6-3. 冬の海水浴場
アメリカ滞在中のある日、幸之助は海水浴場を見に行く機会があった。しかし季節は冬である。しばらくして、寒さのあまりトイレに行きたくなった。人影のない海水浴場の公衆トイレに向かった幸之助は、思うともなしに、落書きだらけの汚れたトイレを予想していた。

幸之助は考え込んだ。日本では役所や役人は「お上」と奉り、税金は「納める」ものである。しかし、なんとアメリカは逆ではないか。役所をサービス機関ととらえ、目的をしっかり自覚して税金を払うアメリカ人の姿は、後々までも幸之助の脳裏に焼きつくことになった。
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