Panasonic NPO/NGOサポート
プロボノ プログラム
2023年度プロジェクト成果報告会
貧困の解消や災害支援に取り組む5団体を従業員が支援
2024年2月7日、「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」の2023年度プロジェクト成果報告会をオンラインで開催しました。
パナソニックグループは従業員が仕事で培ったスキルや経験を活かし、チームでNPO/NGOの事業展開力強化を支援する「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」を2011年から展開してきました。これまでにのべ392名の従業員が参加し、66団体に70件の支援を行いました。2023年度は約半年間にわたって、5団体を28名の従業員が支援しました。
支援先はNPO/NGOの組織基盤強化を応援するサポートファンドで助成した団体や、パナソニックが企業市民活動の重点テーマとしている「貧困の解消」に貢献し得る団体、災害支援に取り組んでいる団体を中心に選定しました。
成果報告会には、2023年度プロジェクトのプロボノメンバーに加え、プロボノ参加を検討している従業員、プログラムの当初から運営を共にしている認定NPO法人サービスグラントの皆さんが参加しました。プロボノチームからの発表に続いて、他のチームメンバーとサービスグラントの担当から感想をいただきました。
●各プロジェクトの成果報告
他団体や行政との連携を深める「事業評価報告書」を作成
認定NPO法人 オリーブの家 プロボノチーム 田口 晋也さん
オリーブの家は岡山県を拠点に、DV・虐待・貧困などの困り事を抱える女性と親子の保護・支援活動をしています。他の団体や行政と連携する際に活用できる材料がほしいとの要望を受け、6名のメンバーで、団体の活動や社会的な成果を見える化する「事業評価」に取り組みました。2023年7月に岡山で団体の皆さんに話を聞き、同じような活動をしている団体や、サポートをしてくれている団体にもヒアリングを実施。海外の事例や国の調査データも加えて、12月に岡山で最終提案を行いました。「事業評価」は5項目から成り、DVを取り巻く環境、団体の活動内容と評価、関係者からの評価と課題、DVに対する海外での取り組みと続いて、最後に今後の活動のヒントとして、日本はDV問題に対してどうあるべきかを提案しました。団体の皆さんからは「視野を広げてもらい、DVの予防に力を入れていくべきだと気づくきっかけになった」との言葉をいただき、微力ながら活動をサポートできて良かったと感じています。今回の活動を通じて学ぶことが多く、これからも自分の力を社会貢献に活かしていきたいと思いました。
【感想】
ユニバーサル志縁センター チーム
中村 明日香さん
限られた時間の中で、ヒアリングや調査、現地での報告などをしっかり実施されているのが素晴らしいと感じました。普段の生活ではなかなか接点のない社会問題に、ボランティアという形で関わり、遠回りかもしれませんが、誰かの助けになるブロボノは、とても意義のある活動だと思います。
・伴走者
サービスグラント 宮坂 奈々さん
最初の段階で団体の皆さんと直接お会いして、思いを共有できたことが大きな推進力となって、プロジェクトを押し進めたのだと思います。プロボノは好循環を生むと言いますが、プロボノチームの皆さんの姿に団体の方が刺激を受け、気づきを得て、前を見据えて動き出すという、素晴らしい取り組みでした。
増えていく事業を整理し、「営業資料」で全体像を見せる
NPO法人 チームふくしま プロボノチーム 中谷 将也さん
チームふくしまは2011年の東日本大震災を機に、復興支援の団体としてNPO法人化。全国の人に育ててもらったひまわりの種を福島にまく「福島ひまわり里親プロジェクト」や見知らぬ誰かに恩送りをする「お互いさまの街ふくしま」など、複数の事業がそれぞれ活動していて、何をしている団体か簡潔に説明できないのが悩みで、5名のチームで営業資料を作成しました。2023年9月からオンラインで団体の方10名にヒアリングし、約20名にアンケートを実施。これをもとに営業資料では、それぞれの事業が立ち上がった経緯と理念、事業に参加する方法を紹介しました。さらに、事業がどのような広がりを見せているかマップで示し、参加者やボランティアがどんな思いで取り組んでいるか声を集め、ばらばらになっているホームページをリンク集としてまとめました。能登半島地震の被災地で復興支援をしている理事長さんからは「この資料のおかげで、どんな団体か説明でき、安心して受け入れてもらえた」との評価をいただきました。送った恩が循環していく活動であることを実感しました。
【感想】
オリーブの家 チーム
清本 訓央さん
この活動は奉仕の心で誰かが何かを始めて、そのよさをほかの誰かが受け取って広げていくという連鎖になっているところがよかったと思いますし、皆さんの活動も、その流れを支援するものになっていました。一人ひとりが誰かのために恩を送るポジティブな連鎖ができると、このような活動の加速度が上がっていくのではないかと感じました。
・伴走者
サービスグラント 堀 久仁子さん
理事長さんを始め、熱い思いの方々が集まった団体で、プロボノチームは少し圧倒されていましたが、理事長さんはパナソニックの皆さんの応援をすごく喜んで、「この経験を皆さんも次の人に伝えてください」と熱くプッシュしてくださいました。いろいろな刺激を受けながら進める復興支援のプロジェクトになったと思います。
寄付者や理解者を増やすために「団体管理業務」を効率化
認定NPO法人 兵庫子ども支援団体 プロボノチーム 古山 雄也さん
兵庫子ども支援団体は、子どもたちが夢をあきらめることのない社会を目指し、学習支援・居場所づくり・LINE相談、子ども食堂・子育て世帯への食料や物品の支援を行っています。スタッフは本業をもちながらの活動で団体管理業務を割り振れなくなり、私たち5名で寄付管理の効率化に取り組みました。2023年7月から寄付管理スタッフや寄付者、過去に寄付管理支援をしたプロボノチームにヒアリングし、業務フローを分析。団体の強みや弱みを可視化し、寄付者を増やす検討材料にしてもらいました。ツールとして、領収書や寄付の礼状の一括発行機能などが付いたGOENサービスを選定。システム導入の研修や説明会に同席して、6年分のデータ移行を現地で支援し、2024年1月に団体のポータルサイトを公開しました。支援者情報やイベント情報を一元管理できるようになり、各種帳票も出力可能に。「丁寧な支援で、安心して取り組めました」と感謝の言葉をいただきました。私たちも団体さんの活動の場を広げることができ、社会にも貢献できて、うれしく思っています。
【感想】
チームふくしま チーム
川村 健太さん
本職を活かしたプロフェッショナルな取り組みで、資料を見ても本当に整っていて、感心させられました。団体の資金を使ってのシステム導入ということで、大きな責任を伴ったのではないかと思いますが、それだけに、とても価値のあるプロジェクトで、団体さんの喜びが容易に想像できました。
・伴走者
サービスグラント 堀 久仁子さん
このチームは団体の活動場所を訪問し、オンラインをうまく活用して、団体さんに寄り添ってくださいました。団体の代表の方が学校にお勤めで帰宅時間が遅く、皆さんの時間調整も大変だったのではないでしょうか。団体がもっと信頼され、寄付が集まり、活動を継続していけるような仕組みを皆さんがつくってくださって、本当によかったと思います。
「食品在庫を一元管理できるアプリ」の開発で業務を改善
認定NPO法人 フードバンク北九州ライフアゲイン プロボノチーム 田中 寛子さん
フードバンク北九州ライフアゲインは、生まれ育った環境で十分な食事や教育を受けられない子どもをなくすため、フードバンク事業やファミリーサポート事業などを行っていますが、業務が属人化。食品取扱量の拡大に当たって、オフラインでの倉庫管理に限界を感じていました。私たち5名は2023年7月からヒアリングを行い、業務内容のマニュアル化を考えましたが、より本質的な解決を目指し、再度ヒアリングを実施。食品の入庫から出庫までの業務フローと課題点を整理し、入庫・出庫・在庫の一元管理ができるシステムの導入を提案しました。複数のサービスを調べ、NPO法人の特別価格制度があるKintoneをテスト導入し、入庫・出庫・在庫の管理ができる試作アプリを作成。担当者にトライアルいただき、要望に応えながら、12月にアプリが完成しました。一部のメンバーは引き続き支援する予定です。団体さんからは「長年の課題が解決されてうれしい。業務改善に向けて、使いこなしていきます」との言葉をいただき、私たちも熱い思いに心を打たれ、よい機会をいただきました。
【感想】
兵庫子ども支援団体 チーム
神園 昇吾さん
課題の洗い出しが成果や支援先の満足度につながると思うのですが、現在のフローを入念に分析して、成果につなげていて素晴らしいと思いました。もう少しフォローが必要で、大変な部分もあると思いますが、支援先の方々も意欲的に使いこなそうとされていて、継続的にうまく運用されることを願っています。
・伴走者
サービスグラント 田中 綾香さん
チームの皆さんには個々の得意なことを活かしながら、しっかりヒアリングを行い、最初よりぐっと深掘って、システムの導入にまで結び続けていただいて、本当に素敵なチームだと思いました。この取り組みが、システムの導入を検討している全国のフードバンクにも広がることを期待しています。
活動の他地域展開を見据えた「事業運営マニュアル」を整備
公益社団法人 ユニバーサル志縁センター プロボノチーム 朝井 豪士さん/寺本 英夫さん
困難を抱える子どもの支援を目的に、生活協同組合や労働組合、社会的企業などがネットワークを結んで社会課題の解決を目指す中間支援団体です。中でも「首都圏若者サポートネットワーク」は伴走支援型の助成制度で、他地域展開を進めていますが、業務の属人化がネックとなっていました。そこで私たち6名は2023年7月から事業運営マニュアルを整備しました。団体の職員さんやマニュアルを実際に使う想定団体へのヒアリングを実施。基金造成・助成・管理の業務フローを見直しながら年間スケジュールを立て、寄付者管理・領収書発行・助成金審査の手順書や管理に必要なツールをつくっていきました。担当者の頭の中だけにあったExcelの関数も解読して、パソコン操作が苦手な人にもわかるマニュアルに落とし込み、2024年1月に最終報告を行いました。団体さんからは「頭の中の情報が可視化され、整理されて、事業を展開していく助けとなりました」とのコメントをいただき、私たちも若者支援の活動を知るいい機会となり、Excelの関数は自分自身の学びにもなりました。
【感想】
フードバンク北九州ライフアゲイン チーム
岡田 貴光さん
全国で若者支援の活動をしている団体を支援する組織があることを初めて知りました。非常につくり込まれている成果物だと感じたので、展開先である3団体の皆さんにも、すぐに使っていただけて、喜ばれるのではないかと思います。
西崎 喜弘さん
私たちも当初は業務改善のマニュアルづくりを進めていましたが、アプリの開発へと方向転換したので、最後まできっちり団体に落とし込まれたことが一番の成果だと感じました。全国展開している中間支援の活動がますます知られて、活発化していくことを願っています。
・伴走者
サービスグラント 田中 綾香さん
最初は活動内容を理解するのも難しいところから、団体さんへのヒアリングを重ね、わからないことは何度も質問して、課題を解決しながら、マニュアル化していった姿勢には感銘を受けました。ユニバーサル志縁センターだけでなく、ケアリーバーを支援している団体の今後の助けにもなるような、運営基盤の強化につながるプロジェクトだったと思います。
●講評
組織基盤強化にプロボノを重ね、NPO/NGOを支援
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 企業市民活動推進部 部長 福田 里香
お忙しい中、時間をつくり、半年以上にわたってプロボノに取り組まれた皆さんに感謝を申し上げます。オリーブの家 チームは団体の要請に応えるだけでなく、新しい視点で海外の事例を紹介しました。チームふくしま チームは「恩送り」という新しい考え方を明確にし、一緒に共有しました。兵庫子ども支援団体 チームは寄付のシステムを導入するところまで支援し、フードバンク北九州ライフアゲイン チームはフローを図示して、課題を整理することから始めて、アプリの導入までを支援。その実行力には驚かされました。ユニバーサル志縁センター チームは、団体が一番必要としていながら苦手とするマニュアルを完成させました。社会課題は、NPO/NGOとも力を合わせていかないと解決できない状況にあります。その組織基盤強化を支援する「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」に、さらに重ねる活動として、今後も従業員の皆さんとプロボノを進めていきたいと思います。
企業にも社会課題解決が求められる今、高まる重要性
認定NPO法人 サービスグラント 代表理事 嵯峨 生馬 氏
1時間半にわたる充実した内容のご発表に聞き入りました。社会課題への理解を深める機会になったとの声が多く聞かれましたが、企業による社会課題解決が求められる昨今、プロボノの重要性はますます高まっています。新型コロナが5類に移行して初の年度となり、対面での会合を行うことで、団体の温度を肌で感じ、団体との一体感を醸成できたことが大きな力になったのではないかと感じました。さまざまなグループ会社の皆様がプロボノを通じて出会うことで、社内の横のつながりが随所に生まれ、コミュニケーションのきっかけをつくる効果もあったのではないでしょうか。本日ご紹介いただいた5件の事例は、パナソニックさんが取り組んできたNPOの組織基盤強化そのものだったと思います。サステナビリティ推進における従業員参加の観点からも、プロボノを経験された従業員の皆様が支援先の団体さんと一緒に、NPO向けの研修の講師などを担われるのも夢ではないように思いました。