Barcelona 1992

オリンピック大会の舞台裏

オリンピック大会の舞台裏 オリンピックに初めて導入された
パナソニックのデジタル映像技術。

写真:バルセロナオリンピック開会式セレモニーで、競技場中央のフィールド部分全体を覆い尽くした五輪マークの巨大フラッグ

1989年、3年後に開催のバルセロナ大会で導入される公式放送機器のコンペに参加しようとしていたパナソニックは、放送機器においてもっとも重要視される「実績」を最大限に積むことのできる千載一遇のチャンスに、思い切った提案をすることに決めた。「デジタルの高画質」を前面に押し出した、開発されたばかりの「D-3デジタルVTR」システムの提案である。システムの大幅な入れ替えをともなうデジタル化への移行はたやすいことではなく、デジタルシステムはまだ試験的に使われているような状況だった。しかし、デジタル技術の分野でノウハウを持つパナソニックは、オリンピックの国際映像制作こそ優位性をアピールする場にふさわしいと考えたのだ。

史上初のデジタルによる国際映像制作の実現

画質の美しさ、使い勝手の良さ、何より将来性を見込んだパナソニックの提案に対し、出された答えは「YES」。オリンピックの国際映像制作が見据える未来とパナソニックのビジョンは一致したのだ。しかし、現場では不慣れなシステムに対し、抵抗感もあった。そこでパナソニックは、総勢100名を超える24時間3交代の完全メンテナンス体制で対応にあたった。

写真:バルセロナオリンピック会場に設置されたD-3デジタルカメラレコーダー

世界中の放送局に賞賛された画質

オリンピックの放送機器は、競技中は収録や編集に、また競技終了後も番組の制作や世界の国への配信にと、24時間休みなしの過酷な使われ方をする。そんな中、パナソニックのスタッフによる苦労の甲斐もあって、大きなトラブルもなく稼働するデジタルシステムの評判は日増しに上がっていった。

写真:バルセロナオリンピック会場で放送カメラマンが陸上競技の選手をデジタルカメラレコーダーで撮影している様子

作業の際の設定パターンを記憶できる点や、作動状態を随時モニターできる点など、これまでのアナログにはなかった機能が、各国放送局のスタッフに「ユーザーフレンドリー」だと高く評価されたのだ。そして、彼らのだれもが口をそろえて絶賛したのが、デジタル画像の美しさだった。バルセロナ大会の映像は「これまでのオリンピックと比べ、段違いに美しい」と評判になった。現地スペインでもテレビで競技を観た多くの視聴者から、映像の美しさについて問い合わせが殺到した。それは、スペインの有力紙『ラ・バングアルディア』がパナソニックのデジタル放送システムを取材し、8月3日付けの紙上で大きく紹介したほどの反響だった。

写真:バルセロナオリンピックの開会式が行われたモンジュイック・オリンピックスタジアムの時計台と聖火台全景