支援仲間とつながり、協働を創る支援者へ
特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター
理事 松村 渉さん
ゆたかな市民社会の実現を目指し、広島県で活動する「特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター」。今回お話を伺う松村渉さんは、組織の理事であり、プロジェクトマネージャーを務めるスタッフだ。参加したのは2018年の「NPO/ NGO『支援力』応援プログラム」。以降はチューターとしてプログラムの企画に関わりながら、2022年度には「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」で組織診断コースのコンサルタントを担った。
※NPO/NGO『支援力』応援プログラム:NPO/NGOの組織基盤強化に伴走する支援者の「支援力」強化を目的に実施されるプログラム。全国のNPO支援組織スタッフ等を対象に、必要な知識と技術を体系的に学べる研修を行っている。
民間シンクタンクからNPOへ、転換期のアップデートで研修に参加
企業とNPOを行き来しながらキャリアを歩んでいた松村さん。プログラムに参加した2018年は、ちょうど4年間勤めた企業を辞め、その前に務めていたひろしまNPOセンターに復職した年だ。NPO支援の業界動向を知るため、そしてNPO支援に携わる仲間と縁を結び直すために参加を決めた。
「印象に残っているのは、丁寧に整理された講師の資料です。納得感が大きい反面、自分はここまでできるのか、支援現場との大きなギャップを感じました。しかしその戸惑いは、プログラム中の宿泊研修を経て、少し和らいだ気がします」
講義だけでなく、移動時間の情報交換や夜の交流会など、全国から集まった参加者と話す時間は全て学びにつながる。研修後も助け合いが続いている頼れる仲間の存在は、プログラムに関わって得た何よりの財産だ。
「研修をともに企画するチューターの立場から見ても、このプログラムは、意見を交換しながら”自ら問いを作る場”だと感じます。明確な答えがすぐ手に入るというよりも支援の奥深さを感じる研修です。支援におけるいろんな話を聞いてみたい、いろんな人に会ってみたい、そんな人にはぜひおすすめしたい内容です」
学びや気づきを元に、仲間と組織診断の伴走支援を実施
2022年度には、「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の組織診断コースで、認定NPO法人陽だまりに伴走。団体から「組織の見直しを手伝ってほしい」という依頼を受け、「一緒にチャレンジしませんか?」と、声をかけたのが始まりだ。
「団体の現在地を測る必要を感じ、組織診断が役に立つと考えました。具体的には、理事やスタッフ、会員、行政や関係機関である社会福祉協議会、支援している企業や人などの関係者にアンケートとヒアリングを実施。研修で教わった手法や事実確認のポイントを参考に集計と分析を行いました」
分析では、取り組む組織課題の優先順位と重要度、現状の満足度などをマッピングして可視化した。財政に不安を感じての相談だったが、取り組むべき組織課題の結果は「お金ではない」という意見が多く集まった。
「完成した組織基盤計画は、安定した財政基盤を築くより、団体の想いやそこへの賛同を重視したものになりました。初めて有償で組織診断の伴走や組織基盤計画づくりに取り組みましたが、1人では限界を感じる場面も多々あり、困ったときに『助けて』と言える仲間の存在がありがたかったです」
伴走支援を協働事業形成にも応用
普段の業務では、事業やプロジェクトに関すること、ついで助成金や委託事業など、企画申請の相談対応が多いという松村さん。組織基盤関連では、ガバナンスやコンプライアンスに関する悩みが多く寄せられる。意識しているのは、相談者と目線を合わせ、お互いに「また会いたい」と思える関係性を作ること。直近の困りごとにすぐ解決できる提案をしながらも、長い目で全体を見るのがこだわりだ。
「プログラムへの参加を経て、俯瞰的に物事を把握し、仲間を集め、具体的なリソースを持ってくる、この3点の重要さを感じています。事業自体は期間の限られたものだとしても、成果が制度として残ったり、新たなプロジェクトへの布石になったり。今後は人材の育成も視野に入れながら、そうした持続的な仕組みづくりに取り組んでいきます」