/NGOの組織基盤

「新型コロナウイルス」NPO支援組織社会連帯(CIS)の2020年8月のアンケートによれば、NPO569団体のうち95%が今後も含めて「事業に影響がある」、5%が「解散・休止を余儀なくされた」、24%が「新規事業の計画がある」と答えています。新規事業の知恵を絞る中で、改めて組織基盤強化が重要になってきます。コロナ影響下での組織基盤強化のポイントは4つあります。

  1. 目標設定と確認
    組織が目指す姿を実現するには、例えば「高齢者がサロンに来られないなら家庭訪問をして孤立を防ぐ」などと、コロナ禍の影響も組み込んだ事業計画をつくる必要があります。
  2. 人的基盤の確立
    スタッフが在宅勤務で働きやすい環境になっていれば、難局を乗り越えていけます。そのためには、緊急時の組織体制のマニュアルや組織決定のルールを明確化するといいでしょう。
  3. 財政基盤の確立
    コロナ禍においても事業展開によっては寄付が増えている団体もあります。コロナ対応の助成・補助金も増加傾向ですが、予算計画は、企業や行政の財政状況が変わることを念頭に立てましょう。
  4. ガバナンスの確立
    顔を合わせないからこそ、意思決定の透明さと風通しのよさが必要です。また、経年変化をデータで見せることで新型コロナの影響がはっきりし、財源確保の方法が見えてきます。
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認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター
常務理事 田尻佳史さん

●組織基盤強化の実践事例報告

コロナ禍でも、150tの食料提供と6,000万円を超える寄付

山梨県で食料支援の仕組みづくりをしています。年間約2,000万円の補助事業が終了したことを機に、2014年から2年間、サポートファンドの助成を受けて組織診断と組織基盤強化に取り組みました。ファンドレイジング活動の強化に向けて、認知度向上のための広報活動や緊急寄付活動、寄付者へのフォローなどを行い、会費・寄付は助成前の10倍に増えました。外部講師を招いて研修を実施したことで業務効率が向上し、企業訪問によって大きな倉庫を借りることもできました。

助成後もファンドレイジング活動を続けたことで、2020年はフードドライブを通して市民の皆さんから25t、企業も含めると年間150tという、かつてない食料提供がありました。臨時休校措置で給食がなくなる2020年3月から、コロナ禍の緊急食料支援を開始し、就学援助受給世帯や乳幼児がいる児童扶養手当受給世帯、奨学金をもらっている大学生などに計2,277件、27.3tの食品を提供できました。ニュースリリースやオンラインの講演会を増やし、特別法人会員を新設して企業に寄付を呼びかけたことで、2020年度の会費・寄付も6,000万円を超える見込みです。

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認定特定非営利活動法人 フードバンク山梨
理事長 米山けい子さん

課題を共有し議論できる関係性築き、変化にすばやく対応

フィリピンで、子どもの教育と女性の収入向上の支援をしています。自己財源が足りないことに問題を感じ、2015・16・18年の3年間、サポートファンドの助成を受けました。外部コンサルタントによる診断の結果、中期計画の不在、多すぎる業務種・業務量や、情報と決定権の偏りが課題だとわかりました。理事・職員が合宿して中期計画を作成し、月1回以上理事会を開いて、理事全員で物事を決める習慣をつくりました。業務量分析と事業の優先順位付けを行い、空いた時間でファンドレイジングに取り組みました。新しい職員雇用に向けたマニュアルも作成しました。

2020年はコロナ禍によるロックダウンで、日本からのスタディツアーや現地でのワークショップができなくなり、日本人スタッフも現地に行けなくなりました。そこで対策として、助成事業や寄付の強化でカバーし、現地でマネジメント人材を雇用してITツールを導入。必要な緊急支援の調査などに活動をシフトしました。組織基盤強化によって、課題をすばやく共有できる体制やフラットに議論できる関係性を構築し、変化に柔軟に対応できる組織になれたことで、今も活動を続けられています。

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認定特定非営利活動法人 ソルト・パヤタス
事務局長 井上広之さん

●質疑応答

最後に、日本NPOセンター 吉田 事務局長の進行で、参加者からオンラインで寄せられた質問に答える時間を設けました。「コロナ禍で活動を変更した事例は?」という質問には、田尻さんが「病院で活動できなくなった団体がYouTubeに動画を上げることで、今まで対象ではなかった自宅療養の子も支援できるようになった」という事例を紹介しました。

「会費・寄付を10倍まで増やせた理由は?」という質問には、米山さんが「助成を受ける時にファンドレイジング担当を決めて、月に何度か寄付会議を開き、取り組みを検討・実行・検証しました」と回答。井上さんには「業務量分析の方法は?」という質問が寄せられ、「各スタッフに業務を棚卸してもらい、何にどれだけ費やしているか書き出しました。その結果、事務局の負担軽減のために、事業を優先順位付けして削ることになりました」と答えました。

ほかにも多くの質問が寄せられ、この日のテーマに対する皆様の関心の高さが伝わってきました。

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参加者からオンラインでの質疑の様子