Meet the IOC Young Leaders! Meet the IOC Young Leaders!

IOCヤング・リーダーズ・プログラムは、それぞれのコミュニティで実施されている草の根スポーツプロジェクトへのコーチング、資金援助、メンターシップのサポートを通じて、影響力のある若者たちの育成・支援をしています。彼らのプロジェクトの様子を覗いてみましょう!

Vol.11 Parallel Play Vol.11 Parallel Play

パーニズ・ユーセフィ・モジュタヘディ(スウェーデン)

バドミントンを誰もが身近に楽しめるスポーツに

私は、「Parallel Play」と「Better Future with Fyrisfjädern(バドミントンクラブ)」を創設し、CEOを務めています。また、起業家としても活動しており、パリ・グローバル・スポーツ・ウィーク2020や欧州委員会主催の子どもの人権を考えるフォーラムなどのイベントに参加。「スポーツを通じた多様性の受容」というビジョンの共有によって、世界に変化をもたらすことに情熱を傾けています。ユヌス・スポーツハブの活動では、ソーシャル・ビジネス・チャンピオンに選ばれた実績があり、現在はヨーロッパ地域のリーダーとして、「COVID-19スポーツ・レスポンス」という取り組みにも参画しています。スポーツ指導者としては、バドミントンのコーチ、世界バトミントン連盟の国際的指導者として10年の経験を重ね、現在は母国のパラアスリートへの貢献を目指して、工学と義肢・装具設計の学位を取得する勉強に励んでいます。

Parallel Playとは

2019年8月からスタートしたスウェーデンにおける全国規模のパラバドミントンプロジェクトが、「Parallel Play」です。その目標は、障がい者の方々にもバドミントンを身近に楽しんでいただくことで、社会全体に一体感を醸成すること。あらゆる人々にバトミントンというスポーツを身近に感じてもらうため、全国のバドミントンクラブ内に知的・身体障がいを持つ人々のためのトレーニンググループの立ち上げを推進。競技を楽しみながら、個々の能力と可能性を最大限に発揮してもらえるように取り組んでいます。さらに長期的目標としては、バドミントンスウェーデンとパラスポーツスウェーデンの支援の下、パラリンピックとスペシャルオリンピックスに出場できる国家代表チームの育成があります。これにより、未来のパラアスリートへロールモデルを提示すると同時に、社会的一体感の真の意味を世界に示していこうと考えています。すべてのプロジェクトは、国連が提唱している「持続可能な開発のための国際目標(SDGs)」に沿って動いており、SDGsで定められた17の目標から、「目標3. すべての人に健康と福祉を」、「目標5. ジェンダー平等を実現しよう」、「目標16. 平和と公正を全ての人に」、「目標17. パートナーシップで目標を達成しよう」の4つに注力。バトミントン以外の他のスポーツにおいても同様に、障がいのある人々に広く門戸が開かれるようになることを目指しています。

Parallel Playとは

具体的な活動について

コロナウイルスの大流行とほぼ同時期に立ち上がったプロジェクトにもかかわらず、「Parallel Play」はスウェーデンに大きな変化をもたらすことができました。立ち上げ以来、参加いただいた障がい者は630名、全国5つのバドミントンクラブで彼らを対象としたトレーニンググループの活動もスタート。また、バドミントンスウェーデンおよびスウェーデンパラスポーツ連盟との密接な協力で、障がい者に向けたスポーツ紹介企画「Start Your Impossible Camps」で、バドミントンを取り上げてもらうこともできました。その他の主な活動成果は以下の通りです。

  • ヘルシンキで開催された国際パラバドミントン大会に、初めてスウェーデン代表チームとして5名の選手が参加。
    4つのメダルを獲得。
  • 2020年5月、バドミントンクラブであるBMK Wätterstadの選手権で、初の試みとしてパラアスリートが招待され、トップクラスの選手と熱戦を繰り広げました。
  • わずか1年の活動で、スウェーデンのバドミントン競技において、社会的一体感に関する認識を大きく変革した「Parallel Play」。
    そのスローガン『自分に何が欠けているか、それは問題じゃない』は、それぞれが持つ障がいにかかわらず誰もがバトミントンを楽しめるというメッセージとして広く認知されています。
  • 「Parallel Play」の創設者としてIOCヤング リーダーズの一員に選ばれ、プロジェクトへの支援を受けたことは、自分自身、そして自らの活動に大きな自信を持つことにつながりました。その結果、より創造的にプロジェクトを発展させること、より自信を持って将来の計画を立てることができるようになったのです。
具体的な活動について
具体的な活動について

素晴らしい1年の締めくくりとして、スウェーデンにおける権威あるスポーツの祭典「スウェディッシュスポーツ ガラ2021」のチェンジメーカー・オブ・ザ・イヤーにもノミネートされました。残念ながら受賞には至りませんでしたが、この評価をいただいたことで、プロジェクトとその目的を強く信じ、今後の更なる成功と発展に向け、決意を新たに歩んでいきたいと思っています。

今後の展望

「Parallel Play」のさらなる成功と自立を視野に、次の4年間のIOCヤングリーダーズプログラムに応募させていただきました。万一このプログラムに選ばれなかった際にも、本活動の持続可能性・独立性を維持できるように別プランも用意しています。それは、プロジェクトに協力的なバドミントンクラブとパラスポーツ連盟による補助金助成事業で、対象に採択されれば、様々なイベント活動費用をカバーしてもらうことが可能になります。「Parallel Play」の活動の詳細は、こちらをご覧ください。

今後の展望

「Parallel Play」プロジェクトで学んだこと、それは、強い志を持つ一人さえいれば変革を起こすことはできる、でもそれを実際に続けていくのは一人ではできないということです。たった1年という短期間でプロジェクトがこれほど進捗するのは想定外でしたが、プレイする楽しさを含め、このスポーツにおける多様性が求められていることを確信できました。この1年、試行錯誤の末にプロジェクトを成功に導くための正しい戦略を見つけることもできました。それは、参画対象者がこちらを見つけてくれるのを待つのではなく、こちらから自発的に彼らを見つけにいく、という戦略です。また、IOCヤング・リーダーズ・プログラムの国際的なネットワークの価値も学ぶことができました。それぞれのプロジェクトの中で発生した問題に悩んでいた時、互いに支え合い、アイデアを出し合い、解決策を導き出すことができた点において、各国ヤングリーダーズプログラムの仲間たちに心よりの感謝を申し上げます。

真の成功への鍵であり、真の違いを生み、すべての競技において明確な社会的一体感を創出することができるもの、それが協力関係です。私たちのゴールは、10年後にスウェーデンのすべての都市で私たちが目指す社会的一体感を実現させること。来るべきその日を心待ちにしています。

2021年の末までに知的・身体障がいを持つグループのためのトレーニングセンターを追加で5カ所開設する計画に加え、国内における6つのキャンプと3つの競技大会のプランが進行中で、「Parallel Play」のこれからは期待に輝いています。また、5~10年後を目処に、次のパラリンピックに向けたスウェーデン代表チームを送り出そうと考えています。

私たちの活動を可能にしてくれたIOC、パナソニック、ユヌス・スポーツハブの皆様に感謝を表すとともに、皆様のご支援と、私たちが目指すビジョンに寄せていただいている信頼とに感謝しています。