31. 関東大震災が起こる 1923年(大正12年)
東京方面については、所主自らたびたび販路の開拓と売り込みに出向いて、大正9年には、東京駐在を置くまでになった。その後、駐在員2人を置き、小さいながらも出張所としての店舗を構えるまでになった。
販売も次第に上昇してきた大正12年9月1日の正午ごろ。所主が事務所に入ると、グラグラと来た。しばらくして、静かになった。そのまま店の仕事をしていると、チリンチリンと号外の音。所主が見ると「東京地方に大地震」とあった。しばらくすると、また号外である。今度は、おびただしい死傷者の出たことが報じられている。
さあ心配なのは、駐在員の2人と数10軒の取引先のことである。ただ安否を気づかうのみで日が過ぎるうちに、4日目になって、店先にあらわれた駐在員の2人の元気な姿。所主は「おお、無事だったか」と思わず胸をなでおろした。
この関東大震災により、関東一円の販売網は壊滅状態に陥った。せっかく築き上げた取引先の大半は焼失するなどの大被害を受け、取引の中断や集金不能で、東京出張所も一時閉鎖を余儀なくされた。