後援:文部科学省 国連広報センター 日本ユネスコ国内委員会 全国市町村教育委員会連合会 全国高等学校メディア教育研究協議会
15年以上の長きにわたり、映像制作を通して子どもたちの成長をサポートしてきたKWN。特定非営利活動法人ソーシャル
バリュージャパン Social Value Japan(旧称:特定非営利活動法人SROIネットワークジャパン)の協力のもと、KWNの
社会的インパクト評価の検証を実施しました。
小学生部門では森村学園初等部K組、および中学生部門ではいわき市立平第三中学校などにアンケートやインタビューの
実施協力をお願いしました。
● 期間 2017 年8月~ 2018 年3月
● 対象 森村学園初等部5年生 K 組40 人(KWN 実施)、F 組40 人(KWN 未実施)、S 組40 人(KWN 未実施)
◎ 選択式アンケート結果
評価仮説を立てた4つの領域のうち、3つの領域においてKWNを実施したK組が高い数値を示す結果となりました。
領域別各クラス平均
【補足】
本調査自体は一度きり実施したものです。本来であれば、KWNの導入あり/導入なしの双方について前後比較を行い得点の伸びを比較することが望ましく、その点においてKWN導入とこの数字の因果関係を示すデータにはなっていない点に注意が必要。
◎ 記述式アンケートの結果(一部抜粋)
KWN実施クラスであるK組で行った記述式アンケートの結果をご紹介します。
「議論」「意見発表・プレゼンテーション」に関連する回答が担当を問わず出現している。またグループワークの中で意見対立などの葛藤があったこと。しかしそれと同時に困難を乗り越える際にも他の子どもたちと協力してアイデアを出し、解決する姿勢が読みとれました。
「調査」をキーワードとする回答はデスク(担当名)に集中しており、当該活動とそれによる成長は担当に限られているかもしれません。
一定数の子どもたちが自分たち同士の関係性構築について述べており、プログラム実施が学級集団としての成熟に寄与していることも読み取れました。
プログラム実施が学級集団としての成熟に寄与していることも読み取れました。学級集団の成熟3 について自ら動けるようになったなどの主体性に対する回答や、挑戦し達成感を得たなどの回答もあり、映像制作の過程の中で多様なことに新しく挑戦している子どもたちの姿が読み取れました。
● 期間 2018 年8月~ 2019 年3月
● 対象 福島県いわき市立平第三中学校 有志6 名(KWN 実施)、2 年生全体(KWN 未実施)、
過去にKWNに参加したことのある卒業生数名
「社会的意義」「チームワーク」「コミュニケーション」「人間関係形成」「将来設計力」「情報活用力」「意思決定力」「地域関心理解」「国際理解」の計9 領域において、KWN 参加前と参加後に調査を実施。KWN 参加者である有志6 名とKWN 未参加の2 年生全体との比較評価を行った。
KWN参加者と一般生徒のコンピテンシーの参加前後の伸びの比較
KWN 活動に参加した生徒の成長はコンピテンシー(高い成果につながる特徴的な行動特性)スコアの向上によって裏付けられた。とくに「人間関係形成」「コミュニケーション」「将来設計」の各項目においては、活動に参加していない一般の生徒よりも大きな成長を見せている。
● 調査対象校がKWNに興味を持っている若干名の有志による活動であるため、対象者は元々意識の高い生徒であると考えら
れる。そのコンピテンシースコアがほとんどの領域(9領域中の7領域)において参加していない一般生徒よりも高い。
● KWNの活動への参加を通じて、参加した生徒のコンピテンシースコアの優位性はさらに向上している。これらの結果から
以下の成果が確認できる。
①チームでの活動や取材等において外部とのコンタクトを重ねることにより、コミュニケ―ションや人間関係形成力が成長
②チームで活動する経験を積むことで、チームワーク力が成長
③社会的意義は、KWN活動の参加初期の企画段階に限定されてしまう傾向があるため、訓練の機会が上記2領域に比べて
少ないが、指導法によって伸びしろがある。
● 活動参加前に優位性が小さかった領域・劣勢だった領域では、KWNの参加を通して優位性が大きく伸長しているが、
一方、活動前に優位性が大きかった2つの領域では優位性は逆に小さくなった。
● この優位性の逆転が起きた2つの領域は「情報活用力」と「地域関心理解」であり、これらは対象群の一般生徒も通常の
授業などによりコンピテンシーが高まり、参加者に追いつくためと考えられる。
● 児童・生徒が、スポーツ以外で、チームを組んで皆で協力しなければ目的を達成できない中長期プロジェクト(≒チーム
プロジェクト)に参加する機会は殆ど無い中で、KWNは貴重な活動のきっかけを提供していると言える。
1. 役割ごとのグループワーク指導の重要性
これまでの測定結果からも見て取れるように、子どもたちの成長の多くの部分は、一つの目標に向かい共に活動することから派生している。そのため、各役割ごとにチームを組みグループワークを中心とした指導を行うことが子どもたちの成長に重要である。
2. チームワークによる問題解決への指導の有効性
映像作品を作成する過程で多くの参加者が何らかの課題にぶつかることがインタビューや記述式アンケートから明らかになっている。
課題に直面した際に、教員がどの程度その解決に関与するかにより、子どもたちが発揮する主体性や学びが影響を受けることが予想される。子どもたちの主体性や自らの関係調整能力に任せる指導が有効ではないか。
3. チームごとの活動内容を発表する場の重要性
複数の子どもたちが、人前で発表を行うことが上達したという趣旨の回答を行っていた。これはひとえにそのような場が映像制作の過程に定期的に準備されていたからだといえる。自己表現力の育成のために、発表の場を持たせることが重要であることが推察される。
KWNプログラムに対して、異なるアプローチでの社会的インパクト評価の実施によって、以下の様な事業改善の機会が考えられる。
1. プログラム実施前後での評価実施
プログラム実施前後で社会的インパクト評価を実施し、子どもたちがどのような領域でどのような成長を遂げたのかについて、定量・
定性両面での評価を実施する事で、プログラムの効果について理解を得ることができる。
また、これらの評価結果をもとに、プログラムを実施した教員・学校間でこれからの内容を共有し、KWN 事業実施の方法等の交流活動を行うことで、より効果的なプログラム運営についての学びあいが実施できる。
2. 異なるプログラム実施の方法の効果の比較
KWN の実施方法は、学校によって、有志の活動、クラブ活動から学校単位での参加まで、多様である。こうした異なる方法で実施されたプログラムに対して、同一の基準の評価を実施し、その結果を比較することにより、効果的なプログラム実践のためにはどのような参加形態、指導手法、役割分担が有効であるかについて検討をすることができる。
3. 社会的インパクト評価を活用した、プログラム実施ガイドラインの構築
社会的インパクト評価で得られた知見を活用して、プログラム実施のガイドラインを作成、KWN 実施に配布することにより、子どもたちの学びの最大化を図り、プログラム全体の質の向上を達成することができる。