福島の復興と被災者を支える中間支援組織
県内外の新たなネットワークの
強化・拡大を目指す

一般社団法人 ふくしま連携復興センター

福島県内外の支援団体と連携し、被災者を支援してきた中間支援組織「ふくしま連携復興センター」。震災から12年を経て、なお必要とされる支援継続のための新たなネットワークづくりに向けた営業資料をパナソニック従業員によるプロボノチームが作成。そのプロセスを紹介する。
[THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本版 第450号(2023年3月1日発行)掲載内容を再編集しました]

いまだ3万人が福島県内外に避難
全国26ヵ所の拠点で相談に対応

2011年の東日本大震災と福島第一原発事故から3月11日で12年となるが、福島県全体の約2.4%にあたる約337km2がいまだに「帰還困難区域」とされ、3万人近い人たちが福島県の内外に避難している。
そんな福島県で、2011年7月から被災者支援に取り組んできたのが「ふくしま連携復興センター」だ。事務局次長の鈴木里加子さんによると、「外部からの支援をとりまとめる中間支援組織として、福島大学災害復興研究所や県内外のNPOなどが協働して設立した」という。

「仮設住宅の環境調査や入居住民の見守りから始まって、現在は県内だけでなく、全国26ヵ所に広域避難者の生活再建支援拠点(相談窓口)を設置。各地域のNPOと連携を取りながら、年間約1000件の相談に対応しています。当初は、どんな支援策があるか知りたいという相談が多かったのですが、時間とともに、生活に起因する悩みが増えてきています。

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一般社団法人 ふくしま連携復興センター
事務局次長 鈴木 里加子さん

双葉町や大熊町の一部も“特定復興再生拠点”として避難指示が解除されてはいますが、まだ安心した暮らしを取り戻すにはほど遠い状況。帰還を考えている人から、現地の様子を教えてほしいという問い合わせもあります」
福島第一原発事故からの避難生活が長期化している福島では、震災による直接死者数1614人より、その後の避難生活による震災関連死者数のほうが2333人と多い。「さらに2021年2月と2022年3月に大きな地震が続いて、また沿岸部が被害に遭い、コロナ禍も加わって、心のケアがますます重要になってきています」
当初、震災から10年で打ち切られると思われていた復興期間は「第2期復興・創生期間」が設定されたことで、2025年度までは続く見通しとなった。これまで、ふくしま連携復興センターは国と県からの委託事業をメインとしながら、被災者への直接支援をしている団体をサポートし、ネットワークを構築してきた。
しかし復興予算の終了が見えてきたことから、「公的機関や民間団体など、あらゆるセクターの方々と連携して、地域コミュニティの中で包括的に住民を見守っていく体制をつくる活動」へとシフトしていくことになった。
「いろいろな団体とすでにつながりはあるものの、これから連携したい行政や企業、大学などの担当者に、私たちの活動の概要や意義をわかりやすく説明できる営業資料がなく、プロボノに作成をお願いすることにしました」

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地域の魅力を若者に伝える「ふるさと会議」
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復興支援員による活動報告会を定期的に開催

活動を後押しする営業資料2案を提案
関係者ヒアリングで「SWOT分析」

依頼を受けたプロボノチームの5人は2022年7月から、団体のステークホルダーへのヒアリングを重ね、団体を取り巻く社会背景や役割、課題を分析し、2パターンの営業資料を作成。その成果物を2022年12月22日、オンラインでふくしま連携復興センターに最終提案した。
第1案では、団体が連携支援の必要性から中間支援組織として設立された経緯、人口減少や高齢化、過疎化が復興を難しくしているという社会背景、地域コミュニティの再構築を目的としていること、活動内容や課題、そのために必要な市民参加のお願いなどをデータとともに紹介した。
さらに第2案では、新たに始めた「地域コミュニティにおける包括的支援」の具体的な成果を図式化して掲載した。まず、ネットワーク形成の事例として「ふくしま生活困窮者支援ねっと」の仕掛けづくりを取り上げた。大手スーパーにフードバンクのボックスを置いてもらい、集まった食品を登録団体が生活困窮者に届けるという取り組みだ。

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一般社団法人 ふくしま連携復興センター
事務局長 片平 祥則さん

伴走サポートの事例としては、双葉郡川内村で地元の住民ボランティアが始めた裏山体験や芋煮、バーベキューなどの「親子体験プログラム」を紹介。今では、学校関係者や学童保育をサポートしている団体も巻き込んでモデル事業化し、他の市町村への展開も検討しているという。
2つの案を受け取った、ふくしま連携復興センター事務局長の片平祥則さんは「第1案では団体の概要や活動趣旨をしっかり伝えることができ、第2案では具体的な事例を共有できそうです。その時々で使い分けていきたい」と話した。

続いてプロボノチームは、団体内外の関係者へのヒアリングをもとに、団体を取り巻く環境を「強み・弱み・機会・脅威」の4つの要素から分析した「SWOT分析」の結果を発表。「被災地のNPOや自治体、県外の団体ともコネクションをもっていながら情報発信力が弱く、そうした強みや魅力を一般市民に伝えきれていない現状」が浮かび上がった。と同時に、「社会課題に対する支援の方法を検討している企業に、従業員が市民活動に参加する機会を提供できるのではないか」といった期待も見えてきた。

団体の役割をわかりやすく図式化
全体像を知ってもらえる資料

一連の提案を受けて、事務局長の片平さんは「営業資料の中で、中間支援組織の役割を表現するのは困難な仕事だったと思いますが、私たちの活動を部分的に知っている人にも、全体像を知ってもらえる資料になりました。ヒアリングの中には厳しい声もありましたが、弱みを補い、強みを活かしていきたい」と話し、事務局次長の鈴木さんは、「震災当時、私は南相馬市にいたので、被災者と支援者の両面から、この活動にかかわってきました。資料の中でも“私たちの役割”の説明はまさに的確で、ほしかった答えがここに図式化されている!と思いました」と感謝した。
今回、初めてプロボノに参加した中村信之さんは、「震災の時は東京にいて、復興に対して何もできなかったことがずっと心残りで参加しました。こうして社会を支えてくれている組織や人がいるからこそ、私たちは普通に生活できているのだと改めて思いました」と感想を語った。また、中間支援組織とは何なのかという疑問からスタートした藤井圭子さんは、「ふくしま連携復興センターさんが間をつなぐことで、一つひとつの小さな団体ではなし得なかった支援が実現したことがわかりました」と、その意義を強調した。
そして最後に、プロジェクトマネージャーで福島在住の佐藤政樹さんが、「復興はまだ進行中であることを実感しました。福島を応援したい気持ちをもっている人は、たくさんいるはず。もっと福島の魅力や課題を発信して、応援者を募ってほしいと思います」とエールを送った。

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最終提案を終えたプロボノメンバーとふくしま連携復興センターのスタッフ

一般社団法人 ふくしま連携復興センター

中間支援団体として、福島の抱える課題の解決に取り組むNPO法人などが連携・協働を通じて、地域の中で主体的な役割を発揮できるよう、その活動を支援。福島県の復興や地域おこしに携わる160の団体や企業、個人などが会員ネットワークを形成し、各分野で活動している。