Salt Lake 2002

オリンピック大会の舞台裏

オリンピック大会の舞台裏 大会ごとにパフォーマンスを向上し続ける
「大型映像表示装置 アストロビジョン」

写真:ソルトレイク冬季オリンピック開会式セレモニーで、スタジアム中央に描かれたソルトレイク冬季オリンピックロゴと五輪マーク

パナソニックは、ソルトレイク冬季大会で全16画面、過去最大の644m2にもおよぶ画面のアストロビジョンを多くの会場に設置した。すべて最新の『LED方式』だ。1984年アメリカ、ロサンゼルス大会のメインスタジアムに、パナソニックがアストロビジョンを納入し、大型映像システムの幕を開けてから18年。当時の主流であった『白熱灯方式』は、1996年のアトランタ大会で『液晶方式』を経て、『放電管方式』へと進化。その都度、画質の飛躍的な向上と大幅なコストダウンが成されてきた。

画面障害0へ、進化したLED方式

長野冬季大会の一部でも導入された『LED方式』。しかし、そこにはクリアすべき問題もあった。画面の“色ムラ”である。その後、パナソニックは改良を重ね、ソルトレイク冬季大会で全画面に使用された最新のLEDでは、つなぎ目が分からないくらい画面が均一化されて色ムラも見えなくなっていた。LED方式のメリットは、軽く、長寿命であること。移動や組み替えが容易で、全体的な運営コストを大幅に下げることができる。使い勝手が良く、環境にもやさしい。しかし、ソルトレイクのような極寒の環境下において、落とし穴があった。

写真:ソルトレイク冬季オリンピック会場での極寒の環境下で設置された大型映像表示装置アストロビジョンの画面表示を確認するスタッフ

「気温マイナス10℃から20℃という屋外では、画面に付着した雪が夜間に凍結して、LED発光体を破壊してしまう可能性が指摘されました」とアストロビジョン担当の後藤喜行は振り返る。パナソニックにとっても、ソルトレイク冬季大会は未体験の寒さ。発光体を凍結から守るため、アストロビジョンを24時間通電することでわずかな熱を保ち、こびりついた雪も徐々に溶かしていく作戦がとられた。常にウオーミングアップを続けながら、アストロビジョンは競技の開始を待ち続けた。今大会、期間中のアストロの画面障害はゼロ。かつてないほど高い信頼を得ることに成功した。

写真:大型映像表示装置アストロビジョンの機器の調整作業をするスタッフ

RAMSA—極寒の環境でも稼働させるアイデア

全15会場、トータルで35の音響システムを納入したRAMSAの場合も、ソルトレイクの“寒さ”への対策に多くの時間を費やした。パナソニックの竹内松巳RAMSA音響チームリーダーは語る。「いくつもの巨大スピーカーを使用するシステムでは、アストロビジョンと同じように、24時間通電することによって低い気温でもすぐに稼働できるようにしました。“ザー”というかすかなノイズをずっと流してラインをつないでおくんです」
競技と、映像と音。ソルトレイク冬季大会は、この3要素が、より一体化した大会として、人々の記憶に残った。

写真:極寒の環境下で音響システムRAMSAの機材の調整作業をするスタッフ