62. 松下電器産業株式会社に改組 1935年(昭和10年)
事業の発展とともに、所主の経営革新への熱意は高まる一方であった。「企業は社会からの預かりもの」との信念、自主責任経営に対する確信など、さまざまの想いが所主の脳裏を去来した。
昭和10年に至り、松下電器は人的にも事業的にも飛躍的に充実した。所主は機の熟したことを知り、12月に、松下電器製作所を株式会社に改組し、「松下電器産業株式会社」を設立した。同時に、これまでの事業部をさらに発展させた「分社制」をとり、事業部門別に9社の子会社を傘下に設立、ほかに4友社をおいた。
改組の理由について、所主は「今日の松下電器は業容も相当大きくなり人員も増加して、社会的な一大生産機関としての実体をなしている。したがって、これを拡充する責務が痛感され、同時に経営の実情を公開して世間に発表できるようにする必要がある」と述べ、全従業員に自覚を促した。
これにより、松下電器産業株式会社は持株会社として、人事・経理面で分社を管理し、各分社はより徹底した自主責任経営体制のもとで生産販売を行うことになった。(なお、この改組により「所主」の呼称を「社主」と改めた)