74. 軍の要請で松下造船(株)を設立 1943年(昭和18年)
すべての産業活動が軍需生産に動員される中で、松下電器も、軍の要請で、航空機用の電装品、無線機、携帯無線機、方向探知機、レーダーなどの生産を始めた。その間に、日本軍はミッドウェー海戦とガダルカナル島攻防戦で決定的な打撃を受けた。政府は、戦局の抜本的な建て直しを図るために、昭和18年から、航空機、船舶と関連資材の生産に全産業を動員する非常措置をとった。
松下電器も、軍から強い要請を受けて、未経験の250トン型「木造船」の建造を余儀なくされた。昭和18年4月、松下造船株式会社を設立、大阪府堺と秋田県能代に造船所を新設して、「流れ作業方式」による木造船の生産を始めた。
これにはラジオ工場の流れ作業を応用した。全体を8工程に分け、船台をレールに乗せて、1日に1工程ずつ移動し、最後の工程で艤装を終わり、そのまま進水させるという独創的な工法であり、大きな注目を集めた。12月18日、第1回の進水式を挙行、以後、6日に1隻の割合で進水させた。その後、資材不足などの悪条件が重なる中で、終戦までに56隻の船を建造した。