松下幸之助 伝える情熱<3部作> 第1部:広告宣伝のことば
会期:2019年7月13日(土)~8月24日(土)
理念や思いを伝えることに心血を注ぐ ― 。事業を通じ、あるいは日々の経営のなかで、松下幸之助はこうした姿勢をとことん貫きました。3部仕立てで展開するこの企画展では、国のあり方にまで視野を広げた「広告宣伝」、エンジン全開で取り組んだ「家庭電化の啓発」、従業員と真正面から向き合った「社内広報」をとりあげ、それぞれの事例から、幸之助の“伝える情熱”を浮き彫りにし、その真髄に迫ります。第1部は、新聞媒体を使い国民に問いかけた珠玉の広告宣伝を紹介します。
幸之助の宣伝観と、その実践
『宣伝というものは、なかなかむずかしいもんであるといえると思うんであります。そのむずかしいものがありますことが、人の世を非常に潤しているのやないかと思います。宣伝というものは、単に商品の宣伝とか、商売の宣伝とか、経営をするために必要であるとかいうことだけではない。その上にもっと社会というものを考える、もっと人間というものを考える、生活のやり方というものを考える、そうしてそこから宣伝観とでも申しますか、そういうものを生み出していくことが必要で、そういう意味で宣伝は哲学に通ずるとでも申しますか、そういうものでもあると考えられるわけでございます。』
1967(昭和42)年10月1日 仙台放送開局5周年記念特別講演会
幸之助の宣伝に込めた思い
◇よいものである、便利であることを早く知らせる意義
儲かるから広告を出すのは邪道
◇実質以上のことを宣伝してはならない
誇張であってはならない。正義でなければならない
◇宣伝・広告は教育の役割も果たす
ときには消費者に意見を言い、説得する必要もある
◇経営者自身が広告しなければならない
代理店や担当部門に任せきりではいけない
◇商品とともにわが社の人生観、社会観を世に浸透させる
社をあげての強い念願、真心からの希望を訴える
◇宣伝は技術に走っては宣伝にならない
大切なのは作り手の思いを伝えるもの
◇広告宣伝は人心に潤いを与え、文化を高めるもの
目新しさにとらわれて、本義を忘れてはならない
コーポレートコミュニケーションのはじまり
『ここには電気コタツをつくったが、これに非常な努力をかけた。良い物だからぜひ使ってくださいという経営者の切々たる願いと、この製品は絶対に安全だから社会に普及させなければならないとの使命感がこもっているコピーが掲載されている。単なる売らんかな広告ではない。あくまでも経営者の姿勢を訴えるコーポレートコミュニケーションなのである。
―中略―
当時、売らんかなの商品広告はあっても、企業の姿勢を訴える、いわゆる企業広告は皆無だった。それを『朝日新聞』で打った。かなりの料金だったと思う。』
<竹岡 稜一『宣伝70年史』より>