■1973年 10年前のこの広告
1933(昭和8)年、松下幸之助は電機業界関連の新聞社、雑誌社から記者を招き、新規事業としてモーターの製造を開始する旨を発表した。その会見における幸之助と記者のやりとりの紹介で、この広告は始まる。当時の日本では、せいぜい一部の家庭で、扇風機や井戸用ポンプにモーターが使われていた程度であった。しかし、欧米の先進諸国では違った。家庭電化を通じてモーターの普及がはるかに進んでいたのである。とすれば、日本でも家庭電化が進めば、モーターの需要は激増するはず。ましてや電化の推進は自分の使命ではないか。こうした信念で、幸之助は開発に乗り出したのだった。それから30年後の1962年、「三十年前放たれた矢は 今ピシッと命中した」と題する広告が、数々の製品を支えるモーターの活躍を伝えた。さらに10年後の1973年、それに朱書きを加えるかたちで、本広告が登場した。モーターの活躍する場が、また一段と広がったのである。