Panasonic NPO/NGOサポート
プロボノ プログラム
2022年度プロジェクト成果報告会
5団体を支援したプロボノチームが半年に及ぶ取り組みを発表
2023年2月7日、「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」の2022年度プロジェクト成果報告会をオンラインで開催しました。
パナソニックグループは、従業員の仕事のスキルや経験を活用し、NPO/NGOの支援に取り組む「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」を2011年から展開してきました。これまでに364人の従業員が参加し、61団体に65件の支援をしました。支援先は、NPO/NGOの組織基盤強化を支援するサポートファンドで助成した団体や、企業市民活動の重点テーマとしている「貧困の解消」に貢献し得る団体、災害支援をしている団体を中心に選定しています。
2022年度は、34人の従業員が約半年にわたって、5団体を支援しました。成果報告会には、プロボノ プログラムの参加者25人に加えて、参加を希望したパナソニックの従業員と、プログラムの運営を共にしてきたサービスグラントの皆さんの総勢89人にご参加いただきました。
●各プロジェクトの成果報告
フェアトレード商品の社内消費を推進する広報ツールを作成
認定NPO法人 フェアトレード・ラベル・ジャパン プロボノチーム 田中 薫さん
フェアトレード・ラベル・ジャパンはフェアトレード・ラベル運動を通して、企業・市民・行政の意識を改革し、フェアトレードの理念を広めることに取り組む団体です。私たちは8人のメンバーで、フェアトレード商品の社内消費を促す企業向けの営業活動ツール、社内消費に取り組む企業の認定制度「フェアトレード・ワークプレイス制度」の設計企画、「フェアトレード・ワークプレイス」HPのコンセプト企画の作成に取り組みました。2022年6月から10団体のヒアリング、基本コンセプトのまとめ、プロトタイプの提示などを経て、11月に最終報告を行いました。団体の皆さんからは、「たくさんのメンバーが広範囲のことに取り組んでくださった」と、感謝の言葉をいただきました。活動を通して私たちも、「世界の課題について考えることができた」「企業へのヒアリングを通じて刺激をいただき、良い大人の社会見学ができた」など、多くの気づきをいただくことができました。
[他チームからの感想]
前田 博さん(TOKYO PLAYチーム)
8人という大所帯のメンバーをまとめながら、3つもの成果物を、この短い期間で仕上げるのは、とても大変だったのではないかと思いましたが、週1のミーティングで理解を深め、チーム内で作業を分担していたとうかがって納得がいきました。
生活困窮者支援の寄付者を増やす広報戦略を提案
認定NPO法人 CPAO(シーパオ) プロボノチーム 吉田 洋一さん・藤原 全代さん
CPAOは、大阪で生活に困窮している親子を支援しています。広報担当者が退職し、個人や企業、大口の寄付者の拡大が急務で、そのための広報戦略立案に取り組みました。プロボノチーム9人で2022年7月から、代表と理事へのオンラインインタビューや定例会を通して現状や課題感をつかみ、過去の寄付者にアンケートを実施。団体HPの閲覧実態を分析しました。大阪ミナミ繁華街での巡回パトロールや、シェルターで過ごす少年との晩ごはん会、日帰り遠足にも同行し、12月にHP修正などの最終提案をオンラインで行いました。CPAOさんは、「人・お金・時間に課題があり、全部はできないが、まずは法人開拓から進めたい」とのことでした。プロジェクトを通して、組織運営・寄付金の大切さや、居場所のない子どもたちが抱える問題の深刻さを感じると共に、明るい未来を見通すことが難しくても人生をかけて活動する皆さんの情熱や、人の輪の温かさに頭の下がる思いがしました。
[他チームからの感想]
三好 卓也さん(フェアトレード・ラベル・ジャパンチーム)
ドラマティックで、熱い思いがあふれる発表をありがとうございました。広報の担当者がいなくてもできる方策をいろいろと工夫して、アドバイスをされていて、相手の状況をよく考えた活動であることに感銘を受けました。
中海の自然再生を目指す活動をマーケティング基礎調査
認定NPO法人 自然再生センター プロボノチーム 西堀 圭さん
自然再生センターは島根県の中海・宍道湖の自然再生を目指した活動をしています。5人のチームで、今までの活動が地域住民や支援者、重要なステークホルダーにどう受け止められているかリサーチし、今後の事業戦略に活用できる情報としてまとめました。2022年7月から現地調査ということで、松江市の事務所を訪問し、天神川の水草刈りを体験させてもらい、地元の漁師さんにも話を聞きました。団体理事への個別ヒアリングや、イベント参加者・支援者64人へのアンケートも実施し、12月に最終報告を行いました。団体からは、「アンケート調査の結果から、自分たちを客観的に把握できた。たくさんの温かいメッセージに胸が熱くなった」とのメッセージをいただきました。途中で、団体の求めているものと私たちの認識がずれていたこともありましたが、相手が必要としているものを考えることの大切さに気づきました。団体のために何ができるか議論をすることで、一体感が生まれました。
[他チームからの感想]
古谷 健悟さん(CPAOチーム)
早い段階で現地に行って現地の方とメンバーで交流したことが、とても素晴らしいと思いました。スケジュールをきっちり立て、資料やメンバー間のやり取りを整理し、週1の打ち合わせにほぼ全員が出席するという地道な活動が成果につながったのだと思います。
福島の復興に取り組む中間支援組織の営業資料を提案
一般社団法人 ふくしま連携復興センター プロボノチーム 佐藤 政樹さん
ふくしま連携復興センターは東日本大震災を機に設立された中間支援組織で、今でも約3万人近くいる県内外の避難者の方々や避難先から戻ってきて被災地で生活再建をする人達、地域おこし協力隊など地域の担い手となる方々への支援をしています。今回は5人で2022年7月から、団体の活動や実績を整理し、企業・自治体・NPOからの共感と応援が得られるような営業資料を作成しました。団体には活動の記録や資料が少なく、関わりのある外部団体が発信した情報や関係者へのヒアリングを通して実績を整理していきました。さらに定時社員総会に参加したことで、自治体やNPO団体から高い信頼を得ていることや中間支援組織としての社会的役割が見えてきました。営業資料は活動中心と事例中心の2パターンを12月に最終提案し、団体からは「中間支援組織の役割をうまく図式化してくれて、活動を部分的に知っている方にも全体像を知ってもらえる」と言っていただきました。プロジェクトを通して、個々の力をつなげる中間支援組織の重要さと、福島の復興が今も続いていること、震災が地域コミュニティに与える影響を知ることができました。
[他チームからの感想]
山本 政也さん(自然再生センターチーム)
団体の資料が残っていない中で、大変だったことが伝わってきました。実際に総会に参加したり、外部団体にヒアリングをしたりしたことが気づきにつながり、さらに事例を積み重ねていくことを提案する流れができたのだと思いました。
遊びの価値を広める活動伝える団体紹介資料を作成
一般社団法人 TOKYO PLAY プロボノチーム 寺本 英夫さん
TOKYO PLAYは子どもの遊びにやさしい環境を目指し、イギリスのLondon Playを参考に、遊びに特化した活動をしている中間支援団体です。5人のチームで2022年6月から、週に1度の定例会を30回開き、外部関係者・内部関係者へのヒアリングを重ねました。活動の現場にも足を運び、道路を歩行者天国にする「みちあそびイベント」や、インクルーシブ公園のイベントに参加しました。初めは営業資料の作成ということで依頼を受けていましたが、活動を理解してもらう団体紹介資料にすることを提案し、12月に納品しました。団体からは、「身内だけでわかっていたことが、外部からどう見られているかよくわかった。中間支援団体としての位置づけも言語化してもらえたので、団体紹介資料ではあるが、営業資料として使っていきたい」とコメントをいただきました。子どもを中心としたネットワークの中で人の輪が広がり、そこに社会を変える副産物が秘められていることを感じました。
[他チームからの感想]
佐藤 政樹さん(ふくしま連携復興センターチーム)
団体が活動している現場に参加し、じかに話を聞けたことで、とてもいい経験をされたのではないかと思いました。日々成長する子どもとの関わりは地域の日常でもあります。これからもTOKYO PLAYさんが、いい活動をされることを期待しています。
●講評
相手を理解し、すべてをプラスに受け止める姿勢に感銘
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 企業市民活動推進部 部長 福田 里香
忙しい中、自分の時間を使って参加し、相手先を理解するところから始めている皆さんの取り組みには、頭が下がります。フェアトレード・ラベル・ジャパンチームは「大人の社会見学」とたとえて、すべてをプラスに受け止めていたことに感銘を受けました。CPAOチームの発表にあった「未来を見通すのが難しくても支援を続ける」という言葉も、心に染み入りました。自然再生センターチームは、全員が団体のために何ができるか議論したところから、一体感が生まれた点が印象的でした。ふくしま連携復興センターチームは、実現したい社会を伝えた上で一緒に活動していくことの大切さを教えてくれました。そしてTOKYO PLAYチームは、普段考えないような側面から遊びと関わる団体の活動に、真摯に向き合っていました。皆さんがキラキラしていたことが私もうれしくて、今後もつながりを大事にしながら、一緒に活動をしていければと思いました。
業務で触れない世界に触れる経験、企業文化として定着
認定NPO法人 サービスグラント 代表理事 嵯峨 生馬 氏
お忙しい中、時間を割き、気持ちも割いて、プロボノに関わっていただき、ありがとうございました。CPAOチームは答えのない問いに突き当たり、解決しきれなかったことを問題意識として持ち帰ることになったかもしれませんし、フェアトレード・ラベル・ジャパンチームは新しい制度設計に関わるという、通常の業務にはない経験をしました。それぞれのチームがプロボノを通じて、普段触れることがない世界に触れられたのではないでしょうか。プロボノ期間中には、多くのチームが何かしらの障害に突き当たりましたが、これもまた、共通言語がないところでコミュニケーションを図る訓練になったと思います。このプロボノ プログラムは仕事と違うようでありながら、パナソニックという企業のプログラムとして提供され、会社の文化として定着しているところに大きな価値を感じます。皆様もアンバサダーとして、語り部として、今回得られた気づきを同僚の方々にお伝えください。