子ども分野・総評(2011年)

選考委員長 明石要一
選考委員長 明石要一(千葉大学)

1 はじめに
 本プログラムは、子どもにかかわるNPO・NGOの組織基盤強化を目的とした助成事業の公募を2001年に開始し、今年で10年目を迎えました。また、2002年~2006年助成までを第1期、2007年~2011年助成までを第2期とし、今年は第2期公募の最終年となりました。第2期プログラムでは、新規助成の公募は今年で5回目、継続助成の募集は今年で4回目となり、既に組織基盤強化プログラムとして定着しており、その成果を検証する必要があります。

2 応募状況
 本年度は、新規助成(助成1年目)への応募が130件、継続助成(助成2年目と3年目)への応募が10件、計140件の応募がありました。昨年に比べて約30件減っていますが、依然三桁の数値を保っています。複数年の応募も二桁を保っています。地域別に見ると、「関東」(41.4%)が突出しており、それに「近畿」(23.6%)、「東海」(9.3%)が続きます。関東への一極集中の兆しが伺えるのが気になります。
 応募事業種別では「人材育成」(31.4%)が昨年同様他に比べて突出しています。これに「拠点の充実」(17.9%)、「事業開発」(13.6%)、「人・拠点」(12.9%)が続きます。
 応募団体の概要では、「NPO法人」が82.9%、「活動年数10年以上」が42.9%、「財政規模1,000万円以上」が51.4%と、活動年数や財政規模が大きくなる一方で、組織課題(の解決)への関心が高まっている傾向が伺えます。

3 選考プロセス
 新規助成の選考は、毎年応募件数が多いので、二段階で選考しています。一次選考では、選考委員1名と事務局3名の計4名で、130件について選考基準に基づき丁寧に熟議しました。その結果、新規助成では52件を二次選考の対象にしました。なお、継続助成は10件とも二次選考の対象にしました。新規助成で惜しくも二次選考に進めなかった団体に対しては、これまでと同様、この段階で選考結果の通知を差し上げました。
 二次選考会では選考委員6名が集まり、新規助成52件と継続助成10件を対象に、約5時間にわたり集中して審議しました。新規助成は推薦数の多かったものとそうでないもの、継続助成は評価が高かったものとそうでないものにそれぞれ分類し、特に、選考委員からの推薦が分かれたもの、選考委員の評価が分かれたものについては、選考基準に照らして重点的に議論を重ね、内容について再度吟味しました。
 その結果、新規助成は12件を助成候補とし、事務局による団体への訪問調査を経て、最終的に選考委員長による決裁によって、8件を助成対象に決定しました。また継続助成は4件を助成対象に決定しました。

4 選考結果
 今年は、子ども分野の助成対象団体・組織基盤強化事業として、新規助成8件、継続助成4件、計12件を決定しました。
 新規助成は、「アトピッ子地球の子ネットワーク」「チャイルドライン支援センター」「プレーパークせたがや」「ハイチの会」「子育て支援を考える会TOKOTOKO」「福井県子どもNPOセンター」「チャイルド・ケモ・ハウス」「下関市自閉症・発達者支援センター シンフォニーネット」の8団体が助成対象になりました。
 それぞれが今日的な社会課題に応えようとするものであり、何れの団体も応募計画書に、「団体や活動の社会的な意義はどこにあるか」「どのような社会的な成果を上げているのか」「将来ビジョンを実現する上で何が組織課題となっているのか」について、団体自身よる自己評価がしっかりと書けている点が評価されました。その上で、組織基盤強化の内容とその手法が構想されており、組織基盤強化に取り組む意義は高いと評価されました。各団体の推薦理由については、別途掲載していますのでご覧いただきたいと思います。

 継続助成は、助成2年目は「銀杏の会」「全国不登校新聞社」「ぴっぴ」の3団体、助成3年目は「こどもコミュニティケア」がそれぞれ助成対象になりました。
 何れの団体もこれまでの助成により組織基盤強化の効果が現れ始めており、多くの委員から継続して支援する意義は高いと評価されました。「全国不登校新聞社」については、昨年は組織基盤強化に取り組むための準備助成に位置付けられましたが、今年は準備状況が整ったと選考委員会で評価され本助成となりました。「銀杏の会」は発達障害の治療教育・相談活動に携わる若手専門家の2年目の育成に取り組みます。「ぴっぴ」は助成1年目の成果をもとに新たな将来ビジョン(こども園)の実現に向けて更に基盤を強化します。「こどもコミュニティケア」は医療的ケアが必要な子どもとの共生保育のための人材育成とプログラム開発という<新しい知の構築>に挑戦しています。

 今年も130件という多くの団体から応募いただき、大変にありがたいと思います。ただ残念なことに、選考から漏れた団体に共通していることは、「問題提起」が今ひとつ明確に示されていない点にあると感じます。「これから実現しようとする活動の新しさは何か」「なぜその活動が必要か」という視点に加え、これらを実現するには「どのような組織基盤が欠かせないのか」という仕組みづくりの発想が乏しく、「説明力」(プレゼン)が弱いと感じられました。
 昨年の選考総評でも述べましたが、団体の「ミッション」(使命)と「ビジョン」(目標・目的・計画・立案・効果)、「パッション」(情熱・意欲)の確認と必要性を再度考えていただければと思います。

選考委員

明石 要一

千葉大学 教育学部 教授 (★選考委員長)

大森 智恵子

特定非営利活動法人子ども劇場千葉県センター 事務局長

坂口 和隆

特定非営利活動法人日本NPOセンター 事務局次長

三好 悠久彦

特定非営利活動法人リベラヒューマンサポート 理事長

米田 佐知子

特定非営利活動法人神奈川子ども未来ファンド 事務局長

小川 理子

パナソニック株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 社会文化グループ グループマネージャー