デバイス創造

物理モデルに基づく独自シミュレーターの開発をサポートします


2026年5月26日


メカニクス設計課の明石です。

近年、製品開発の現場では、試作レスのモデルベース開発のニーズが高まり、シミュレーションの重要性も一層増しております。ただ、実際に現象をきちんと再現できるシミュレーターを一から作ろうとすると、想像以上に手間がかかるのが実情です。また、市販の汎用ソフトを利用する選択肢もありますが、高額なライセンス費用や汎用性ゆえの操作の複雑さといった課題があり、気軽に導入できるとは限りません。

さらに、現象を記述する数理モデルについて、安定して解くには数値計算の知識だけでなく、物性値の扱い方や境界条件の与え方など物理的な理解も不可欠です。実際ある条件で計算が回ったとしても、パラメーターを少し変えるだけで、物理的制約を満たさなくなり、計算が発散するケースも少なくありません。数値的に破綻しないように調整していくバグ取り作業は地道であり、経験が必要になります。

また、仮に計算として成立したとしても、それを現場で使える形に落とし込むとなると別の難しさがあります。計算時間や操作性、メンテナンス性など、運用面で求められる要件は意外と多く、これらのハードルが原因で実用化できないというケースも多いかと思います。「まずは簡単なモデルでいいから動かしたい」という声も多いのですが、実際に形にするためには気にするべき要件が多いのが現実です。

こうした背景のもと、私たちはこれまで、物理モデルの整理から数値計算の実装、実際に使えるツールとしての整備まで、一通りの工程に関わってきました。単に論文の式をそのまま実装するのではなく、その物理的意味を読み解き、モデル構造を整理したうえで、対象とする現象に対して妥当であるかを検証します。さらに、将来的な拡張性も視野に入れた形でツール化を行っています。

ここで一つ、具体的な例をご紹介します。実際の社内製品向けに開発した事例をここでお見せすることはできないため、イメージとして、砂丘の風紋形成を再現する動力学モデルを取り上げます1,2)。このモデルは、風によって運ばれた砂がどのように堆積し、地形がどう変化していくかを2次元で表現したもので、見た目はシンプルですが必要な物理がきちんと押さえられています。こちらにより、砂漠に浮き上がる風紋の形成過程を再現可能となっております。

砂漠の風紋
写真:砂漠の風紋のイメージ

各点での砂丘の高さℎ(𝑥,𝑦)を下記式でモデル化(一部省略、詳細は参考文献参照)
飛散量𝑞                :𝑞=𝑞 + 𝑏𝑞 tanh(𝑠)
飛散距離𝐿               :𝐿=𝐿 − 𝑏𝐿 tanh(𝑠)
クリープ(砂丘表面からの転がり) :D2hを離散化
ここで、
𝑏𝑞:飛散量の斜面依存性、𝑏𝐿:飛散距離の斜面依存性、 𝑠:風向き方向の傾斜、 𝐷:拡散係数 です。

このモデルをベースに実際に計算を回せるようプログラムとしてまとめ、飛散量や風向などの各種パラメータの変更が可能なツールとして使える形にしてみました。

動画 砂丘の風紋形成のツール画面

動画は実際のツール画面をキャプチャしたもので、左側に各種パラメータの設定画面、右側に砂漠の地形(山の高さの分布)が表示されています。動画の例では、初期状態として 0〜1 のランダムな高さ分布を与え、そこに風が吹いた際にどのように風紋が形成されていくかをシミュレーションしています。

動画内では、風向の変更に加えて、飛距離の基準値𝐿₀や飛散量の基準値𝑞₀ を調整した際、風紋のパターンがどのように変化するかをリアルタイムで確認できる仕様になっています。さらに、ユーザーがフリーハンドで自由に山の形状を描き、その地形が時間発展とともにどのように変形していくかを観察できる機能も備えています。
物理モデルに基づいて、砂漠の風紋が自発的にパターン形成していく様子は、とても興味深いですね。

もし、

  • 特定の現象をシミュレーションしてみたい
  • 論文のモデルを実装して動く形にしたい
  • 現場で使える実用的なツールとしてまとめたい
  • 手元のプロセスをモデル化して効率化したい

といったニーズがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。まだ方向性が固まっていない“アイデア段階”からでも全く問題ありません。
「こんなことできるかな?」という軽いご相談でも歓迎ですので、ぜひ一度声をかけていただければ幸いです。

参考文献:
1) 西森拓. 砂の表面のパターン動力学. 表面科学, 1995, vol.16, no.4, p.267-272
2) 大内則幸. 西森拓. 砂丘形成の動力学モデル. 物性研究, 1994, vol.61 , no.5, p530-531

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