相談の先にある「同じ答えがひとつとしてないもの」と向き合う力を養う
公益社団法人とっとり県民活動活性化センター
次長 寺坂 純子さん
鳥取県内を中心に、ボランティア、地域づくり、NPO等の総合的な支援を行う「公益社団法人とっとり県民活動活性化センター」。次長の寺坂純子さんは、2018年の「NPO/NGO『支援力』応援プログラム(※1)」の参加者であり、翌年には「Panasonic NPO/NGOサポートファンドfor SDGs」でコンサルタントを経験。2021年からは、チューターとしてプログラムの企画にも携わる寺坂さんに、そのきっかけや魅力を伺った。
(※1)NPO/NGO『支援力』応援プログラム:NPO/NGOの組織基盤強化に伴走する支援者の「支援力」強化を目的に実施されるプログラム。全国のNPO支援組織スタッフ等を対象に、必要な知識と技術を体系的に学べる研修を行っている。
「誰かに寄り添い、見守る力」を見つめ直すため研修に参加
当時の寺坂さんは、現場で相談対応や支援に取り組んでいた。前職でコンサルティングの経験はあったが、NPOを対象にすることはほとんどなかった。自己流のスタイルを俯瞰してみようとプログラム参加を決めた。
「それまで、組織基盤強化(※2)について深く学ぶ機会はありませんでした。同じように支援に取り組む仲間とじっくり考え、組織診断や伴走支援と向き合う時間は、今振り返っても貴重だったと感じます。」
印象に残っているのは、「組織」を「船」とし「組織基盤」を「船体」、「事業」を「積荷」に例えた講義だ。日常の相談では、どうしても一つひとつの事業内容が話の中心になり、組織基盤には漠然としか意識が向かない。「積荷」を目的の港に運ぶ、つまり事業を進めるためには、「船体」である組織基盤の状況を把握することも重要だ。研修内の実習では、日頃から関わりのある団体に協力を依頼し、組織診断を行った。
「代表や理事はもちろん、スタッフやボランティアなど、様々な関係者に組織基盤についてヒアリングを行いました。内容が多岐に渡り、組織診断のまとめは苦労しましたが、講師や仲間のフィードバックから新たな気づきや支援のアイディアを得ることができました。」
(※2)組織基盤強化とは:NPOがそのミッションの達成やビジョンの実現に向けて、活動や事業を支える組織の基盤(人材、組織文化、コミュニケーション、財政、技術など)を強化するために、その課題を深堀りし、取り組むこと、としています。
全国から参加者が集い、視点と知恵を交わすプログラムが魅力
翌2019年には、さっそくNPO法人智頭町森のようちえん まるたんぼう(現NPO法人智頭の森こそだち舎)から依頼を受け、コンサルタントとして「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の「組織診断からはじめるコース」の申請に協力。助成を受けて伴走支援に挑戦した。日頃対応する部分的な課題の相談とは異なる視点で、組織基盤強化の支援が求められていることを実感した。
「組織診断の全体像や具体的な進め方に対してイメージが持てたのは、研修で視野が広がったおかげです。組織体制や中長期計画の見直しに加え、広報力や地域との関係強化など、団体が感じる課題と実際の課題を洗い出し、分析を行いました。」
NPO/NGO『支援力』応援プログラム内で参加者をサポートするチューターという立場で関わるようになってからは、答えがひとつではない組織診断に向き合う難しさを痛感している寺坂さん。自身が参加した研修に比べ、参加者同士が組織診断の視点を深め意見を交わす時間が増えたことで、一参加者としても学びをサポートする立場としても、その難しさはやりがいにつながっている。
「2022年からは、参加者全員で組織診断を希望するNPOへインタビューを行い、参加者一人ひとりがその団体の組織診断の見立てを検討して、レポートをまとめています。研修構成を工夫したことで、参加者がそれぞれの視点を持ち寄り、具体的に組織課題を深めるようになったと思います。相談業務に携わる方であれば、組織基盤強化の支援にも、気軽に足を踏み入れてもらえたら嬉しいです。」
自団体の活動でも活きる基盤強化や組織診断の考え方と手法
基盤強化に限らず、伴走支援で寺坂さんが大切にしているのは、相手の根底にある「想い」を汲み取ること。課題の解決策が、相手の意向とかけ離れたものにならないよう気を配る。プログラム参加以降は、組織の背景や全体の状況など、より広く意識を向けるようになった。振り返れば、社会人ボランティアの派遣制度「プロボノ推進事業」の立ち上げや伴走プログラムのプロトタイプ制作など、多くの支援事業に学びが活きている。
「次長になってからは、職員が現場に出たり、事業を進めるうえでのアドバイス等も行っていますが、組織基盤強化支援のヒアリングの手法や視点は、自団体でも役立ちます。自身も含め、個々の得意を活かしながら、それぞれの現場で求められる支援を模索したいと考えています。」