オリンピックの映像の驚きと感動に満ちた最高のスポーツ映像が生まれる場所は、連日熱戦が繰り広げられるオリンピックパークの外れにあった。国際放送センターIBCである。ここには、オリンピックの公式映像を制作するホスト放送局“オリンピック放送機構”SOBO(Sydney Olympic Broadcasting Organisation)と、公式映像を自国向きの番組に加工し送信する世界各国の放送局が集まっている。パナソニックは、大会の期間中だけ稼働する世界最大の放送局・IBCの基盤となる最も重要な部分「放送システム」の構築を請け負った。
24時間休みのないサポート体制
IBCでは、ホスト放送局のスタッフ以外に、各国の放送局のスタッフ1万2千人が働く。世界の各地からやってきた放送局は、それぞれの国の時間帯に合わせて番組を制作し配信する。IBCのすべての機能は24時間ひとときも眠ることはない。パナソニックの主席技師・山本耕司は言う。「IBCは昼夜なく稼働しています。もちろん、膨大な放送機器も大会期間中はずっと酷使されているわけです。我々のメンテナンススタッフも3交代制で休みなくサポートを続けました。IBCや競技会場にあるSOBOの放送設備と、パナソニックの機材を使っている各国の放送局に対応するため、およそ100人のスタッフでなんとか期間中を乗り切りました」
シドニー大会の公式放送機器には、パナソニックの“DVC-PRO50”デジタルVTRが導入された。1/4インチサイズの小さなテープに、高画質のデジタル映像データを記録することができる、現場でも評価の高いフォーマットだ。「DVC-PRO50のカメラレコーダーは軽量コンパクトで、機動性の高い取材を可能にしました。空中から、海上のボートから、バイクから、斬新なカメラアングルで臨場感のある映像づくりに活躍しました」と山本は言った。
素早い映像制作を実現したDVC-PRO50
IBC内のパナソニック・サポートセンターには、技術者が想定しないような様々なトラブルが持ち込まれた。しかし、各局のスタッフからの賞賛も数多く寄せられた。DVC-PRO50は、撮影から編集加工、各国放送局へのデータ配信、番組の送信まで、すべてが伝送速度の速いデジタルデータでおこなえる。「作業が合理的にできる」「まったく画質が落ちない」「制作のスタイルが変わった」実際に完全なフルデジタルの制作をおこなってみて、その実力を評価する声が相次いだ。3,500時間にもおよんだシドニー大会の公式映像の最後のシーンは、ハーバーブリッジを光でつつみこんだ盛大な花火だった。IBCの無数のモニターに映し出されるそのきらめきは、大会期間中ここで働いた人々の心に様々な苦労や思い出を走馬灯のように映し出した。