NPO法人「日本エコツーリズムセンター」の組織基盤強化ストーリー

地域が元気になる「エコツーリズム」を全国に拡大。ミッションと取り組み事例の共有が地域をつなぎ、被災地支援にも発展。NPO法人「日本エコツーリズムセンター」

地域のつながり、業界法の壁。二つの課題に取り組む

一方で、エコツーリズムの舞台となる地域には二つの課題があると、広瀬さんは言う。
「外から入ってきたNPOや個人は地域でがんばりすぎて、かえって地域から浮いて孤立してしまうこともあります。でも、エコセンの世話人が外からの視点で『この人たちの活動はこの土地になくてはならないもので、全国的に見ても評価できる』と話すと、首長さんはじめ地域の人々がその活動を再認識するようになります」。加えて、「地域にはかつて青年団、婦人会、商工会などがありましたが、今は担い手が減り、成り立たなくなっているところも少なくありません」
ばらばらになり、孤立してしまった「地域の担い手たち」をもう一度つなぐためにエコセンは11年、再び「Panasonic NPOサポート ファンド」の助成を受け、「地域コンソーシアム」の調査研究に取り組み始めた。

その成功事例として取り上げたのが熊本の阿蘇地域だ。この地域は阿蘇山をはじめ豊富な観光資源に恵まれながら、地元住民はその恩恵にあずかれずにいた。そこで、エコセンの世話人も所属している財団法人「阿蘇地域振興デザインセンター」が中心となって、「阿蘇カルデラツーリズム」という新しい観光のあり方を提案。これは農山村との交流を深める「グリーンツーリズム」、商店街の人々とふれ合う「タウンツーリズム」、阿蘇山などの自然を満喫する「エコツーリズム」を3本柱とするコースを用意することで、阿蘇全域の多面的な魅力を知ってもらおうというもので、そのミソは、地域をつなぐコーディネーターの存在と役割だ。
エコセンでは、このような地域コーディネートを担う自然学校などの取り組みが全国に広がっていくことを期待して、阿蘇の事例から他地域でも実践可能な要素を抽出し、2冊の冊子『地域を元気にする地元学』『NPO・自然学校等による地域内発型エコツーリズムの研究と提言』にまとめた。

もう一つの問題は、業界法の壁である。
「たとえば、駅からお客さんをワゴン車に乗せて移動し、農家で採れたての野菜や山菜を食べてもらい、茅葺き屋根の民家に泊まって五右衛門風呂を楽しんでもらったとします。専業ではないものの、志をもって地域を元気にしようとする個々人がかかわるエコツアーでは、営業許可を得ていないこれらの行為は道路運送法や食品衛生法、旅館法、旅行業法、消防法などに引っかかってしまうのです」
いわゆる業界法は、昭和20年代につくられたものが多い。当時、整備が進められた観光、食品、運送などの業界を保護するのが目的だった。それから60年以上経った今、全国に3700校存在する自然学校など、業界外の人が体験的なプログラムを実施する機会が増えているのに、法律は昔のままだ。
これらは複数の省庁を横断するテーマも多く、この不整合を解消するのは容易ではない。そこでエコセンでは、現行法では規制の対象となっている行為も、体験的なプログラムであれば例外的に認めるという「体験活動特別法」の成立を目指し、法の専門家を招いたシンポジウムなどを開催している。