41. 新聞にランプの広告を出す 1927年(昭和2年)

ナショナルランプの発売に際して、所主は新聞に広告を出すことにした。大企業ならともかく、中小企業が新聞広告を出すことなどあまりなかった当時のことである。個人経営の町工場にすぎない松下が、新製品普及のために新聞広告を出したことは、注目に価する。

しかし、資金的には、相当な負担である。所主は、最高の効果を狙って、いろいろと文案を練った。3日3晩考えた末に、できたのが「買って安心、使って徳用、ナショナルランプ」という3行の文案である。

昼は他の仕事をしているから、夜、寝間に入って考えた。新聞を広げ、その上にこの文案を書いたものを置いて眺めてみる。短い文案であるが、そのたびに、字の太さ、字と字の間隔、また周囲から見た感じが気になっては何度も変え、最後に完成した。

昭和2年4月9日に出たその新聞広告は、短冊型の広告で、墨ベタ白ヌキの3行の文案でできており、しかも紙面の中央に位置していたから、人目を引いた。