大学生がレポートする。
生理用ナプキンとソーラーランタン配布活動

2022年8月2日

コペルニク・ジャパンの天花寺さん(後列左から2番目)/インタビュアーのサクラさん

2022年6月、パナソニックグループは、インドネシアの東に位置するフローレスにソーラーランタン900台を届けました。今回は、貧困削減や環境問題解決に繋がる実証実験や普及活動に取り組んでいる一般社団法人コペルニク・ジャパン、生理に関する健康知識の向上を目的に活動する「パーフェクトフィット」とともに、ソーラーランタンだけでなく、再利用可能な生理用ナプキンも一緒に配布しています。今回の活動について、一緒に活動に携わっていただいたコペルニク・ジャパンの天花寺宏美さんに、大学生のサクラさんがインタビューをしました。幼少期をフィリピンで過ごした経験もあり、貧困などの社会課題に興味があるというサクラさん。どんなお話が聞けるでしょうか。

ランタンを生理用ナプキンと合わせて配布

配布活動を行ったフローレスは、海に面した自然がとても美しい地域だそうです。ただしインドネシアの中でも貧困率は1~2位といわれ、電化率も非常に低い地域です。都市部からずいぶんと離れていて、教育の格差も大きい地域です。現在のインドネシアでは、小学校はどの村にもたいていありますが、中学校、高校となると、村から遠く離れた場所へ通わなければならず、成長するにつれ、遠距離や家の手伝いなどを理由に就学率は下がってしまうそうです。

パーフェクトフィットの活動目的は、女性の健康、特に生理に対する適切な教育を提供し、また環境にも家計にもやさしい再利用可能な生理用ナプキンを配布することです。天花寺さんは「女性にとって生理は毎月おとずれる、とっても身近なものなのに、インドネシアではそれについて学校で習う機会がほとんどありません。それに文化的背景もあり不浄なものと捉えられてタブー視されているので、なかなかオープンに聞けないという状況もあります。男女の間で考え方も違っていたり、間違った認識も多く情報格差もとても大きいんですよ」と説明されます。

またほとんどの少女や女性たちは使い捨てのナプキンを使っていて経済的負担も大きいそうです。パーフェクトフィットは、再利用可能な生理用ナプキンであれば洗って何度も使えるので使う人自身の経済的負担が減り、環境にもよいし、またそのナプキンを現地で作れば雇用も生み出せると考え、活動を開始しました。

今回は、再利用可能な生理用ナプキンを作っている女性、生理について啓蒙活動を行っている女性、そして実際にナプキンを使っている女性、合わせて830名の方々に再利用可能な生理用ナプキンとソーラーランタンをセットで配布しました。
配布時には、女性だけでなく男性にも正しい知識を得てもらいたいと、生理に対するお話もされるそうですが、なかなか話を聞きに参加してくれるケースは少ないといいます。でも今回は、ソーラーランタンと一緒に配布するので、多くの男性が興味を持って参加してくださったそう。男女を問わずに啓蒙活動したいという点では、よい成果が出たと天花寺さんは嬉しそうに話してくれました。

配布したソーラーランタン
配布した生理用ナプキン

生理に対する負担を軽減する教育も実施

今回のお話の中で、私がもっとも衝撃だったのは、生理用ナプキンの扱い方についての話でした。
インドネシアでは「生理は不浄なもの」というイメージが強く、なんと使い捨てナプキンであっても洗ってから捨てるのだそうです。さらに「不浄なもの」なので燃やすことさえもできず、地域によっては、洗ったナプキンは地面を掘って埋められます。農村地域だけでなく都市部でも、女性はみんなナプキンを洗っていると聞き、とてもビックリしました。
毎回洗って掘って埋めるという行為自体が大変ですし、使い捨てナプキンの素材を考えると、地中に埋めることは環境にもよくありません。そういう意味では、再生可能な生理用ナプキンを使うことは、環境にもとても大きな影響をもたらします。

ちなみに、この再生可能な生理用ナプキンは1枚が約100回洗濯でき、洗い替え用を含め4つを1セットで渡すので数年はもつそうです。それだけもてば、安心ですよね。ソーラーランタンがあることで夜に洗濯ができるし、ナプキンを作っている女性たちは日が落ちてからも仕事をすることができ、家計改善にもつながるので、ソーラーランタンとのセットはとてもよい組み合わせだなと感じました。

電気を求めて隣の村まで行くことも

今回の配布先は3カ所で、多くが無電化地域です。インドネシアは貧困地域でも電気がきている地域もあるそうですが、停電も多く、電気料金は最低でも月500円程度かかるそうです。最初そう聞いて私は日本の金銭感覚で「安い」と思ったのですが、インドネシアの貧困地域では、平均世帯収入の20%を占めることもあるほど高価。高くて払えずに、地域に電気は届いているけれどロウソクや灯油ランプの灯りで暮らすことを選択する方々も多いのだそうです。

またインドネシアでは、携帯電話は非常に普及しています。ただ無電化地域では、充電するために遠く離れた親戚の家までわざわざ充電をさせてもらいに行くという話は珍しくないそうです。その点、ソーラーランタンは夜の灯りとしてももちろん役立ちますが、携帯電話の充電にも使える点が、非常に喜ばれていると話されました。

寄贈の様子
ランタンを持ち帰る村人ら

現地に暮らす人が本当に求めるものは?

平均世帯収入という話も出ましたが、天花寺さん曰く、インドネシアはお金の格差が非常に大きいそうです。なかには日本の富裕層以上に裕福な暮らしをしている人たちもいるそうですが、その一方で非常に貧しい暮らしを強いられている人たちもいます。

「インドネシア自体は経済的に発展を遂げていても、都市部から離れた貧困地域は何十年経っても暮らしが変わっていません。それらの地域のアップデートが本当に必要なんです。そして、貧困地域の方々は日々の暮らしに切実です。“環境によい”という大義もありますが、まずは自分たちの足もとの生活がよくなることでないと心を動かすことはできません。だから、私たちは経済的効果と啓蒙や教育とを組み合わせて活動を続けているんです」と話す天花寺さんの言葉が、とても力強かったのが印象的でした。

今回のお話を聞いて私自身が強く感じたのは、マーケティングも大事ですが、やはりその地域に暮らす方々が本当に必要なものを見つけないといけないんだなと実感しました。私は故郷フィリピンの貧困問題に関心があります。でもこの数年は帰っていないので、まずはフィリピンに帰ってどんな暮らしをしているのか見ることが大切だと思いました。またインドネシアのお話を聞いて、女性問題などにも興味を持ちました。私にはどんなことができるのか、ぜひこれから見聞を広めて、自分の課題を見つけていきたいと思います。

協力団体 : コペルニク・ジャパン

コペルニクは、途上国の社会・環境課題に対して営利・非営利の双方から課題を解決する革新的な技術や製品、サービスの開拓や実証実験、調査分析、普及促進などを通じ、常に新しいアプローチに挑戦しています。VR動画を活用して現場の臨場感を伝えるVR for SDGsプラットフォームを活用した社会・環境課題の理解促進にも注力しています。
ウェブサイト

「みんなで”AKARI”アクション」は使い終えた本・CD・DVD・おもちゃなどをリサイクル頂くことで、どなたでも無電化地域にあかりを届けることができます。皆さまの行動が世界の誰かの未来を照らすことに繋がります。あかりを無電化地域に届ける活動に、ぜひご参加ください。

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