オンラインイベント「ソウゾウするちから ~東京2020オープニングイベント」開催レポート

オンラインイベント「ソウゾウするちから ~東京2020オープニングイベント」

パナソニックセンター東京(以下、PC東京)では、社内外からさまざまな分野のゲストを招き、オンライン上で誰でも参加可能なウェビナー形式のイベント「ソウゾウするちから」シリーズを、継続して開催しています。2021年7月、復興や平和の象徴として開催される東京2020オリンピックがついに開幕。開会式の翌日である2021年7月24日(土曜日)にオープニングイベントを開催し、これまで実施してきた文化・教育プログラムの総括として、中高生の皆さんに活動を発表していただきました。会場には、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムデザイナーである野老朝雄さん、アートやコマーシャルの領域で様々な作品を手掛けるパノラマティクスの齋藤精一さんをお迎えし、対談のほか、中高生の皆さんの発表に対してもご意見を伺いました。

■好奇心を追求して、つくり出す未来

写真左:齋藤精一さん、写真右:野老朝雄さん

初めに、野老朝雄さん、齋藤精一さんの対談が行われました。今、街中の至る所で見かけるオリンピック・パラリンピックのエンブレム。野老さんによると、このエンブレムは45個の四角形を組み合わせてできており、それらの位置を変えることで何百億通りのデザインにもなるのだそう。齋藤さんは「興味関心を持って生まれたソウゾウを、深く掘っていった賜物」と話します。

写真:エンブレム積み木

話題は前日に行われた開会式の話にも。ドローンで作られた球体に驚いた方は多かったのではないでしょうか?野老さんは「映像のプロや、3Dプリンターのプロなど、様々な方のコラボレーションで実現しました。できた時は感動しましたね」と語ります。齋藤さんは「これからの時代、世の中の一歩先を見たいという好奇心が大事。この球体には、それがいっぱい詰まっている気がします」と感想を話しました。また、齋藤さんは、こういったコラボレーションを行う際に大事なのは「分からない」と言える勇気だと言います。そうすることで、一緒に考えようという人が出てきて、年齢に関わらず様々な人との共創が生まれると話していました。
最後に野老さんから若い世代に向けて「今起きていることをよく見ておいてください。面白いことも、大変なことも。僕らも頑張り続けますので、皆さん未来をよろしくお願いします。」とメッセージを送りました。

■若年層の立場から見る復興、そして東京2020

次に、これまでのイベントに参加いただいた若年層を代表し3つの団体の生徒の皆さんから、自分達の活動やイベントを通して学んだことを発表していただきました。

写真:富士高校茶道部の皆さん
東京都立富士高等学校 茶道部の皆さん

富士高等学校 茶道部の皆さんは、東京2020オリンピック・パラリンピックで世界中から来る方々にお茶を振舞う予定でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により中止に。オリンピックのために用意していた茶碗は、東京を代表する陶芸家、長谷川剛さんに特別にあつらえてもらったものだそうです。今回のイベントではこの茶碗を使ってお茶をたて、齋藤さんと野老さんに振舞ってくれました。高校生の文化活動が大きく制限され、茶道イベントは全て中止となり、人前でお点前を披露するのは実に1年7カ月ぶりだそう。お茶を飲んだ齋藤さんは「今回できなかったもどかしさを是非持ち続け、これからも文化を発信してほしい」とエールを送りました。

写真:江東区立有明西学園の皆さん
江東区立有明西学園の皆さん

有明西学園の生徒さんは、3年前のイベントで福島県飯舘村の子ども達との交流を行い、お互いの学校で作ったモニュメントを交換し合いました。当時、飯舘村の子ども達が「私達は、もうかわいそうではありません。私達がもっといい未来をつくるのだから」と話していたことが、印象に残っていたそうです。有明西学園の皆さんは、「飯舘村のみんなから元気をもらいました」「テレビやネットの情報だけではなく、直接話して得る情報も大事だと知りました」と発表していました。また、ツナグミライプロジェクトを通して出会ったオリンピアンの方から話を聞き「オリンピックは色んな国の人が戦うスポーツイベントだと思っていましたが、競い合うだけではなく、世界がつながるイベントだと知りました」という発表もありました。

写真:福島ダンススクールの皆さん
エクスプレションDSの皆さん

福島県のダンススクール エクスプレションDSの皆さんは、2011年の東日本大震災の発生から間もなく、避難所でストレッチやダンスで交流をする活動を始めました。その中には家を失ったメンバーもいましたが、助ける側に立ち、笑顔と心をつないできたといいます。東日本大震災以降、西日本豪雨災害や令和元年東日本台風の避難所でも活動を続けてきた皆さん。この日は、豊間の復興住宅に住む住民の方々と、盆踊りを披露しました。発表者の曾田もえさんからは「震災から10年が経ちましたが、この数字は区切りではなく経過です。これからも活動を続けていきます」と力強い決意を話してくれました。質疑応答では、有明西学園からエクスプレションDSの皆さんへ「被災地で踊る時はどんな気持ちでしょうか」という質問がありました。これに対し「私達はお金やモノの支援をすることはできません。しかし、気持ちの支援、心の復興を思って接しています」という言葉を送りました。

■プログラムが教えてくれたこと

最後に、オリンピック・パラリンピック公認プログラムに参加した学生さんから、感想や今後の決意をお話いただきました。

曾田もえさん

写真:曾田もえさん

私は小学生の頃からプログラムに参加させていただき、たくさんの学ぶ機会をいただきました。このプログラムで出会う大人の方が、人やモノに対してのソウゾウに真剣にアプローチする姿を見て、大人の仕事って楽しそうだな!と素直に思いました。プログラムでは自分達だけでは実現が難しい貴重な機会をたくさん与えてくださいました。私達のために努力をしてくださった皆さん、本当にありがとうございました。この経験をただの思い出にしないように、この思いを力に変えて前進していきたいと思います!

大野祐介さん

写真:大野祐介さん

5年前、富士高等学校茶道部に所属していた私は、「文化の力」プログラムに参加し、おもてなしや伝統文化を学びました。現在は東北の大学に進学し、被災地に行く機会もありました。文化施設があるのに人がいない様子を目の当たりにし、文化に力はないのではと思うこともありました。一方で10年前の傷痕があっても強く楽しく暮らしている人々に出会い、文化は「人の力」でもあると感じています。今後も、パナソニックさんのような企業と鋭い感性を持った中高生が色々な意見を交わし、発信する機会があれば、文化が力を持ち続けるのではないかと感じています。

金賀茉美さん

写真:金賀茉美さん

私は未来言語のプログラムに参加しました。オリンピアン、パラリンピアンの皆さんと一緒に、見えない、聞こえない、話せない状態でのコミュニケーション方法を考えました。このプログラムを通じ、相手の立場に立つことや、自分に何ができるかを考えるきっかけになりました。私はダンスを学んでいますが、ダンスも感情を伝えることができる、未来言語の1つだと思います。今後も、このような表現を研究し、発信していきたいです。

藤中希美さん

写真:藤中希美さん

2年前、LGBTQを題材にした映画『カランコエの花』の上映会とワークショップに参加しました。ゲストのリコさんが「LGBTQはラベルのようなもの」と話していたのが印象に残っています。好きな食べ物、趣味と同じように、LGBTQもその人を表すラベルの一つに過ぎません。この言葉に出会い、世界の見方が大きく変わりました。今、大学に進学し、様々な人が集まる場所に身を置いています。これからも人と違うことは当たり前という考えを軸に、人と関わっていきたいと思います。

中田瑞歩さん

写真:中田瑞歩さん

私は「東京2020と食」というプログラムに参加し、ベジタリアン、ビーガンについて学びました。世界中から多様な食習慣の方が集まるオリンピックで、私達はどのようにおもてなしすべきか、参加者達と考えを深めました。このプログラムを通じ、日本は他の国々と比べてベジタリアンやビーガンの対応している店が少ないことも知りました。今後も、食の多様性を考え、十人十色である多様な食を理解し、認め合い、自分らしい食のあり方について考えていきたいと思います。