ひまわり畑やお互いさま精神が生んだ多彩な事業
活動の理念や広がりを伝える資料で、協力者を増やす

特定非営利活動法人 チームふくしま

復興のシンボル「ひまわり」で福島を元気づけてきた「チームふくしま」。支援対象が広がり、多様化してきた事業を一望できる資料づくりに、パナソニック従業員によるプロボノチームが取り組んだ。
[THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本版 第474号(2024年3月1日発行)掲載内容を再編集しました]

全国55万人がひまわりの里親に
種で福祉作業所の仕事をつくる

チームふくしまの活動の始まりのひとつは2008年。研修会社を経営していた半田真仁さんは、児童養護施設にボランティアで趣味の手品を披露しに行っていた。そこで、「子どもたちが一番寂しくなる日は、一時帰宅できる子とできない子に分かれる12月29日」と聞き、「子どもたちから学ぶ会」という研修メニューをつくり、毎年この日に施設の子どもたちと交流する会を企画した。
「そこに思いのある企業の経営者らが集まったことで、子どもたちの就職先や養子縁組が決まることもありました。そこで、働きやすく将来性のある企業と、若い人とをつなぐ取り組みを始めました」

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チームふくしま
理事長 半田 真仁さん

そんなさなかに起きたのが2011年3月の東日本大震災だった。
「私たち福島県内の経営者が中心となって、復興のシンボルであるひまわりの種を、仕事を失った福祉作業所で働く障がい者の方々に袋詰めしてもらい、全国の里親(種の購入者)に発送。育ったひまわりから採取した種を福島に送ってもらい、県内のあちこちをひまわり畑にして観光促進につなげる“福島ひまわり里親プロジェクト”を始めました」
広島出身の半田さんが思い描くのは、「原爆を経験した広島のように、人々の力で復興した福島が注目され、世界中から人がやって来る観光地になる未来」だ。
プロジェクトは全国で累計55万人以上が里親として参加するまでに発展、活動を安定させるために団体をNPO法人化した。

「応援してくださったみなさんから、“困った時はお互いさま”の精神を教えてもらいました。この優しさを次世代に伝えていきたいと思い、2022年から始めたのが“お互いさまの街 ふくしま”というプロジェクトです」
これは登録された飲食店などで、誰かのために「お互いさまチケット」を買って先払いすると、その後、チケットの利用者が無料か低価格で商品を購入できる「恩送り(ペイ・フォワード)」という仕組みで、県内外の55以上の店や施設が加盟している。

もう一つは、困窮している子育て世帯や奨学金を受給している学生に、個人や企業から寄せられた食料品や日用品を提供する「コミュニティフリッジひまわり」という取り組みだ。利用者は、登録した人だけが入れる電子ロック式の無人倉庫スペースで、人目を気にせず品物を受け取れる。「ここの整理や清掃は福祉作業所の障がい者の方々に仕事としてお願いしてるので、利用してもらうことはその仕事を支えることにもなります」

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55店以上が加盟する「お互いさまチケット」
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必要な人へ食料などを提供する
「コミュニティフリッジひまわり」

スタッフや会員にヒアリング
活動の広がりはマップで表現

しかし事業の増加に伴って、課題も出てきた。プロジェクトごとにホームページを制作してきたため、団体の全体像や活動意義がわかりにくくなってしまったのだ。そこでチームふくしまはプロボノチームに、「新たに連携する企業や学校、行政関係者に、団体の理念や活動内容を客観的に伝えられる資料」の作成を依頼した。
これを受けて、プロボノチームの5人は2023年9月から活動を開始。「チームふくしまを初めて知る人が、その理念や全体像を理解し、自分も活動や支援に参加したいと思えるような内容」の営業資料作成をゴールとした。
まずはホームページなどの情報を整理し、チームふくしまのスタッフや会員、活動に共感して協働している参加者、ボランティア参加者などに個別ヒアリングやアンケートを実施。団体に寄せる思いを聞いた。類似のサービスを提供する他団体についても調査し、活動分野におけるチームふくしまの位置づけを探った。そうしてまとめた資料をもとに、2024年1月30日にオンラインで最終報告を行った。
資料の冒頭では、それぞれのプロジェクトがいつ誕生し、どんな考えに基づき、どんなことを行っているかが一目でわかる図をシンボルであるひまわりの成長で表現。豊富な写真やイラストを交えて具体的に紹介した。ヒアリングによって明らかになった、それらの活動に通底する「チームふくしま」の理念もまとめた。
続いて、それぞれのプロジェクトにどんな形でかかわれるか、実際に参加する際の手順とWEBサイトへのリンク先を示し、活動の全国的な広がりをマップで表した。さらに、活動に参加して、どんなメリットがあるのかを実感してもらうために、「自身の視野拡大・成長につながった」「同じ志をもつ全国の人とつながれる」といった参加者の声も紹介。最後に、行政や企業に協力や参加を呼びかける文案や、「ホームページの整理」「顧客管理によるファンドレイジング」といった、今後取り組むべき課題についても提言した。

福島県民だからこそできる役割
石川県の方へ“恩送り”をしたい

最終報告を終えたプロボノチームの中谷将也さんは、「プロボノに参加したのは2回目。前回は地元・西宮市のNPOを支援し、今はそこの理事となって活動に参加しています。チームふくしまのみなさんにも貢献できることがあれば、今後も交流を続けていきたい」、東北出身の神原由香里さんは、「ヒアリングを通して、社会課題に自分ごととして取り組まれている姿に感銘を受けました。復興支援に心から感謝しています」、河野保江さんは、「陸前高田には行ったことがありますが、福島にはなかなか行けず、社会勉強として参加した。3月には、いわき震災伝承みらい館に行こうと思っています」と、それぞれ感想を語った。そして川村健太さんと平井瑞穂さんは「初のプロボノで、みなさんの思いをヒアリングし、世界が広がった」と話した。

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「チームふくしま」スタッフ
山田 沙也加さん

最終報告を受けた「チームふくしま」スタッフの山田沙也加さんは、「それぞれの活動に参加した方が、その活動だけにとどまってしまうこともよくあったので、組織全体を見渡せる資料ができて、初めての方にも、すでに知っている方にも紹介しやすくなりました」と感謝を述べた。

理事長の半田さんは、「団体にまだ伸びしろがあることや素敵な方々が活動にかかわってくれていることにも気づかせてもらった。“コミュニティフリッジひまわり”を、これまでサポートされる側だった人がサポートする側に回る“福福連携モデル”として広めていきたいので、この資料を活用していきたい」と意欲をのぞかせた。
さらに、1月の能登半島地震について、「私たちは震災を風化させないために、2021年に“ひまわり防災検定”という検定制度をつくり、防災減災に向けた独自の活動もしてきました。被災経験のある福島の住民だからこそできる役割があると思うので、石川県で“ひまわり里親プロジェクト”を展開したり、“お互いさまチケット”で石川県産品を応援するなどして、今度は私たちが石川県のみなさんに恩送りをしたい」と、これからの展望を聞かせてくれた。

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最終提案を終えたプロボノメンバーとチームふくしまの皆様