NPO法人「日本エコツーリズムセンター」の組織基盤強化ストーリー

「エコツーリズム」は、エコツアー(環境保全型旅行)の背景となっている考え方で、NPO法人「日本エコツーリズムセンター」は「エコツーリズム」を、地域活性化を達成するための有効な手段として全国各地で広めてきた。
今回、「Panasonic NPOサポート ファンド」の助成を受けて、活動の問題解決や基盤強化のための調査研究を進めていたところに東日本大震災が起こった。「日本エコツーリズムセンター」の活動と課題、急きょ始まった被災地での救援活動について聞いた。
[THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本版 第187号(2012年3月15日発行)掲載内容を再編集しました]
地域を元気にするツール、エコツーリズム
NPO法人「日本エコツーリズムセンター」の代表理事を務める広瀬敏通さんによれば、「エコツーリズム」という言葉がオーストラリアや米国などから日本に入ってきたのは、1990年頃だという。
「エコツーリズム」は国や立場によってとらえ方が違うが、92年いち早く「エコツーリズム研究会」を立ち上げた広瀬さんは、自然学校の活動などを行いながら、日本人が手を加え自然と折り合いをつけてきた里山に注目してきた。そのなかで、里山が“地域の文化や日本人の原点を見つめ直す体験”のできる「エコツーリズム」の舞台になるのではと考えるに至った。実際に活動を展開していくなかでも、そこに住む人が地域に対する誇りを取り戻し、地域が元気になっていく事例がいくつも生まれたという。
そこで07年、広瀬さんはエコツーリズムを「地域を元気にするツール」として使うために、全国の地域の現場で活躍する「世話人」たち110人で、ネットワーク組織「日本エコツーリズムセンター(以下、エコセン)」を立ち上げる。
しかし設立当初、「事務局のマンパワー不足に加え、せっかくのネットワークがリソースとして有効活用されていないという課題も感じていた」と、事務局長の中垣真紀子さん。
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NPO日本エコツーリズムセンター
代表理事 廣瀬敏通さん、
理事・事務局長 中垣真紀子さん
そこでエコセンは09年、「Panasonic NPOサポートファンド」の助成を受け、組織基盤強化に乗り出した。エコセンのミッションや活用例を「コンセプトペーパー」としてまとめ、プロジェクト単位の組織にした結果、世話人一人ひとりが役割意識をもち、エコツアーガイドや地域コーディネーターの育成にも積極的に協力してくれるようになった。また、組織の運営方針は年4回の「コンセプトワーク」で話し合い、決定することにした。活動が軌道に乗ったことで、当初は1人だった事務局の有償スタッフも4人にまで増やすことができた。
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[団体プロフィール]NPO法人 日本エコツーリズムセンター
エコツーリズム推進のため、専門家による効果的なアクションを実践することを目的とした民間機関。 07年8月22日設立。08年2月8日にNPO法人となる。 メンバーはエコツーリズム、自然体験活動、環境教育の分野における国内の第一人者。活動内容はエコツアーガイドや地域コーディネーターの育成、エコツアー、エコセンシンポジウムなどの普及啓発事業、エコツアー・ドット・ジェイピー(http://www.eco-tour.jp/)やメルマガによる情報発信、災害復興支援事業、エコツアー保険の提供など。