2018年1月24日、パナソニックセンター東京にて、Panasonic NPOサポート ファンドの「贈呈式」、および「組織基盤強化フォーラム」を開催しました。「Panasonic NPOサポート ファンド」はNPO/NGOの組織基盤強化を応援する助成プログラムです。2001年の設立以来、累計351件、4億3900万円の助成をしてきました。昨夏に公募には77件の応募があり、選考委員の厳正な審査の結果、環境分野8団体(助成額1,364万円)、子ども分野10団体(助成額1,500万円)、アフリカ分野4団体(助成額400万円)に総額3,364万円の助成が決定しています。
第1部:Panasonic NPOサポート ファンド贈呈式
贈呈式では、パナソニックの執行役員である竹安聡の開会挨拶に続き、各分野の選考委員による選考総評をいただきました。そして助成が決定した22団体に、助成通知書が贈呈されました。
【ごあいさつ】
私たちパナソニックは今年、創業100周年を迎えます。創業者・松下幸之助の「企業は社会の公器である」という考えのもと、NPO、NGOの活動を積極的にサポートしていくため、2001年に本ファンドを立ち上げました。これまでに、今年度助成対象となる22団体を含め、350以上の団体に支援をさせていただいてきました。このファンドの原資を組織基盤強化のために有効に活用していただければと思っています。
昨今の社会課題は多岐に渡っており、2015年には国連がSDGsという持続可能な開発目標を定め、その中には貧困や環境などあらゆる問題に立ち向かっていこうということが決議されました。私たちも事業を通じて貢献できる部分について取り組んでいきたいと思っており、社会の最前線であらゆる課題に取り組んでいるNPOやNGOのみなさんと一緒に、よりよい社会、「A Better life,A Better World」の実現を目指していきたいと考えています。
パナソニック 執行役員
竹安 聡
贈呈式に続いて、各分野の選考総評が述べられました。
環境分野
組織基盤強化のノウハウを共有、拡散してほしい
私たちは富士山のふもとで環境教育活動をおこなっています。私もかつて、このファンドの支援をいただいて、組織基盤の強化に取り組みました。今日は組織基盤強化を終えたあとのことをお話ししたいと思います。
1972年、ストックホルムで「かけがえのない地球」というテーマで世界初の環境をテーマにした国際会議が開催されました。それから45年、その間さまざまな活動があったはずです。私も多くの方の活動を見てきました。しかし地球環境の未来は「ここまでいけば大丈夫!」という道筋がまだ見えていません。
そこで環境分野で活動されている団体のみなさんにお願いがあります。組織基盤の強化を着実に終えたあかつきには、組織は持続可能なものになっていると思います。そのノウハウを自分たちだけのものにせず、ぜひほかのみなさんと共有し、拡散していっていただきたいのです。いまのままでは地球環境は大変なことになるという危機感を選考委員を代表して申し述べたいと思います。私たちホールアース研究所も、35年間のノウハウを国内外に拡散して、それを実践していくことをお約束します。
また組織基盤強化は、その課題の解決のプロセスには大小さまざまな“痛み”がともなうことでしょう。しかし地球の未来のため、そこはどうにか踏ん張って乗り越えていただき、一緒に頑張っていきたいと思います。
環境分野選考委員
山崎 宏さん
子ども分野
組織診断の結果を真摯に受け止め、自身を客観視する謙虚な姿勢が大切
子ども分野選考委員長
森本 真也子さん
NPO法が成立して20年になります。当時生まれた人たちが大人になり、新しい動きを創り出しているのではないかという“芽”をこの数年感じます。彼ら彼女らは、社会にNPOを根付かせたいと思って活動してきた大人たちの背中を見て育ってきたのだと思います。それは私自身も同じで、NPO活動を通じて多くの先輩の背中を見て、学びながらやってきました。そこで今日は、私が先輩方を見てきて感じたことや、体験を通じて感じたことをお話しします。
まず、NPO活動に取り組む人々は、常に謙虚で真摯であるべきだということです。ある90歳を超えた教育学の先生が講演後、18歳の人から「ここがわからなかった」と指摘を受けました。するとその先生は「ごめんなさい、わかりやすく説明できなかった私が悪かったですね」と言ったのです。90歳を過ぎてもこう言える人でありたいと思いました。組織診断の結果を真摯に受け止め、自身を客観視する謙虚な姿勢が大切だと思います。
次に、自分の活動分野に特化するだけではなく、幅広い視野を持つことです。子どもは社会の課題をすべて背負っていると言っても過言ではありません。子どもという分野に特化するにしても、子どもはさまざまな環境の中で生きているということを掴み、社会全体の未来像を見据えたうえで活動に取り組む必要があります。
そして、何よりも「よりプロフェッショナルであれ」ということです。プロとはお金をもらうことではなく、自分の言ったことに責任を持つ、やりきるということだと学んできました。私もまだまだ若いみなさんと一緒に未来に向かっていきたいと思います。
アフリカ分野
NPOの活動は、世の中とは違う価値観をしっかりと差し挟んでいくべき
4年ほど前、アフリカはこれから羽ばたく大陸だと言われていました。しかしここ数年、資源価格の低落の中で、いわゆる「成功国」とそうでない国の差が拡大し、「成功国」の中でも、格差の問題がいかんともしがたく、抑えられていたはずの紛争が再燃するといった現象も起こっています。最近アフリカに行った人の中には、「アフリカといえば野生動物、といったイメージがあったが、行ってみれば高速道路も高層ビルもある。素晴らしい」などという人もいます。しかし、高速道路や高層ビルがあるということが、なぜ素晴らしいのでしょうか。「経済が成長すればよい」といったマインドセットが、私たちにもアフリカの人たち自身にも悪く作用し、アフリカがその本来の姿で繁栄する、というイメージが持てなくなっているように思います。
今回選ばれた4団体は、そうした図式とは異なる活動が評価されています。私たちNPOの活動は、一般的に存在する先入観や固定観念を乗り越えて、オルタナティブな価値観を差し挟んでいくべきです。今回選ばれた4団体は、アフリカに根差し、困難な課題に向き合って、解決策を見出すべく努力している団体です。こうした取り組みこそNPOの役割だと思っています。
アフリカ分野選考委員長
稲場 雅紀さん
贈呈式の最後は、認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター顧問の山岡義典さんから助成先の皆さんへの応援メッセージで閉幕しました。
大変なことを梃子に、ワクワクするような組織に
日本NPOセンター
山岡 義典さん
現在、各地で多様な団体が多様な課題に取り組まれていますが、組織基盤強化についてはモデルがあるわけではありません。各団体とも自由に行っていいのではないかと思っています。創設間もない団体ならば「組織基盤強化」というよりも「組織基盤づくり」でしょう。10年以上の団体ならば、「組織基盤改革」というところでしょうか。
さて、今回新たに助成を受けた団体のみなさんは、いろいろと心配なことがあることでしょう。大変なプレッシャーを感じているかもしれません。2年目の団体のみなさんは、これまで苦労しながらやってきたことが、ようやく目に見える形になってきているのではないでしょうか。そして3年目の団体のみなさんは、2年間で一定の成果が見えてきており、今後はさらにやっていけるという自信もついたのではないかと思います。これからも走り続けるのは大変でしょうが、ぜひとも新しい動きを作っていってほしいと思います。
活動をする中では、苦しいことや辛いことも多いでしょう。しかしそれを梃子にして、ワクワクするような組織に作り替えていってください。みなさんの大きな発展を楽しみにしております。