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ライバル技術、融合す

IHジャー炊飯器「Wおどり炊き」

2013

昨日まで最大のライバルとして激しく争っていた二つの技術が、まさかの融合へ。発売以来、快進撃を続けるIHジャー炊飯器「Wおどり炊き」の誕生の陰には、そんな驚くべきエピソードが秘められている。1988(昭和63)年に世界初のIHジャー炊飯器を発売して以来、松下電器は一貫してIH方式にこだわり続け、その後も銅釡の採用や、高温スチーム技術の導入などで、常に市場をリードしてきた。ところが2009(平成21)年に三洋電機がグループ会社となることでこの状況が変わる。当時、三洋電機も独自の圧力方式の炊飯技術を投入した炊飯器「元祖圧力IHおどり炊き」を発売し、そのモチモチした弾力のあるご飯で人気を呼んでいたのだ。

2社がひとつになった時にパナソニック・アプライアンス社の社長であった髙見和徳は、開発チームに両社の技術を融合させて新製品を開発するように指示する。開発チームは、何度か検討してみたが、「圧力を加えた三洋のご飯は、モチモチするから日本人の好みに合わない。商品性がない」という意見が多かったため、社長からのオーダーを無視し続けた。両社のスタッフは別々に商品開発を続けていたのだった。1年近くが経ち、ついに髙見の雷が落ちた。「いいかげんに融合せえ!」。

トップの鶴の一声もあって、開発チームはこだわりを捨て2つの技術の融合に踏み出した。彼らが目標にしたのは、誰もがおいしいと感じる「かまどで炊いたご飯」。通常、炊飯器の新製品の開発期間は1年だが、今回の新製品では3年を費やしてようやく完成。2013(平成25)年、両社の技術を融合させた「Wおどり炊き」を発売した。2つのIHコイルを高速で切り替え強力な熱対流を生み出し、米の一粒一粒を均一に加熱する“大火力おどり炊き”と、加圧と減圧を繰り返して激しい対流を起こし、米を底からかき混ぜて米の芯からムラなく加熱する“可変圧力おどり炊き”の2つの炊き技を融合。これにより、かまど炊きの対流を再現、旨み成分である“おねば”の濃度が高くなり、従来モデルより、ご飯の甘みを約14%、粘りを約13%アップさせることに成功した。

その後も開発チームは、理想とするかまど炊きの工程を炊飯器で実現するために、220℃のIHスチームや米の旨みを引き出す“前炊きプログラム”、米を大粒に炊き上げるための“加圧追い炊き機能”などを開発。かまど炊きを超える究極のおいしさをめざし、最新の技術でこだわりの炊き技を追求し続けている。

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