『ソウゾウするちから~スポーツがくれたもの~』イベントレポート

『ソウゾウするちから~スポーツがくれたもの~』イベントレポート

2021年10月9日(土曜日)、パナソニックセンター東京は、パナソニックのバレーボールチーム、パナソニックパンサーズ所属の清水邦広選手と、今年8月に現役を引退された元同チーム所属の福澤達哉さんをゲストにお招きし、「スポーツがくれたもの」をテーマにしたトークセッションを行いました。

写真:トークセッションの様子

同じ年齢のお二人は、高校、大学と別々の学校でバレーボールに取り組む中で、お互いをライバルとして意識してきました。一方でバレーボール日本代表、そして2009年からは同じクラブチームに所属し仲間として長年切磋琢磨し合ってきました。そんなお二人からのお話を通じて見えてきた、それぞれの「スポーツがくれたもの」とは、“かけがえのない仲間”と“挑戦する心”でした。

【セッション1:バレーボールを始めたきっかけ】

清水選手はお母様の影響を受けてバレーボールを始めました。小学生の頃お母様のママさんバレーの練習について行くうちに、「お母さんみたいなエースになりたい」と心を動かされます。福澤さんは2歳上のお兄様がバレーボールを始めたところについて行ったことがきっかけでした。

誰かについて行ってバレーボールを始めたという共通点があるお二人。清水選手は、小学生の頃は「スポーツ選手になりたい」という夢を持ち、中学生の時に観に行ったバレーボールのVリーグの試合でジルソン選手を見て「うわーすごいな!こんな選手になりたい」と強く思ったとのこと。福澤さんは、「当初はバレーボール選手、アスリートになるという気持ちはなかった。どちらかと言うとバレーボールが楽しくて、アンダーパスができるようになりたい、スパイクを打てるようになりたいという目の前の目標を追い求めていました」と語りました。

【セッション2:お二人のライバル関係について】

続いてのセッションは、清水選手と福澤さんのライバル関係について。それぞれがお互いのことを意識し始めたのは中学3年生の時でした。JOC選抜大会で京都選抜の福澤さんを見て「すごい選手だなと思った」と清水選手。福澤さんも「福井にすごい選手がいると聞いていた」と当時を振り返りました。高校に入ると、公式戦でお互いの学校同士が対戦する機会が増え、より意識しあうように。清水選手は、「(福澤さんが)高校3年生の時にすごく強くなっていて、なんでこんなに伸びているの?」「福澤には負けたくない」とライバル心が芽生え始めたと。一方で福澤さんは、体格に恵まれてパワーを持つ清水選手にボールが集まればチームとして厳しくなるため、「清水をどう抑えるかをチームで話していた」と当時の白熱した試合を振り返りながら語りました。

写真:左・清水選手、右・福澤さん

大学に進学すると福澤さんは中央大学で1年生からレギュラーに。一方で清水選手は東海大学に入学するもレギュラーになることができませんでした。「このままではダメだ」と感じた清水選手はウイークポイントであった足腰を鍛えるべく、福澤さんを越すまでは必ず1日5km走ることを決めて走り続けました。その結果、レギュラーになって2年生の時に中央大学に勝つことができ、「今までやってきたことが間違いじゃなかった」と自分の成長を感じることができたそうです。

それぞれ別々の高校、大学でバレーボールに取り組む一方で、高校選抜や北京2008オリンピック日本代表などを通して、お二人が一緒のチームでプレーする機会も増えていきました。そして、ライバルとは言え、お互いの存在がモチベーションにもなっていきます。福澤さんは、「同じ年齢で、ずっと同じ道を歩んできている。身近に同じ志を持って、同じように上を目指しながらやっている選手がいるというのは僕にとってすごく励みになっていました」と語りました。

【セッション3:ライバルからチームメイトへ】

高校、大学時代を経て、お二人は2009年にパナソニックに入団します。お互いがチームメイトになるとわかった時、福澤さんは「ライバル心が強い清水から一緒にやりたくないオーラを感じていたので、パナソニックに決まったと聞いた時は驚きだった」と当時を振り返りました。清水選手は「ライバルとして戦ってきたが、北京2008オリンピックでは仲間として戦った。同世代で一緒に頑張りたいという思いが芽生えて、パナソニックも1つの選択肢になった」と話し、これに対し福澤さんは「この裏話は初めて聞きました」と驚いていました。

写真:福澤さん

パナソニック入団以前から代表合宿を通して一緒に過ごす時間が多かったお二人。清水選手によると、北京2008オリンピックの練習が非常に厳しく、それを福澤さんと共に乗り越えたからこそ、より強い絆になり今のお二人の関係が生まれたそうです。そして入団後はお二人の関係が「ライバル」から「最大の仲間」に変わったとのこと。清水選手は「一緒にパナソニックとして試合をする時は、福澤もっと頑張ってくれ、福澤が決めたから俺も決めなきゃというように、支え合っていく仲間になりました」と語りました。

また、お互いをよく知るお二人にそれぞれの尊敬している点をお伺いしたところ、清水選手は、福澤さんのコミュニケーション能力の高さを挙げました。一方福澤さんは、練習やトレーニングに対して一切手を抜かない清水選手のバレーボールに対する姿勢を挙げました。「清水は大怪我をしても以前よりもパフォーマンスを上げて帰ってくる。その姿を見て、清水がやるから俺もやると引っ張られた」と福澤さんは述べます。

【セッション4:スポーツがくれたもの/今後の夢・目標について】

最後のセッションはスポーツがくれたもの/今後の夢・目標について。清水選手は「スポーツがくれたもの」としてバレーボールを通じて得た“かけがえのない仲間”を挙げました。また福澤さんも清水選手のような一緒に夢を追いかけてくれる仲間に出会えたことは大きな財産とし、かつ「スポーツをやることによって“挑戦する心”をすごく与えてもらえた」と語りました。オリンピックという目標や、日本代表を強くするという志が芽生え、「挑戦しないと自分は上に行けない」と強く思うようになります。だからこそ現役中に海外のリーグで挑戦したいという気持ちも生まれたそうです。

またコロナ禍という難しい時代の中、今年は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることで人々に感動や勇気を与え、多くの人が、“スポーツが持つチカラ”を実感されたのではないでしょうか。清水選手は実際に東京2020オリンピックで日本代表として戦い、「(スポーツで)一生懸命頑張っている姿を見ると勇気が湧いてくる。コロナ禍でストレスがあるけれど、スポーツで少しずつ明るくなる、勇気づけてくれるというのが“スポーツのチカラ”だと思います。東京2020オリンピックではそれをすごく感じました」と述べました。

そして福澤さんは今年8月に現役を引退され、現在はパナソニックの会社員として働き始めたところです。福澤さんは「バレーボールでできることはすべてやり切った。バレーボールのゴールは自分の中でここだと言うのが見えたからこそ、次は新たなフィールドで挑戦したい」と今後の抱負を述べました。まずは自分に与えられた目の前のことに一生懸命取り組み、そしてこの先どのようなことができるのかという期待感をお持ちです。

最後にお二人の今後の夢についてお伺いしました。福澤さんは「トップアスリートとしてやってきた経験、感性を一つの意見としてパナソニックに還元していきたい」と話し、スポーツに携わる仕事を実現させたいとのこと。清水選手は「どこまでバレーボールを続けられるか、そしてどこまでトップのパフォーマンスを維持できるかが目標であり夢です」と述べました。

チャットに寄せられた質問

チャットに寄せられた質問

その後お二人には、視聴者からチャットに寄せられた質問にお答えいただきました。

質問:お互いがライバルで良かったなと思った瞬間はありますか。またどんな時ですか。

清水:同世代に福澤がいたからこそ僕は福澤をライバル視していたと思います。学生時代に福澤に勝てなかったのが逆に良かったと思います。

福澤:10年以上同じフィールドで同じ志を持って歩み続ける存在がすぐそばにいたのは僕にとってすごく大きかったです。辛い時も、清水とこれを一緒にやりたいからと思えたから乗り越えることができたと思います。

質問:新しい環境に踏み出す時に大切にしていることはありますか。

福澤:自分がワクワクしないと一歩踏み出せない。やらないといけないではなく、何かをしたいという気持ちで取り組むと困難に立ち向かった時でもポジティブな方向で取り組むようになります。ターニングポイントでは自分が本当にやりたいことを見極めるようにしています。

清水:自分が相談できる友達や仲間がそばにいると環境を乗り越えていけると思います。新しいことに取り組むのは不安ですが、周りの意見を聞いて、自分で選択肢を選ぶようにしています。

質問:これまでの競技生活の中でどのような挫折や困難がありましたか。またそれをどのように乗り越えてきましたか。

清水:怪我が最大の困難でした。辛い状況に陥った時こそ楽しむというのが大事だと思います。辛い時間は長い人生の中では短い期間だと考えるようにしています。

福澤:若い頃から日の丸を背負ってきましたが、ロンドン2012、リオ2016オリンピックの出場権を逃して、自分たちで日本のバレーボールを盛り上げることができないと思った時期は辛かったです。自分が好きだからバレーボールをやってきたのに、いつの間にか、しなければならないという思いが強くなっていた。純粋にバレーボールをやりたいという自分の気持ちに気づいてからは、もう一度楽しくなりました。

最後に、視聴者の皆様にお二人からメッセージをいただきました。

清水:今日は観てくださってありがとうございました。コロナ禍で不安やストレスを感じている方はたくさんいらっしゃると思います。僕たちがバレーボールをする姿、スポーツを一生懸命する姿は本当にパワーを与えることができると思います。10月15日からVリーグも開幕しますので皆さん是非観にきてください。

福澤:スポーツが盛り上がるためにはファンの方の協力が必要です。選手とファンの方が直接交流を取れる場を作っていくことは大事であり、今後もこういったイベントを積極的にやっていきたいと思います。