42. スーパーアイロンが完成 1927年(昭和2年)

同じころ、電熱部で、中尾哲二郎氏の苦心の研究により、新型の「スーパーアイロン」が完成した。

当時のアイロンは値段も高く、3ポンドの1流品で4円から5円もしていたから、一般家庭には贅沢品であり、全需要数も年10万台足らずという状況であった。新製品は一般のものと違い、ヒーターを鉄板に狭んだ新機軸のものである。所主は、数多くつくれば何とか一般のものよりも安くなると考えた。

そこで、所主はこの製品を一般よりも大幅に安い3円20銭で、しかも月1万台をつくるようにと指示した。当時の業界全体の数量を松下1社でやろうというのだから、だれもが驚いた。だが、フォードの大量生産方式に興味をもっていた所主には、手頃な値段で品質の良いものをつくれば、むしろ大衆に喜ばれるとの信念があった。

所主のこの予想は当たり、スーパーアイロンは非常な売れ行きを示した。昭和5年に商工省から国産優良品に指定された。