運営ノウハウを他地域に伝えるマニュアルづくりで「公益社団法人ユニバーサル志縁センター」を支援

パナソニックグループは、従業員が仕事で培ったスキルや経験を活かし、NPO/NGOの事業展開力の強化を応援する「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」に、2011年4月から取り組んできました。
今回は6人の従業員がチームを組んで、「公益社団法人ユニバーサル志縁センター」を支援しました。ユニバーサル志縁センターは支援対象地域の拡大に向けて、他地域への事業展開を進めていて、そのための運営マニュアルをプロボノチームが作成することになりました。プロボノチームは2023年7月から、ユニバーサル志縁センターの職員や事業の展開先となる3団体へのヒアリングを重ね、10月には中間提案を実施。完成した成果物を2024年1月30日の最終報告会で提示し、納品しました。

子ども・若者支援事業を3地域で展開
属人化した業務をマニュアルで伝える

「公益社団法人ユニバーサル志縁センター」は2011年に設立され、NPOや生活協同組合、労働組合、社会的企業などとゆるやかにつながりながら、地域の社会課題の解決を目指す中間支援団体です。若者の就労支援や困難を抱える子どもたちへのコンピュータ教育の機会提供、ユニバーサル就労の普及、社会的経済セクターの協働、大規模災害支援などに取り組んできました。
中でも、「首都圏若者サポートネットワーク」は児童養護施設や里親家庭など、なんらかの事情から社会的養護のもとに育った子ども・若者が、社会の中で自分の力を発揮していけるようにサポートする民間のネットワークです。「若者おうえん基金」を立ち上げ、子ども・若者に寄り添って伴走型の支援を行う伴走者への助成金を給付しています。

しかし、この事業には課題がありました。ユニバーサル志縁センター事務局の岡部和義さんは、こう振り返ります。
「この事業を首都圏だけでなく、山陰・広島と岡山・九州の3地域でも展開することとなり、私たちのノウハウをしっかり伝えていくマニュアルが必要になりました。ところが、私たちの団体は少人数で、業務が属人化していて、私自身もマニュアルをつくるのが得意ではないため、情報共有ができていませんでした。そこで、プロボノに応募し、お願いすることにしました」

マニュアルを使う団体にヒアリング
要望を反映し、より使いやすい形に

依頼を受けたプロボノチームは、「首都圏若者サポートネットワーク」の取り組みを他地域でも展開できるように、「若者おうえん基金」の基金造成・助成・管理の方法について必要な項目を洗い出し、手順をまとめたマニュアルを作成することにしました。
そこで、ユニバーサル志縁センターの職員や、他地域展開の際に実際にマニュアルを使う「おおいた子ども支援ネット」「どりぃむスイッチ」「ワーカーズコープ」に、ヒアリングを実施。マニュアルは、ユニバーサル志縁センターでもともと使われているエクセルシートをベースとして、そこで使われている複雑な関数を読み解きながら、必要な要素を損なわないように、シンプルにできそうなところはわかりやすく整理していきました。

毎週木曜日には定例ミーティングを開き、マニュアルづくりを進めていく中で出てきた疑問点は、ユニバーサル志縁センターにメールで質問し、メールのやり取りでわからないところは、ウェブ会議や現地訪問などを通して解決していきました。
マニュアルの骨子ができた時点で中間提案を行い、実際にマニュアルを使う3団体に集まってもらって、合同ミーティングを開催。そこで出された意見を反映する形で課題点を解決し、最後の調整を行いました。

そして2024年1月30日、プロボノチームはオンラインで最終報告を行いました。まずは、ユニバーサル志縁センターの社会的意義や実績、成果などをまとめた「事業運営の概要」、「若者おうえん基金」の基金造成と助成金審査において、いつ頃どのような業務を行えばいいか、そのロードマップを可視化した「年間モデルスケジュール」、それに伴う業務の流れを示した「個別業務フロー」と「全体業務フロー」を提示しました。

さらに、業務に必要な「ツールと手順書」として、NPOへの寄付ができるプラットフォーム「シンカブル」・クラウドファンディング・銀行振込という3通りの寄付者の管理データから「寄付者管理シート」を作成する手順書や、そのデータから寄付金受領証明書発行に向けての手順を図入りで説明した「寄付者管理マニュアル」、寄付金受領証明書を発行する手順を示した「領収書発行マニュアル」、助成金審査の手順と利用するフォームを説明した手順書と、各審査員の評価を入力する「助成事業審査シート」、審査員の評価結果を自動的に集計する「助成金審査集計シート」などを提示し、納品しました。
それぞれの内容と使い方、要望を受けて修正した点を説明したあとには、ユニバーサル志縁センターとの質疑応答とディスカッションの時間を設けました。

最終報告を受けての感想

岡部 和義さん(ユニバーサル志縁センター事務局)

私が提供したメモ程度のものを頼りに、画像付きのきれいなマニュアルに仕上げていただき、感謝しかありません。マニュアルの使用を想定している団体さんにも実際に使ってもらって、そこで出た細かい課題点まで、プロボノチームの皆さんに修正していただくことができました。ちょうどクラウドファンディングが終わったタイミングでもあったので、「領収書発行マニュアル」をさっそく使わせていただいた団体もあり、早くも活用しています。

プロボノチームの感想

  • 朝井 豪士さん
    日本赤十字社で働いていた経験から、支援する側の気持ちや意義、モチベーションなどを知りたくて参加しました。ユニバーサル志縁センターさんが取り組む就職しづらい子たちのサポートなど、若者支援は大事な活動で、今回のマニュアル化によって広く浸透し、若者に寄り添う方が増え、苦しみを感じる方が少なくなればと願っています。今後も団体のホームページを拝見しながら、活動を見守っていきたいです。
  • 寺本 英夫さん
    ユニバーサル志縁センターさんのような団体がないと、助成金もより広く浸透しないのだということを改めて教えていただきました。プロボノを進めていく上で、パワーポイントはまだ使い慣れていましたが、エクセルの関数などはよくわからない部分も多く、技術面でも改めて学びとなりました。
  • 竹西 和明さん
    関西から関東に引っ越してきて、時間に余裕が生まれたのと、自分の力でどのような協力ができるのか、試してみたくて参加しました。プロボノで知ったエクセルの関数は業務でも活かすことができて、自分のスキルが広がりました。普段だったら会うことのない社内の人たちとの縁も楽しむことができました。
  • 相澤 淳さん
    入社以来、同じ会社で働いてきて、社会と少し疎遠になっていたことから、何かお役に立ちたくて、初めてプロボノに参加しました。ユニバーサル志縁センターさんの活動を知ることができたのも興味深い体験でしたし、もともと使われていたエクセルシートがかなりつくり込まれていることにも驚きました。マニュアルを実際に使っていただけて、うれしく思っています。
  • 大嶋 真奈美さん
    プロボノに参加したのは3回目です。児童養護施設を出た方が、さまざまな困難に直面することは社会問題にもなっているので、助成金を審査する活動はとても重要だと思います。こういうお金があることで、活動できる方や助かる方がたくさんいることを改めて知ることができました。これからも、何かつながりをもてたらと思っています。
  • 中村 明日香さん
    プロボノ活動は初めてで、どんなプロセスを踏んで進めていくのかもわからなかったのですが、今回参加したことでプロボノ活動自体はもちろん、いろいろなNPOの皆さんが、どのように業務を回しているかということもわかり、勉強になりました。機会があれば、またプロボノに参加したいです。
写真
最終提案を終えたプロボノメンバーとユニバーサル志縁センター事務局岡部さんとの記念写真

公益社団法人 ユニバーサル志縁センター

困難を抱える子どもの支援を目的に、生活協同組合や労働組合、社会的企業などがネットワークを結んで社会課題の解決を目指す中間支援団体。
地域の社会的課題解決を支援するために、NPOから企業まで、あらゆる人・組織と連携して、一人ひとりを大切にし、誰もが暮らしやすく参加できる社会=ユニバーサルな支援社会を目指して、優しく豊かな地域社会を構築することを目指して活動している。