事業拡大に向けた、食品の「入出庫・在庫管理アプリ」の作成で「認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン」を支援

パナソニックグループは、従業員が仕事で培ったスキルや経験を活かして、NPO/NGOの事業展開力を強化し、社会課題の解決を促進する「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」に2011年4月から取り組んできました。
今回は5人の従業員がチームを組んで、「認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン」を支援しました。プロボノチームは2023年7月から、団体関係者を対象に課題についてのヒアリングを実施し、他団体の活動運営状況を調査・分析。9月10日にはオンラインで中間提案を行い、ヒアリングから抽出した課題を共有し、業務改善の方向性を示しました。そして11月9日には、kintoneで作成した食品の入出庫・在庫管理ができる試作アプリを提案。12月27日に最終成果物を納品し、今後の運用方法を確認する最終提案を行いました。

限界が見えたオフラインでの倉庫管理
事業拡大目指し、マニュアルの作成を依頼

「認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(以下ライフアゲイン)」は北九州市を拠点に活動するNPOで、「フードバンク事業」や、子育て世帯を食料支援から包括的支援へとつなげる「ファミリーサポート事業」、子ども食堂や無料学習支援などの「地域子ども支援事業」を展開しています。これらの活動を通して、子どもたちの養育環境を安定させることを目的としています。

2019・20年には「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の助成を受けて、組織の運営体制を根本から見直しました。その結果、当初1カ所だった食料倉庫は4カ所にまで増え、取り扱う食品の量も2018年度の約80tから約136tまで拡大しました。

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フードバンク北九州ライフアゲイン
理事長 原田 昌樹さん

ちょうど2020年から始まったコロナ禍とも重なって、支援を必要とする世帯の数は増え続け、しだいに、オフラインでの倉庫管理に限界が見えてきました。

理事長の原田昌樹さんが、当時の状況を振り返ります。
「各人がエクセルを使って食品の入出庫管理をしていたのですが、入庫は入庫だけ、出庫は出庫だけとばらばらの状態で、双方がつながっておらず、しっかりとしたトレーサビリティができていませんでした。倉庫を直接見に行くしかないというのがみんなの共通理解でしたが、食品を別の倉庫に移してしまうと、どこに何があるかもわからなくなって、消費期限の近い食品から順に出していくことも難しくなっていました。そのため、寄贈品をどこに届けたのか、企業から問い合わせをいただいても、すぐには返答できないような状況でした」
それでも、生活支援が必要な子育て世帯や福祉施設などへの包括的な支援のためには、500tくらいまで食品の量を増やす必要がありました。そこで原田さんらはプロボノに応募し、食品衛生管理・トレーサビリティ管理業務に関する「活動運営マニュアル」の作成を依頼することにしました。

ヒアリングから課題を洗い出し、改善策を提案
効果を考え、マニュアルからアプリへと方針転換

プロボノチームは2023年7月から、4カ所の倉庫の管理方法をヒアリングし、課題を整理しました。その結果、管理部門の業務マニュアルがなく、業務内容が属人化していて、ボランティアにその都度、業務指示を出さなければならない状態であることがわかりました。倉庫の入出庫管理は2~3日おきにExcelに記入する形で、食品の引き取り希望があれば、受付が倉庫担当者に電話して在庫を確認。倉庫内で消費期限切れとなり、廃棄処分となってしまう食品もありました。過去に福岡県が管理システムを開発したこともありましたが、使いこなすことができず、結局お蔵入りになってしまいました。

ライフアゲインからは、「新規ボランティアが採用されても、誰でもすぐに業務ができるようなマニュアルをつくってほしい」との要望がありました。しかし、プロボノチームのプロジェクトマネージャーを務める岡林典雄さんによれば、プロボノチームは次のように考えました。
「課題を企業目線で見れば、現場の作業方法を変えるとか、手順書をつくることで倉庫の管理方法を改善しようと考えることもできましたが、この半年という限られた期間内で成果を出すなら、一つの課題に集中して対策を立てたほうがいいのではないかと思いました。今の属人的な手作業をマニュアルで強制化するよりも、アプリケーションなどのツールを導入し標準化する方が効果は出やすいのではないかと考え、入出庫・在庫管理ができるアプリを提案することになりました。また、Excelなど汎用性が高いツールも作成者の癖が出やすいため候補より除外しました。

プロボノチームは現状業務をフローで図示し、課題点を可視化しました。この業務を改善する方向性として、「食品の寄贈を受けてから子育て世帯などへ受け渡すまでのトレーサビリティ管理システム」の導入を提案。NPO法人向けの特別価格が適用されるkintoneを1カ月無料テスト導入し、アプリを試作しました。
アプリは、寄贈された食品を管理する「食品マスタ」、倉庫を管理する「倉庫マスタ」、寄贈者の情報を管理する「寄贈者マスタ」、受取先の情報を管理する「受取先マスタ」、入庫情報を管理する「入庫管理アプリ」、食品の受付から受取までの情報を管理する「出庫管理アプリ」、在庫情報を管理する「在庫管理アプリ」で構成されています。これを倉庫担当者に実際に使ってもらい、システムの正式導入が可能であることを確認しました。
さらに、その際に出た要望を一つずつ丁寧に拾い上げてアプリを修正し、12月27日の最終提案で、具体的な運用の仕方を説明しました。このアプリを活用した業務運用が定着し、トレーサビリティ管理ができるようになるまでは、一部のメンバーが引き続き支援していく予定です。

最終提案を受けての感想

原田 昌樹さん

当初予定していたマニュアルづくりからアプリ制作へと大きく変更しましたが、正直言うと、ここまでのものを期待していませんでした。今までに農水省や福岡県がつくり、私たちがつくろうとしても、なかなかできないシステムだったので、かなりの時間と費用が必要だろうと思っていました。今回は、そこへ行く道筋ができればいいくらいの気持ちだったので、感謝しかありません。クラウドなら、どこにいても、スマホでもタブレットでも使えるし、大きな画面にすれば目の悪い年配の方も使えます。全国のフードバンクが同じ課題で悩んでいるので、このアプリを全国のフードバンクが「これはいい」と思うものにしていけたら、みんなに喜ばれると思います。

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フードバンク北九州ライフアゲイン
理事長 原田 昌樹さん

陶山 惠子さん

kintoneで管理しましょうという話になって、自分たちでつくらなければいけないのかと思っていたら、皆さんが専門力を発揮して、現場のニーズを反映し、私たちの団体に合うものをつくってくださった。皆さんがどれだけの時間をかけてくださったかと思うと、感謝するばかりです。私たちは使い方を教えていただくという受け身の立場になりましたが、皆さんへの恩返しができるように、これからは私たちがアプリを使って、「こういう現場に変わってきました」と、皆さんにいい報告ができるようにしたいと思っています。

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フードバンク北九州ライフアゲイン
理事・事務局長 陶山 惠子さん

木村 和利さん

このアプリをしっかり使えば、間違いなく作業効率も上がるでしょうし、正確性も増すでしょうし、当初のトレーサビリティの問題も解決できると思います。あとは、このアプリをいかに定着させるかが問題で、そこを考えると少し道のりが長い気もしますが、みんなでしっかり使って、組織の中にしっかり定着させたい。そこが最終段階だと思っているので、皆さんにつくっていただいたものを活かしきれるように進めていきたいと思います。

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ライフアゲインが運営する
「つきだテラスTOMONY」
施設長 木村 和利さん

プロボノチームの感想

  • 岡林 典雄さん
    現場の改善は仕事でも難しくて、現場・現物・現実を見ないとできないのですが、今回はオンラインで話を聞きながら、何をすればいいのか模索しました。ツールを導入することを提案し、幸いにも、ライフアゲインの皆さんが「やってみます」と前向きに受け入れてくださったので、安心しました。今後は、もしお役に立つのであれば、全国のフードバンクに広まるようなツールを、ライフアゲインの皆さんとつくれたらいいなと思っています。
  • 田中 寛子さん
    NPOの皆さんと関わるのは初めてで、いろいろな寄付団体から届いた食料が、少しでも多くの家庭に届くようにと、ボランティアの方が一袋ずつパックされているところを実際に見ることができ、素晴らしい活動だと思いました。つくり込みの時点で一緒に考えたからこそ、自分たちのものとして使っていただけるツールができたのではないかと思います。今回のシステムをしっかり定着させて、活動が北九州市全体に広がることを願っています。
  • 岡田 貴光さん
    こんなに長くボランティアとして関わらせていただいて、感謝しています。先日もスーパーに行ったら、フードドライブを実施していて、自分がそういうことに関心をもてるようになったことを実感しました。フードバンクさんの横のつながりで、いろいろなことを見せていただき、また教えていただいて、勉強になりました。メンバーで課題を出し合い、何が一番効くのかを考え、それを形にできたことが成果につながったのではないかと思っています。
  • 石原 俊英さん
    当初は課題がありすぎて、何が本質的な課題なのか絞り込めませんでしたが、現場の声を聞く中で、全体として何が課題なのか大枠が見えてきて、ツールにたどり着きました。僕らが皆さんの話を聞いて方向性を見いだし、岡林さんがプロットをつくってくれました。そういう突破力が、このチームにはありました。僕らもライフアゲインの皆さんも共に成長することができました。プロボノで得た経験を今後の仕事や人生に活かしていきたいと思います。
  • 西崎 喜弘さん
    当初は課題がわかりにくくて、会社でやっていることとも違うし、考える姿勢を変えなければいけないと痛感しました。話を重ねていくうちに、ライフアゲインさんのやってほしいことが熱意として伝わってきて、課題に向かって一緒に取り組んでいる実感を得ることができました。これまでは会社だけのつき合いしかありませんでしたが、今回、いろいろな活動をされている方の熱意や活動の重要性を知ることができて、人生の糧になりました。
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最終提案を終えたプロボノメンバーとフードバンク北九州ライフアゲインの皆様