142. 会長を退任し、相談役に就任 1973年(昭和48年)

昭和48年は創業55周年の意義深い年に当たった。1月の経営方針発表会で、会長は、「新生松下を建設しよう」と呼びかけた。

その会長が、7月19日の取締役会で、会長職を辞任、相談役に就任することになった。高橋荒太郎会長、松下正治社長の新体制を明らかにし、そのあとすぐに、本社で記者会見を行った。

その席上、相談役は「私も数え年で80歳、今が潮時です。この55年間にやるべきことはやりました。今は“われながらよくやった”と自分で自分の頭をなでてやりたい心境です」と淡々と語った。

この突然の発表は、国の内外に広く報道され、大きな話題を呼んだ。このとき、創業55周年並びに会長職引退を記念して、社会の人々のご支援に感謝するために、各都道府県に総額50億円の社会福祉対策資金を寄贈することも、あわせて発表した。

これは、従業員にとっても意外なことであった。記者会見後、本社講堂に幹部が招集され、発表された。相談役は、6項目の要望事項を提示し、その主旨を切々と説いた。続いて、8月20日、枚方の松下電器体育館で、会長退任のあいさつ会を開催、このとき、相談役は演壇から歩み出て、全員に向かい深く頭を下げ、謝意を表した。その真摯な姿に、会場は拍手に包まれた。