■1968年 恐竜のようにはなりたくない
創業50周年の記念諸行事が一段落した1968(昭和43)年秋、「恐竜のようにはなりたくない」というセンセーショナルなタイトルの広告が新聞紙上を賑わした。その頃、事業は順風満帆、「いざなぎ景気」で活況を呈する国内市場ではカラーテレビやクーラーが増販をけん引し、輸出も年間1,000億円の大台突破が目前に迫っていた。そうしたなかで当社は、「松下電器はことし創業50周年をむかえ、おかげさまで日本の大企業の一つに数えられるようになりましたが、いま一ばん自身をいましめていることは、企業が大きくなりすぎて、末端まで生き生きとした神経の通わない会社になるということです」と、自戒をそのまま広告に仕立てたのである。これは三十余年前、基本内規(1935年制定)に「松下電器ガ将来如何ニ大ヲナストモ常ニ一商人ナリトノ観念ヲ忘レズ」と定め、会社が大企業病に陥るのを誰よりも恐れていた、松下幸之助の願いそのものであった。