組織基盤強化フォーラム 外部の力を活かして取り組む組織基盤強化

2022年1月26日、パナソニックは「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の贈呈式に続いて、日本NPOセンターとの共催で「組織基盤強化フォーラム」を開催しました。昨年に引き続き、オンラインでの開催となりましたが、150人以上の皆様にご参加いただきました。実践事例報告やパネルディスカッションを通して、団体と外部支援者双方の立場から、組織基盤強化において外部の力が果たす役割について考えました。

●開会挨拶

自分たちの強みや新たな気づきを教えてくれる外部の力

私どもサポートファンドは昨年20周年を迎え、夏には組織基盤強化をテーマにした「シンポジウム・ウィーク」を4日間開催し、のべ850人の皆様にご参加いただきました。104年前に創業したパナソニックは24万人以上の従業員を抱えるグローバル企業に成長し、事業活動と企業市民活動を車の両輪のように進めてきました。企業市民活動においては、SDGsが掲げる17の目標のうち1番目の目標である「貧困の解消」を軸に活動しています。今日のテーマにもあるように、外部の皆様は自分たちの強みや新たな気づきを教えてくれる重要な存在です。私たちも、さまざまなステークホルダーの皆様にアドバイスをいただきながら、引き続き、社会課題の解決や新しい社会価値の創造に取り組んでいきたいと思います。

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パナソニック株式会社
企業市民活動推進部 部長 福田 里香

●問題提起

組織のありたい姿を実現する第三者の関わり

サポートファンドは第三者の関わりと丁寧な組織診断が特徴です。20周年の評価レポートでは、助成団体の86%が「役に立った」と回答し、「外部の視点が役立った」「意見を整理してもらえた」「改善に向けての手助けをしてもらえた」などの意見が寄せられています。サポートファンドでは、組織基盤強化を「ミッションやビジョンの実現に向けて、組織のありたい姿と現在の姿のギャップとその原因を深掘りし、課題解決を図る取り組み」と定義しています。その際に自分たちだけでは限界があるので、外部の力が役立ちます。これから実際に取り組んだ団体の事例を聞いた上で、支援者がどう関わり、それを団体側がどう活かしたのか深掘りしていきます。皆様が組織基盤強化を進めていく時のヒントになればと思います。

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認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター
事務局長 吉田 建治さん

●組織基盤強化の実践事例報告

客観的な視点で自分たちが何者かを認識し、外部に発信

私たちは大阪市で、不登校の子どもたちのフリースクールや個別指導塾、通信制高校サポート校、親の会を運営しています。団体は2004年に設立しましたが、事業部門が増えるにつれて連携に不具合が生じ、事務処理にも限界が来て、2015年から2017年まで組織基盤強化を受けました。
1年目は組織診断の結果、団体のミッションが創業メンバーと新規スタッフの間で共有されておらず、外部にも伝わっていないことがわかりました。そこで2年目は内部のコミュニケーションツールを見直し、話し合いを重ねて「みなもらしさ」を明文化し、全員で共有。外部にも発信するために、ホームページや紙媒体を改訂しました。

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特定非営利活動法人 フリースクールみなも
理事長 今川 将征さん

3年目はフリースクール全体の価値を社会に知ってもらうために、他のフリースクールと合同研修を行い、不登校の支援団体を紹介した冊子や、居場所の有効性を解説した書籍を発行しました。その間、外部のコンサルタントとして伴走してくれた河合将生さんは私たちの思考や想いを整理し、客観的な視点で改善策を考える手伝いをしてくれました。自分たちが何者であるか認識できたおかげで、団体は新しく動き始めることができました。

第三者を交えた組織の現状分析から3つのチームが誕生

1983年の設立以来、ミャンマー・タイ・スリランカでの国際交流や、佐賀県を中心とした国内でのSDGsの推進に取り組んでいます。2007年にカリスマ創業者が亡くなり、会員は半減。理事も高齢化して、30代が中心の事務局メンバーとビジョン・ミッションの理解度にギャップが生じ、組織の方向性を統一したくて、2021年に組織基盤強化を受けました。
コンサルタントの山元圭太さんに入っていただき、アセスメントツールを活用して、理事と事務局メンバーの理念共感と貢献意欲・自己有用感・居心地の良さを診断。さらに、理事を中心とするステークホルダーへのヒアリングから、組織の現状を分析しました。この結果をもとに自己診断ワークショップを開き、組織づくり・新規事業開発・事業評価に取り組む3つのチームをつくることと、3人の新理事を迎えることが決まりました。

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認定特定非営利活動法人 地球市民の会
事務局長 岩永 清邦さん

第三者のアドバイスのおかげで建設的な話し合いができ、日々の業務に追われながらも、組織基盤強化を後回しにすることなく取り組むことができました。2022年も継続助成をいただいているので、3つのチームで話し合いを続けながら、組織のパフォーマンスを最大化していきたいと思います。

●パネルディスカッション

団体が支援者と組織基盤強化に取り組む際に必要なこと

【進行】
日本NPOセンター 事務局長 吉田 建治さん

【登壇者】
フリースクールみなも 理事長 今川 将征さん
地球市民の会 事務局長 岩永 清邦さん
officemusubime 河合 将生さん

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パネルディスカッションの様子

支援者として大切にしていること

河合さん NPOの組織基盤強化のコンサルタントをしています。団体への事実質問を繰り返しながら、団体の自己認識を言語化し、課題の本質を探る手法をベースとしています。外部支援者の役割は、さまざまな判断が必要な分かれ道で、判断の材料や考え方を提供することです。組織に必要な3つのC「Common Goal(共通目標)、Cooperation(協働意欲)、Communication(コミュニケーション)」をベースに考えると、組織の現状が見えてきます。

組織基盤強化における支援者の役割と、そこで得るもの

今川さん コンサルタントの河合さんとは、月に1度のペースでミーティングを行いました。組織基盤強化では、何を大切な軸として考えるかを共有し、各部門の仕事の守備範囲を明確にした上で、そこに落とし込んでいきました。組織基盤強化は困り感への解決策をダイレクトに授けてくれるものではなく、自分たちの思いを実現するにはどうすればいいかを自分たち自身に問いかけるもの。そして、その手助けをしてくれるのが支援者なのだと思います。

岩永さん 1年前は、課題はあるけど何をすればいいのかわからない状態でした。コンサルタントとは月に1~2回、最初の1~2カ月は特に密に打ち合わせをしました。これまでの事務局主導だと理事がついてこられず、自己有用感が低かった。ところが組織基盤強化を受けて、少人数のチームで事務局と理事が対話する文化が生まれてからは、理事が自分の得意分野を活かしてアドバイスできるようになり、当事者意識が芽生え、自己有用感も上がりました。

河合さん 組織診断・組織基盤強化は成果だけでなく、プロセス自体にも価値があります。伴走者が、組織の中で課題認識をもつ人の対話の相手になり、課題を顕在化し、その取り組みを内部に広げていく。さらに、フリースクールみなもの場合は、他のフリースクールと一緒にフリースクールの価値を社会に知ってもらうことで、取り組みが外にも広がっていきました。これからも、達成までの遠い道のりを皆さんと共に旅していければと思います。