すぐ会える「ご近所さん」として。息の長い伴走支援の形とは

NPO運営サポート・あの屋
佐藤 綾乃さん

フリーランスでNPOや市民活動団体の伴走支援を行う「NPO運営サポート・あの屋」の佐藤綾乃さん。支援先の団体が、2016年に「Panasonic NPOサポートファンド」に採択されたのをきっかけに、同年「NPO/ NGO『支援力』応援プログラム」に参加。翌2017年も支援先が継続助成を受け、コンサルタントとして組織基盤強化に取り組んだ。北海道旭川市を拠点に活動を続ける佐藤さんに、伴走者としての働き方やプログラムの魅力を伺った。

NPO/NGO『支援力』応援プログラム:NPO/NGOの組織基盤強化に伴走する支援者の「支援力」強化を目的に実施されるプログラム。全国のNPO支援組織スタッフ等を対象に、必要な知識と技術を体系的に学べる研修を行っている。

組織基盤強化支援のヒントと仲間を求めてプログラムに参加

佐藤さんがプログラムに参加した2016年は、組織基盤強化や組織診断という言葉がNPO支援者の間で広く聞かれるようになった頃。北海道旭川市では、「Panasonic NPOサポートファンド」の公募に先立ち、組織基盤強化セミナーが開催された。

「その頃は、旭川NPOサポートセンターのスタッフとしても働いていました。セミナーに参加した団体から、組織基盤強化に取り組みたいと相談を受け、申請のサポートをしたのが始まりです。12月に採択の通知を受け取り、遂行するための仲間探しと支援のヒントを得るためにプログラム参加を決めました。」

当時の佐藤さんのノートには、プログラム中の学びとして「組織基盤で注意したい5つのポイント」など具体的な実践方法や、勇気をもらった言葉など、多くのメモが残る。「団体と向き合うときに不安はないですか?」と講師への問いかけに対し、「出し惜しみをせず、今の自分が100%だと思って向き合うことが大事」ともらった答えは、今も心を支える宝物のような言葉だ。相談対応や事務、会計代行の支援だけに留まらない自身の支援が、組織基盤強化のための支援と裏付けされたのも嬉しかった。

助成をきっかけに組織基盤強化の支援を継続

「Panasonic NPOサポートファンド」では、環境分野で活動するNPO法人大雪山自然学校に伴走支援するコンサルタントを2年担当。1年目は組織診断とファンドレイジング、2年目は事業評価がテーマだった。

「2年間という期間はとても長い時間だと痛感しました。団体が変化するスピードが速く、私1人では対応しきれないところも多々ありました。研修を通じて知り合った仲間たちの支えがあってこそ、走り切れた2年間だったと思います。」

助成を受けての活動は2年間だったが、伴走支援は続き、今年で7年目。団体は今、改めて自分たちの在り方や将来を考えるタイミングを迎えている。

「団体の活動が続く限り組織基盤強化に終わりはありませんし、規模の小さい団体は、どうしても代表者が、課題を抱え込むことが多くあります。支援する側にも、状況に応じた柔軟な対応が求められます。」

当事者の声を大切に、団体の主体的な行動に寄り添う支援者に

今、佐藤さんは、大雪山自然学校を含め、ニーズも取り組みも異なる9つの団体に伴走する。そのうちの4つの団体が、組織基盤強化に関する支援だ。スタッフ向けの研修を行なったり、代表者や事業担当者との対話や情報提供をしたり。当事者の声を大切に、団体の主体的な動きに寄り添う。

「1歳10ヶ月になった我が子は、生後1ヶ月から団体訪問やイベントに同伴しているので、共に成長を見守ってくださる方がたくさんいます。支援先には、子育てについて頼れる先輩も多く、『子育てをしているあの屋』を受け入れてもらうことが、新たな伴走力につながっていったらいいなと考えています。」

拠点を置く旭川市、さらに北海道全体でも、支援者不足を感じている佐藤さん。対話や仲間づくりを重視した研修プログラムに、期待を寄せる。

「地方で目の前の課題に向き合い続ける団体に対しては、伝統や習慣、暮らしの文化など、肌感覚で共感しあえる大切さを感じます。全国を行き来し、広い視野で行う支援も大切ですが、すぐ会える距離に暮らす『ご近所さん』のような支援者が増えるのを期待しています。」