5-3. 冷蔵庫

「おい、驚いたで。社長の家に冷蔵庫の具合をみにいってきてんけどな、中に何入ってたと思う」「そんなにええもん入ってたんか」「逆や。何と芋のつるや。丼がひとつと、そこに芋のつるが入ってるだけやった」

GHQの指令で、給料までも制限されていた幸之助の生活は窮乏していた。松下電器の再建に心血を注いできた幸之助にとって会社は赤字、自分は食うにも困るという非常に苦しい日々であった。昭和24年には松下電器の物品税滞納が世間の話題になり、幸之助は新聞に「滞納王」と報じられるほど行き詰まった状況の中にいた。