88. 「再び開業する心構え」を説く 1951年(昭和26年)
朝鮮戦争の特需が呼び水となり、景気が急速に回復する中で、松下電器もほとんどの制限を解除され、心機一転、経営再建へと力強く踏み出した。
このときに当たり、社長は、松下電器の進むべき道について深く思いを巡らせた。敗戦後の5年間は、国家も松下電器も、苦闘の連続を余儀なくされたが、前途に曙光の見え始めた今、かえりみれば、教訓もまた数多く残されたのである。日本の将来と考え合わせて意義深いのは、日本人が真の“人間性”に目覚め、世界人としての立場で思慮するようになった点であった。
このことに思い至った社長は、これからは、世界的な視野に立って、日本の真の再建復興に携わらねばならないと痛感、昭和26年1月、経営方針発表会で、「再び開業する心構え」を説いた。
「今まで狭い視野のもとに働いていたわれわれは、今や世界の経済人として、日本民族の良さを生かしつつ、世界的な経済活動をしなければならない。われわれは世界人類の一員であるとの自覚のもとに、経営を再検討し、その成果を早急に上げるために、“松下電器は今日から再び開業する”という心構えで経営に当たりたい」
そして、進んで海外事情を見聞し、視野を広げるために、社長は初めてアメリカ視察に行くことを発表した。