【現地レポート】女性の自立支援に向けた
UNFPA(国連人口基金)との協働  ケニア・サンブル郡

ケニアの地方の無電化地域に行くと、古い風習がまだまだ残っている。
伝統的な民族衣装や装飾品などを身につけて大勢で歌と踊りで来客を歓迎してくれる、楽しそうなその様子は、本当に歓迎して貰えていると感じ嬉しくなる。しかし伝統的風習は、その様な微笑ましい良いものばかりではない。一方では現代においては改善されるべき風習もある。児童婚やFGM(女性器切除)も現代においては改善されるべき風習である。体が成熟していない状態での妊娠は母子共にリスクが高く、また育児の為に、少女たちの、教育を受ける等の機会を奪ってしまう。FGMも不衛生な刃物で切除して、大量出血、化膿などをし、体へのダメージは大きく、健康面でも精神面でもリスクがある。ケニアでは現在それらは法律上禁止されている。しかし都市部では減ったものの、地方に行けばまだまだその風習は根強く続いている。
2022年からその問題と向き合っているUNFPAと協働して、ソーラーランタンを寄贈することにより女性の自立を支援し、貧困から脱する事で、それらの風習も削減できるようなプロジェクトに参画する。
私たちからは想像できないような実態について対応すべく、UNFPAのメンバー達と共に現地に入った。

ビーズの装飾品で身を飾りながら、踊りで歓待してくれる女性たち

貧困は根本課題の主要因

素朴な疑問である。法律でも禁止されている風習がなぜなくならないのか?
確かに長年コミュニティで行われてきた習慣や意識はなかなか簡単には変わらない。女性が望まなくても、結婚する際に男性からFGMが条件と言われたり、嫁に行かせるために親が望んだりする様だ。また貧困も悪き習慣を切れない要因になっている。目立った産業もなく、安定した仕事にも就けない。娘を嫁に出すことで結納として家畜等が贈られる。これが一家の支えになっているので、貧困な家庭は娘を早めに嫁に出す、その為にFGMを娘に強いる、その様な環境が変わらずに存在している。

ソーラーランタンのあかりで機会を創出

UNFPAはこれらの問題に対応すべく、女性たちの収入源として現地の装飾品のビーズによる制作や販売の支援をしている。但し無電化地域なので、夜間は殆ど制作出来ない。そこでソーラーランタンの寄贈により夜間の制作を可能にし、収入向上の機会を増やし、女性達の自立を支援する活動を開始する。
また夜間も勉強出来る様になり、少年少女たちの教育の機会を増やす事で、通常の学業に加えてこの様な風習に対する理解も深める。
まさにあかりが彼らの未来を照らすプロジェクトだ。

風習がまだまだ残るサンブル郡とウエストポコット郡

ケニアのFGM実施率は21%、なんとサンブル郡では86%、ウエストポコット郡では74%に至る。電化率はケニア全体でも9%しかないが、サンブル郡ではわずか5.8%、ウエストポコット郡では3%だ。電気が通らない不便さが、貧困から抜け出せない要因になっている。
今回のUNFPAとのプロジェクトでは、特に風習が多く残り、無電化でもあるサンブル郡とウエストポコット郡にソーラーランタン2000台を寄贈する。500台をビーズ制作する女性に、1500台を子どもたちの学校に寄贈する。

小学校での寄贈式の様子

子どもたちを育てる女性の実態

無電化地域に住む、以前は自らも少女たちにFGMをしていたと言う女性に実際に話を聞いた。彼女は9人の子どもを育てているが、夫に先だたれ収入はほとんどなく、1人300シリングもらえるFGMを収入源にしていた。1日に2人した事もあると言う。法律では禁止されている事は分かっていたが子どもたちを養っていくためには仕方なかったと話す。
今ではビーズ作りを仕事にして、支援プログラムでサポートを受けながら月に8000シリング程を稼げる様になり、生活は何とか出来ていると語る。
2畳程で小さな窓が付いているが昼間でも暗い部屋で、ビーズ作りをしていると教えてくれた。彼女にランタンを渡し実際に使って貰った。インタビューの時には硬い表情で笑顔は無かったが、部屋にランタンのあかりが灯った瞬間に、ワーっと大きく驚き、これなら夜でも沢山作れそうと、子どもの様に笑ったのが印象的だった。

ソーラーランタンのあかりのもとでビーズを制作する女性

数多くのパートナーが支えるプロジェクト

このプロジェクトには多くのパートナーがいる。ケニア政府からはジェンダー局、反FGM委員会および観光省が、そして現地のプログラム支援はケニア赤十字社とワールド・ビジョン・ケニアが参画している。彼らがUNFPAとのパートナーシップで自分達の強みを活かして支援活動をしている。まさに大規模なプロジェクトである。流石は国連が指揮するプロジェクトは規模が大きい。

今回この様なプロジェクトに当社もあかりの提供で参画出来た事を有り難く思う。またこのプロジェクトに参画する機会を与えて頂き、また現地でも色々と支援頂いたUNFPAの新井さんとダイナーさん始め、副代表のDr.クリスさん、またすべてのUNFPAのメンバーに心から感謝したい。

UNFPAのメンバー達(左端が新井さん、左から4番目Dr.クリスさん、右端がダイナーさん)

「みんなで”AKARI”アクション」は使い終えた本・CD・DVD・おもちゃなどをリサイクル頂くことで、どなたでも無電化地域にあかりを届けることができます。皆さまの行動が世界の誰かの未来を照らすことに繋がります。あかりを無電化地域に届ける活動に、ぜひご参加ください。

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