【現地レポート】プロジェクト終了後、
自走し始めたケニアのエンクトト地区
2018年から始まったナロク南準県にある無電化地域のエンクトト地区のプロジェクト。再生可能エネルギーによるあかりと電気を支援するとともに、協働パートナーである国際NGOワールド・ビジョンによる現地での支援プログラムで教育と健康の機会創出をするこのプロジェクトは、2021年9月に3年を迎え、コロナの影響で一部活動出来なかったものの、概ね一定の成果を上げ予定通り完遂した。
しかし、我々が本来目指したコミュニティの自走は実現されているのか?
プロジェクトが終了した1年後の2022年10月、再び現地を訪れコミュニティの今に追った。
無電化地域に電柱が立ち電線が伸び、新しいビジネスが生まれ始めた
当たり前の事だが、無電化地域には電気を運ぶ電柱も電線もない。都心部から地方に向かっていくと途中で電柱と電線がなくなり、ここからは電気がないんだと実感する。エンクトト地区も無電化地域なので、もちろん電柱も電線もなかった。しかし、小学校に寄贈した太陽光発電の小型蓄電システム(PSS:パワーサプライステーション)の余っている電気を近くのマーケットに売電するプランを企画し、その結果、電柱を立て電線を小学校からマーケットまで伸ばす事に成功した。今年の9月から遂にエンクトト地区は電化地区へと生まれ変わった。その距離わずか約100メートルである。しかしコミュニティにとっては夢の様な100mである。
マーケットでは電気が通ったことで新しいビジネスが生まれ始めている。床屋では電気式のバリカンが導入され、携帯を充電するサービスが可能になり、またテレビを置いてサッカーの観戦等を有料で視聴させるビジネスも生まれている。また日の出前の早朝や夜間の営業も可能になり、営業時間も伸びている。このようなサービスの拡大で村人は生活環境が向上し、マーケットも新規ビジネスで収入の向上につながっている。さらにマーケットへの売電で、寄贈したPSSのメンテナンス費用を捻出できる予定である。まさに三方良しのビジネスモデルの実現である。
電化された医療施設に、政府の電気機器の支援が始まり出した
エンクトト地区でPSSを寄贈したのは小学校とともに近くの診療所である。
診療所に電気が通り、ワクチン用の冷蔵保管庫を設置することで数多くの村人のワクチン接種につながっている。コロナの影響があったとは言え、ワクチン接種者は、2022年は2020年に比べて約2.4倍に伸びた。
また診療所が電化され、数多くの医療実績を上げたことで、政府もこの診療所への電気機器の支援を始め出している。医療で使うピンセットやメスを滅菌処理出来る電気式のものや、冷蔵庫なども支援され、患者への更なるサービス向上につながっていると言う。事実、夜間の出産者は2020年に比べ約4.2倍に伸び、夜間診療の患者に至っては2018年の64人に対して2022年は3092人と爆発的にその数が伸びている。ここを担当する看護師は夜間の患者の対応に追われて、夜も眠れないと冗談交じりに笑った。
地区の責任者たちが今後の成長に自信
この地区のPSSの管理をしているエンジニアが、電気を活用したコミュニティのさらなる生活向上に自信を見せている。「まだまだ電気の活用方法があるのではないかと考えている」と言う。彼はこのプロジェクトが始まったときに、今後PSSを村人たちだけでメンテナンスできるように育成した人材の1人である。
またこの地域の責任者は、「電気があらゆるものをつなげてくれた」と言う。電気やあかりがあるところに人が集まり、人々が繋がり、電気によって新しいビジネスに繋がり、電気によって夜間も勉強でき更なる学業の向上につながり、好循環が生まれていると感謝してくれた。コミュニティで力合わせてまだまだ大きくすることができると自信を覗かせた。
現地の活動を支える国際NGOワールド・ビジョンのスタッフ
何といってもコミュニティの自走に欠かせないのが、現地で支援プログラムを実施してくれている協働パートナーの国際NGOワールド・ビジョンの存在である。決して生活するのに便利とは言えない様なコミュニティ近くに住み、コミュニティに深く入り込み、村人と共にコミュニティの発展に向けて活動してくれている。このようなNGOの存在無しでは我々のプロジェクトの成功はあり得ない。
彼らと共にこのプロジェクトを進められたことを心から感謝したいと思う。
今回はプロジェクト終了1年後に現地を訪問したが、確実にコミュニティは自走し始め、さらに将来に向けてあらゆる努力をコミュニティ全員で始めていることが確認できた。
まさに我々が目指した好循環が起こり、大きなうねりになろうとしている。
この地区の誰もが生き生きと暮らせる共生社会の実現に向けて、我々も引き続き支援をしていきたいと思う。
【関連サイト】
国際NGOワールド・ビジョンとの協働記事
国際NGOワールド・ビジョンのホームページ
以前のプロジェクトについて