デバイス創造 Reliability Evalution

環境変化や時間経過によるヒトの温冷感・快適感変動推定への取組み

2022年6月14日

メカニクス設計課の徳永です。

住宅や店舗、ビルなどの熱環境の変化に対し、ヒトが移動したり滞在したりする際に感じる「涼しさ」「寒さ」「暖かさ」「暑さ」の変動を推定するシミュレーションの取組みについて、ご紹介します。
次のようなことは、どなたでも経験が有りますね?

  • 夏の暑い日、屋外から冷房の効いた建物にはいった瞬間に「涼しいっ!」と感じる。
  • 冷房の効いた食品スーパーで長時間買い物しているとゾクゾクしてくる。
  • エアコンの設定温度を変えなくとも、加湿器を使いはじめると暖かくなる。
  • 扇風機やエアコンの風が、直接自分に吹き付け続けていると寒く感じてくる。
  • じっと座っている時は平気でも、運動を続けていると、むっと暑苦しく感じてくる。
  • 服を重ね着すると、寒さが和らいでくる。
環境変化や移動に伴うヒトの温冷感・快適感の変動

このようなことを、実験でなくコンピュータによる計算で予測するために、「単純化ヒト熱モデルを用いた温冷感・快適感変動予測技術」を開発しています。
ヒトの血流・発汗・呼吸も考慮しており、「環境要因(気温・湿度・風速・壁温) 」や「ヒトの着衣・運動状態」をパラメータとした様々な検討が、高速演算により可能となることを目指しています。
ヒトの温冷感・快適感評価に関して、従来から行われている方法と、その課題、および、「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」による期待効果について、下表にまとめます。

従来からの評価方法

従来からの評価方法の課題

「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」の期待効果

被験者による実環境での実験評価

  • 様々な環境条件での評価には工数が多大。 
  • 寒暑の厳しい条件等では、被験者の方の身体への安全性も心配。

(実環境での実験評価は重要ですが)

  • 実験レスで計算可能なため、工数が削減できる。
  • 被験者の安全性への心配無し

人体形状の詳細な熱モデルを含む熱流体シミュレーション

  • モデリングや計算に多大な時間が必要となり、数多くの条件を検討するのは困難
  • 形状モデリング不要
  • 変化を伴う環境履歴に対し、数分で計算可能
  • 様々な条件での検討が可能

PMV(一般に用いられている温冷感の指標)

  • 元来、定常状態を対象としており、時々刻々と変化する、ヒトの温冷感変動の評価には適していない。
  • 環境変化・移動、時間経過により、ヒトが感じる温冷感・快適感の時間変動を推定可能。

ヒトの温冷感・快適感評価方法 従来からの方法の課題と
「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」による期待効果

では、 「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」による計算結果のイメージについて、ご紹介します。

① 温冷感指標PMV と「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」の 計算結果比較
先ほどの表にも示しましたが、PMVは、経過時間に関わらず、環境により一定値となるのに対し、「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」により、ヒトが感じる温冷感の過渡変化(寒さが増していく様子)が推定可能となります。

温冷感指標PMVと「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」の計算結果比較の図

② 積極的快適感
①で示した温冷感とは異なり、「寒くない」「暑くない」という「不快でない」レベルでなく、高温の屋外から空調された室内へ入室した直後に「わぁ~涼しい」と感じるような、 「動的な 気持ちよさ」を伴う感覚を表す指標であり、人体が熱的中立状態へ戻る過渡変化の途上において得られると言われています。
「単純化ヒト熱モデルを用いた予測」により、この積極的快適感の環境変化や時間経過による変動についても、予測できるようになると考えられます。 

「単純化ヒト熱モデルを用いた、温冷感・快適感の変動予測技術」を用いて、例えば、「涼しい!」と感じた後、「寒くならない」ための空調制御や、室内ゾーン分割等を検討していきたく思っています。
居住環境等の快適性評価や、関連機器の開発等に、お役に立てれば幸いですので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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