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パナソニックは、社員の仕事のスキルや経験を活かしてNPOを支援する「Panasonic NPOサポート プロボノ プログラム」に2011年4月から取り組んでいます。
今回は山梨・東京・大阪から集まった総勢5人の社員がチームを組み、山梨県南巨摩郡富士川町に拠点を置く「認定NPO法人スペースふう」の事業計画立案をサポートしました。2018年8月から、キーマンへのヒアリングや現場見学、内部・外部環境分析、課題と施策アイデアの洗い出しなどを行い、「スペースふう」が直面している現状と課題を整理。その後も内部・外部ステークホルダーへのヒアリング調査を重ねて、事業計画の基本方針を策定。今後の事業計画の立案に役立ててもらうために2019年3月2日、山梨県を訪れ、最終報告会を行いました。終了後には「スペースふう」の事務所で交流会を開き、7ヵ月に及んだプロジェクトの思い出や感想などを語り合いました。その様子をご紹介します。
日本初のリユース食器レンタル事業が低迷
次世代へのバトンタッチも課題
スペースふうは、2003年に全国で初めてリユース食器のレンタル事業を始めた団体です。紙コップなど、イベントで出る使い捨て食器のゴミを減らし、循環型社会の実現を目指して活動を続けてきました。
しかし、レンタル事業の収益は横ばいから右肩下がりに転じて低迷。2012年に約100万個だったレンタル食器の受注数量は、2017年には約70万個にまで減少し、理事の高齢化に伴う次世代へのバトンタッチも組織の課題となっていました。
理事長の永井寛子さんは、これまでの経緯をこう振り返ります。
「以前は普及活動に力を入れなくても受注数がどんどん増えていましたが、ある時から伸び悩んできました。学識経験者に委員になっていただき、3年間の調査を経て山梨県の『エコイベント・ガイドライン』をつくったこともありましたが、県には採用されませんでした。日本全体を見渡しても、リユース食器が当たり前の社会にはまだなっていないし、地元・山梨にすら普及していないことに課題を感じてきました」
レンタル受注数量の分析と関係者へのヒアリング
そこから見えてきた課題と対策の方向性
そこでプロボノチームは、2012年度から2017年度までのレンタル受注数量を細かく分析。その結果、イベント1件あたりの受注数量が減少し、小口化していることがわかりました。地域別に見ると、関東地方で大幅に減少した上に、地元・山梨でも依頼者を増やせていないことが明らかになりました。
その原因としてプロボノチームは、関東地方においては「ふうネットの他の会員に受注が流れたのではないか」、地元・山梨では「普及活動が十分な効果を上げていないのではないか」という仮説を立てました。対策の方向性としては「大口依頼者にターゲットを絞った営業活動をしていくこと」「ふうネットの普及部隊の受注力を高めること」「近隣地域への普及活動を拡大すること」を提案しました。
続いて、イベントの主催者や出店者、スポンサー企業、ふうネット会員にヒアリングした内容を報告しました。そこでは「お客様に褒めていただくことが最近増えた」「器を仕入れに行く手間が省けて助かる」という好意的な声のほかに、「使い捨て食器より高く、もうけのないイベントでは利用できない」「デポジットの仕組みが、お客さんにわかりにくい」「ふた付きのものなど、持ち運びしやすいデザインを増やしてほしい」「ネットでも注文できるようにしてほしい」といった厳しい意見や要望も寄せられました。
さらに、環境に関連したネットワーク団体との連携によって収益を拡大する方法や、内部ヒアリングによって明らかになったスタッフの業務状況と課題、業務整理例を提案しました。
提案を受けて「スペースふう」の皆さんからは次のような感想がありました。
ここまで食い込んで言語化してくださったことに感激しています。抱えている業務に追われ、今ある枠を飛び抜けて新たなチャレンジをする発想がなかった。外部へのヒアリングの結果を具体的な形にし、実現させていきたいので、引き続き力になっていただけると助かります。
食器のデザインを変えるなら今だと思いました。企業だって新しいものを採り入れないと、お客さんには振り向いてもらえない。地元サッカーチーム「ヴァンフォーレ甲府」も、2020年にはスタジアムで使うすべての食器をリユースにする方針なので、前向きに考えていきます。
「スペースふう」は周りの皆さんが新しいことを仕掛けてくれる団体で、私たちも前向きに挑戦してきたつもりでした。ところが積み残してきた反省点がたくさんあったことに、今日気づかされました。新しいチャレンジを続けるためにも、自分たちの問題としてとらえ、解決していかなければと思いを新たにしました。
これまでは自分たち本位で物事を進め、やり方を押しつけていました。客観的な意見を聞いたことで課題も腑に落ちたし、いい提案をいただいたことで具体的なものも見えてきた。組織の中でもっと激論しながら、若い世代も一緒になって新しいことを始めなければいけないと気づかされました。
今回のようなヒアリングは初めてだったので感謝しています。今の状況では、次の世代に「お願いね」と言うのは無責任でしかない。どう稼いで活動資金をつくるかが課題です。海ゴミの問題やレジ袋の有償化など、時代の波は来ている。誰もが納得する形で、リユース食器の輪を拡大する仕組みをつくるのが私たちの使命だと思っています。
今回のパナソニック側のプロジェクトメンバーは、プロボノの経験者が1人、残りの4人がプロボノ初参加といった構成でした。また山梨、関東、関西の混成チームであり、距離がありながらも役割分担とコミュニケーションを取りつつプロジェクトを進めていきました。
プロボノは今回が3回目です。スペースふうさんと関わったことで、関心が薄かった使い捨てゴミや海ゴミへの問題意識が高まりました。これは一人ひとりの意識に関わっている問題だと思うので、身の回りのゴミを減らすとか、スペースふうさんの活動を人に伝えるとか、小さなことからでも始めたい。今日でプロジェクトは終わるので、これからは支援する・されるという関係ではなくなります。今後は同じチームの一員として、何か一緒にできることがあればお手伝いさせてほしいと思っています。
プロボノについてまったくわからない中で、皆さんに優しく見守られながら活動させていただきました。イベントに参加したり、ネットで会議をしたりするうちに、素晴らしい取り組みであることがわかってきました。関わりのある方へのヒアリングからも団体が信頼されていることを感じましたし、「続けていってほしい」という声もたくさん聞きました。また団体が次のステップへと向かう、やる気も感じましたし、毎年新しいことに取り組まれる姿勢は刺激にもなりました。終わりのないチャレンジが続くと思いますが、これからも頑張ってください。
会社の茶道部の和室で村上さんから誘われて、プロボノに初めて参加しましたが、たくさんのことを学ばせてもらいました。初めは、便利な使い捨て食器があふれている世の中でリユース食器ってどうなのかなと思っていましたが、永井さんの講演を聞き、イベントに参加するうちに私の意識も変わっていきました。皆さんの熱いトークを聞くのも楽しかったです。私自身忙しくて、今回のプロジェクトにも十分に活動できない物足りなさは残りましたが、関係者へのヒアリングには、すべて参加。「スペースふうさん頑張れ」という気持ちがすごく伝わってきました。私自身も何ができるのか、考えていきたいと思います。
プロボノには初参加です。マイクロプラスチックについてテレビや新聞で見ても、他人事にしか思えませんでしたが、スペースふうさんの講演会に参加して、改めて大変なことが起きていると感じました。イベントに参加できなかったことが心残りですが、ヒアリングはとても有意義な時間でした。いろいろな方のお話から、スペースふうさんの活動への期待を感じ、人のつながりの大切さも学びました。私たちとはまた違う事業の難しさがあるのだと思います。機会があれば、イベントにもぜひ参加したいです。
今回プロボノに参加して、社会問題について何も知らなかったことを痛感しました。こうして正面から向き合って課題解決しようとしている方々の話を聞くことで、自分の思いやエコに対する意識も変わりました。家の近くで何かできないか考えるようにもなりました。海のない埼玉県出身で、海には憧れがあります。今回のプロジェクトでは不完全燃焼な部分もあるので、自分がもっているコネクションを活用して、自分の行動を海の活動にまでつなげていけたらと思っています。
今回のプロジェクトでは団体が山梨にあり、団体の皆さん、プロボノメンバーが全員で顔を会わせたのはこの報告会が初めてでした。報告会の終了後は、スペースふうの様々なエコリサイクル食器を使って交流会が行われ、リラックスした雰囲気の中、意見の交換が交わされました。さらに今夏のイベントには、山梨のメンバーがリユース食器回収のボランティアとして参加する予定にあるとのことで、プロボノをきっかけに新たな展開も生まれています。
パナソニックでは2011年より、社員のビジネススキルを活かしてNPOの事業展開力を応援する「プロボノプログラム」に取り組んでいます。これまでに社員235名がNPO45団体をサポートしてきました。2019年度は「Panasonic NPOサポート ファンド」での助成先を含め、NPO5団体を支援してまいります。