応援者を増やす「団体のPR・広報計画」の立案で
子どもの貧困と家庭の貧困解消に取り組む
「認定NPO法人CPAO(シーパオ)」を支援
認定NPO法人 CPAO
パナソニックグループは、従業員が仕事で培ったスキルや経験を広く社会に役立て、社会課題の解決に取り組むNPO/NGOの事業展開力強化を応援する「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」に、2011年4月から取り組んできました。
今回は9人の従業員がチームを組み、「認定NPO法人CPAO」を支援しました。プロボノチームは2022年7月6日から、団体の内部環境やウェブサイトの活用状況、法人からの寄付についてヒアリングを行い、大阪ミナミの繁華街での子どもの見守りサポートや秋の芋掘り遠足に同行。寄付をしてくださっているかたにも、アンケートをお願いしました。
そして12月9日にオンラインで最終報告を行い、中長期的な組織運営のための戦略を踏まえたHPのリニューアルや新規開拓・支援継続のためのアプローチ、寄付プラットフォーム利用の方法などを提案しました。
生活困窮を抱える親子の生活を丸ごとサポート
広報を強化し、寄付を伸ばすためにプロボノを活用
「認定NPO法人CPAO」は2013年5月に、大阪で起こった食べ物もないマンションの一室で母子二人の遺体が見つかった事件をきっかけに設立した団体です。「子どもの貧困を解決するために、親子の生活を丸ごとサポートする」という理念に基づき、活動しています。具体的には、夜回りや100人のシングルマザーへの聞き取り調査で集まった声をもとに、食を通したアウトリーチ(子ども食堂や宅食)、子どものニーズサポート(居場所活動や学習支援)、相談・生活支援(家族への直接支援や同行サポート)、実態調査・政策提言などを行っています。
CPAOは寄付が収入全体の多くを占めてはいますが、広報には課題を感じてきました。理事長の徳丸 ゆき子さんは、「活動当初からずっと個人寄付に頼ってきましたが、個人と法人からの寄付をそれぞれ伸ばしたくて、そのためには、広報を担当する人材が必要だと思い、昨年から専任の担当者を置きました。
これを機に、先延ばしにしてきた法人の支援先獲得に力を入れていきたいと考え、そのきっかけになればと、プロボノに応募することにしました」と、これまでの経緯を振り返りました。
団体内部・外部のステークホルダーの声をもとに
ツールごとのPR方法と広報戦略を提案
依頼を受けたプロボノチームは、寄付金額を伸ばし事業運営を安定させるためには、新しい支援者(寄付者)を増やすことと支援者をつなぎとめることが重要で、それぞれのステークホルダーに合わせた発信をする必要があると考えました。そこで中長期的な組織運営を見据えた戦略として、HPの修正、Facebookやメルマガとの連動、法人開拓、プラットフォームの利用といった複数の手段を提示、CPAOが有効性を認めた手段から実行できるように具体案を作成することにしました。
プロボノチームはまず、団体内部関係者やボランティアメンバーにヒアリングを行い、対象となる事業やサービスの現状を分析し、課題を整理しました。そこでいったん、CPAOに調査方針を提案し、既存の支援者(寄付者)など、外部のステークホルダーへのヒアリングを実施。ヒアリングの結果や支援先の意見を踏まえた事業展開の基本方針と成果指標を設定しました。そして最終提案では、その実現に向けたツールごとの具体的な方法を提案しました。
①支援者の窓口となるHP
「A段階(すぐにできる)・B段階(少しの変更でできる)・C段階(大きな変更が必要)」の3段階に分けて、リニューアル案を提示しました。
A段階としては、検索エンジンからの訪問者を増やすために、トップページを見てすぐに活動内容が理解できるようにすることや、SNSの更新情報をHPにも反映することを提案。B段階では、団体を知らない人からの共感を得るために、言葉による説明より具体的な数字や当事者の声、イラストより写真でリアルさを感じさせることを提案しました。そして最後にC段階として、行政の施策やセーフティーネットから漏れてしまう、寄付金にしか頼れない活動は強調するなどして、支援の重みづけがわかるページ構成にし、興味のあるページに直接アクセスできるようにすることを提案しました。
②新規開拓・支援の継続(個人)
既存の寄付者へのアンケート結果から、子ども支援への関心が高く、他団体にも寄付している人が8割にのぼり、支援先を検討する際の情報源はHPやSNSが多いことや、メルマガが継続寄付につながっている可能性があることが見えてきました。さらに、若年層にはワンクリックなどの手軽な寄付が有効であること、講演会などのリアルな場への露出強化により輪を広げていくこと、支援に対するお礼の言葉に添えてnoteの記事(メルマガのバックナンバー)を紹介することなどを提案しました。
③新規開拓(法人・大口の個人)
大企業なら翌年度の予算編成に入る時期、商店・中小企業なら年度末決算の見通しが立つ時期に面談等を通じ訴求すれば、寄付につながる可能性が高まると推定。また、予算作成や決算時期とは別に季節イベント、たとえば団体所有のキッチンカーを活用した夏祭りへの出店や、クリスマス会への来賓招待等によるPR活動が効果的ではないかと考えました。そこで、どの時期に、どう動くべきかを年間スケジュールにまとめました。
さらに、子ども関連市場の在阪企業・地元商店組合・地域の慈善家・企業労働組合といった有効と思われる訴求対象を選定し、それぞれの支援動機に応じた訴求ポイントと寄付につながる提案資料について検討を行い、具体策を提示しました。
④寄付プラットフォームの利用
新規支援者(寄付者)開拓の方法として、クラウドファンディングや、手数料が安く、団体に寄り添った設計になっている寄付プラットフォームの利用を提案しました。さらに、企業に対しては、商品などの販売売上金の一部を寄付してもらうことや、当事者に向けたSOSカードの設置協力をお願いすることなどを提案しました。
最終提案を受けての感想
徳丸 ゆき子さん(CPAO理事長)
具体的で、参考になる提案をありがとうございました。すべて試してみたいとは思っていますが、そこに充てる人手と費用が課題で、優先順位をつけて進めていきたいと考えています。まず法人営業を頑張り、固定費を下げ、人件費を確保する。そこから少しずつ、大掛かりなHPの改変に取り組んでいきます。
NPO業界が長くなると、「私たちはいいことをしているのだから」と、報告や広報がおろそかになりがちで、私もそれではいけないと思いながらも、流されてきたところがありました。でも、皆さんの能力の高さと温かい心に触れて、NPOといえども甘えることなく、一人ひとりの専門性や能力を高めていく必要があることを広く啓発していきたいと思うようになりました。
プロボノチームの感想
- 小林 敬さん
知り合いの中学教師の学校で、GW明けにきょうだいが、給食がなくて餓死したことが心のどこかに引っ掛かっていて、参加しました。想像よりずっと緊急性の高い大事な活動をしていると知り、頭の下がる思いです。これからも、自分ができることを実行に移していこうと改めて思いました。 - 吉田 洋一さん
本業は国内外の法人さんとの共創推進です。学生時代は学校地元の子ども会活動に、学生リーダーとして参画しました。今回のプロボノを通して、支援活動の原点は困っている当事者の気持ちにまず寄り添うことだと、実感を伴って学ぶことができました。 - 山本 雅一さん
これまでに参加したプロボノとは異なり、オンライン中心の活動で戸惑いもありましたが、生野や橋本の現場も拝見でき、ありがたかったです。CPAOさんの活動の根源的なサポートはまだまだという気持ちもあり、今後も何らかの形でサポートさせていただきたいです。 - 梅谷 真一さん
事務所にうかがって、皆さんとお話しできる機会も少なかったですが、参加させていただいて感謝しています。皆さんが自分の生活を投げ打ってまで、待っている方々のためにされている活動を自分事として受け止め、これからも広めていきたいと考えています。 - 古谷 健悟さん
徳丸さんの言葉からは、画面越しとは思えない、目の前にいるようなパワーを感じました。CPAOさんの活動を通して、大変な状況のご家庭や子どもたちの存在を知ることができ、感謝しています。このような活動をぜひ全国に伝えていけたらと思っています。 - 崎村 紘子さん
想定していた以上に幅広い活動内容で、驚きました。大阪の「グリ下」の現状やシェルターを見学させていただき、活動の重要性を学びました。今回は短い期間で、限定された内容にはなりましたが、個人的にも、できることから子ども支援を続けていきたいと思います。 - 藤原 全代さん
活動を知れば知るほど、幅の広さ・深さ・難易度が見えてきました。現場視察を通して、やりたいことと、やらねばならないこと、実際にできることのギャップにもどかしさを感じつつ、社会課題について考えるいい機会になりました。今回の経験を通して、私自身も地元で母子支援を模索していきたいと考えています。 - 吹田 恵樹さん
対面でのリアルなご支援ができず、何かの役に立てたのだろうかとの思いが残りましたが、パソコンの画面越しに、皆さんの真摯な思いがひしひしと伝わってきました。せっかくのご縁ですので、陰ながら、引き続きのご支援をさせていただきます。 - 辻 幸枝さん
自分も今後、子どもの支援をやっていきたいと思い、この活動に参加しました。私もシングルマザーで、皆さんのすごい活動を知って、心がしんどくなったりもしましたが、苦しんでいる親御さんたちに、今後も温かいご支援が届くことを願っています。
認定NPO法人 CPAO
2013年5月に大阪市内で起きた母子変死事件をきっかけに、シングルマザーへの聞き取り調査や夜回りから活動を開始。子どもの貧困を家庭の貧困ととらえ、困窮状態にある子どもとその親を中心に、親子の生活を安定させることを大切に活動を行っている団体。