認定NPO法人 チャイルドライン支援センターの組織基盤強化ストーリー
子どもだけがかけられる専用電話「チャイルドライン」。全国44都道府県に散らばる「チャイルドライン」の活動拠点をネットワークし、「チャイルドライン」全体のPRや研修、ファンドレイジングなどを担っているのが、認定NPO法人「チャイルドライン支援センター」(以下、支援センター)だ。
設立から10年目を迎えた09年当時、組織の曲がり角に立っていた支援センターは、外部からの組織診断を受け、組織基盤を見直した。その結果、組織はどのように変わり、今はどのような取り組みをしているのだろうか?
支援センターの梅沢元彦さん、太田久美さんに話を聞いた。
[THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本版 第169号(2011年6月15日発行)掲載内容を再編集しました]
認定NPO法人 チャイルドライン支援センター
専務理事・事務局長 太田 久美さん
常務理事 梅沢 元彦さん
「チャイルドライン」とは、18歳までの子どもなら誰でも、全国どこからでも、自分の気持ちやかかえている問題などについて自由に話すことができるフリーダイヤルのこと。 まずは、チャイルドライン設立の経緯を、支援センターの専務理事・事務局長を務める太田久美さんが語る。
「チャイルドラインの始まりは、日本でいじめが社会問題化していた1998年までさかのぼります。いじめに対して大人がやれることはないかとシンポジウムを重ねていたちょうどその時、ある国会議員が、イギリスに子どものためのホットラインがあることを紹介しました。さっそくイギリスのチャイルドラインへ視察に行ったメンバーが中心となり、東京・世田谷で特設的にホットラインを開設したところ、大きな反響がありました」
翌99年には、チャイルドラインを全国47都道府県につくることを目的としたチャイルドライン支援センターが立ち上げられた。
「秘密は守る」「どんなことも一緒に考える」「名前は言わなくてもいい」「切りたい時には切っていい」を原則としているチャイルドラインには、年間約24万件もの着信がある。内容は性に対する不安、いじめ、親の離婚、就職のこと、家庭の貧困など、さまざまだが、中には話し相手を求めて、うれしかったことを報告してくる子どももいるという。
太田さんはもともと、親子で芸術を鑑賞する「おやこ劇場」という団体で活動をしていた。その頃から、親にも言えないことでもんもんと悩んでいる子どもたちを目の当たりにし、「顔の見えない相手であれば、かえって話しやすいのではないか」と感じていたそうだ。 「同じように、たとえば不登校など、子どもの現実に直面するボランティア活動をしている人たちにも、このチャイルドラインは響いたようです。各地で啓発セミナーを開き、チャイルドライン開設の働きかけをした結果、全国に広まっていきました」
09年5月からは、全国どこからかけても通話料無料のフリーダイヤルに番号が統一された。「親の転勤でどこに引っ越しても同じ番号ならかけやすいし、高い通話料がかかって親から追及されずに済むように」との配慮からだ。
現在では44の都道府県で74の団体が活動している。あとの2県にも開設のための準備会がすでにできているので、残るは香川県1県のみとなった。全国にいる電話の「受け手」は約2300人。また、子どもの話を聞いた「受け手」の迷いをその場でジャッジすることなく受け止め、精神的にサポートする「支え手」と呼ばれる人たちも250人に及ぶ。
全国のチャイルドライン関係者が集まる研修会
[団体プロフィール]認定NPO法人チャイルドライン支援センター
98年に東京・世田谷で始まったチャイルドラインを全国に広めていくため、99年に設立。マスコミなどを通じて活動内容を社会に知らせ、子どもたちに電話番号を広めている。各地でチャイルドラインを実施している団体や準備している人たちを支援し、研修を行い、必要な情報を収集して発信し、全国の組織をネットワークしている。世界では現在150ヵ国以上にチャイルドヘルプラインが存在し、世界のチャイルドライン連盟となるCHI(世界子どもヘルプライン)で、日本は初代アジアパシフィック地域の理事国を務めた。
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