海は命の宝庫(ほうこ)ってほんと?
宇宙(うちゅう)から地球を見ると、青く輝(かがや)いている。それは地球が、海におおわれているからだよ。地球の表面の70%は、青い海におおわれている。川や湖などにも水があるけれど、地球にある水の98%は海の水だよ。地球で最初の生物が誕生(たんじょう)したのも、海の中だった。海は、すべての生命の母なんだ。
今も海の中は、生命に満ちあふれているよ。サンゴ礁(しょう)は、たくさんの生物がすんでいるところだ。サンゴ礁は、サンゴ虫という小さな生物が集まって、岩のような地形が作られている。熱帯魚など、たくさんの魚や生き物がすんでいて、まるで海のオアシスみたいなところだよ。
陸地に近い海も、生き物がたくさんすんでいるよ。潮(しお)が引いた後、広い砂浜(すなはま)ができる遠浅の海を、干潟(ひがた)という。九州の有明海にある干潟は、日本一広い干潟だ。やわらかい泥(どろ)でできた海岸を飛びはねるトビハゼなど、そこにしかいない貝や魚がたくさんいるよ。
海の水はどこへ流れていくの?
世界には、北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋、北極海、南極海といった大きな海がある。これら大洋は、いつもゆっくりと動き続けているよ。この流れを海流という。地球の自転や、海面をふく風が関係し合って、大量の海水を遠くまで運んでいるんだ。
海流は決まったコースを流れていて、流れにのって海の生き物たちは旅をする。海流は、栄養分を運ぶ役目もしているよ。南アメリカの西海岸沿(ぞ)いを流れるペルー海流は、南極の海の栄養分を、北へと運んでくる。この栄養分をエサに、魚などの生き物が育つんだ。
海水は、とても複雑(ふくざつ)な流れをしている。南極や北極近くでは、冷たい海水は深くしずんで赤道へ向かって流れる。その海水が暖(あたた)かいインド洋や太平洋に流れこむと、今度は温められて海の表面近くへ上がって、また北極や南極へ帰って行く。こうやって海水がベルトコンベアーのように世界をめぐり、海水の温度差を少なくしているんだよ。
海にはどんな生き物がすんでいるの?
海の生命を支(ささ)えているものは、とっても小さなプランクトンだ。プランクトンには、植物プランクトンと動物プランクトンとがある。植物プランクトンは葉緑素(ようりょくそ)を持ち、光をエネルギーにしているよ。動物プランクトンは植物プランクトンを食べて増(ふ)え、動物プランクトンは小魚などに食べられる。そして小魚は、より大きな魚などの動物に食べられ、今度はイルカなどが大きな魚をエサにしているんだ。このように、生き物たちは食べたり食べられたりして、つながっているんだね。これを食物連鎖(しょくもつれんさ)とよんでいるよ。
草食動物のように、海藻(かいそう)を食べる魚がいる。肉食動物には、サメやアンコウ、イソギンチャクなどがいる。クジラは、魚やプランクトンも一緒にのみこんで食べる。深い海の底で生きるものもいれば、日光がさしこむ浅い海にすむものもいる。海はさまざまな生物を育み、それぞれがバランスを保(たも)つことで生態系(せいたいけい)を作っているんだよ。
海の底にはなにがあるの?
海の底は、平らな形をしているとは限(かぎ)らない。むしろ陸地よりも、複雑(ふくざつ)な地形をしているよ。陸地に近いところでは、やや浅い陸棚(りくだな)がある。そこからどんどん深くなっていって、急に深い溝(みぞ)になっているところがある。これを海溝(かいこう)といい、海溝の中で特にぐんと深くなったところを、海淵(かいえん)とよんでいるよ。
世界一深いマリアナ海溝は、深さが1万924mの谷になっている。これは、標高(ひょうこう)8840mのエベレスト山もすっぽりと入ってしまうほどの深さだ。ハワイ島にあるマウナケア山は、海底からの高さも加えると、1万mにもなる世界一高い海底火山だよ。
海底には、岩の層(そう)でおおわれた場所がある。これを岩層といって、銀や銅(どう)や亜鉛(あえん)などの鉱物(こうぶつ)を含(ふく)んでいる。また、石油や天然ガスなどの資源(しげん)も眠っているよ。石油や天然ガスは、古代の海の植物やバクテリアの死がいが海底にふり積もり、長い年月の間に、熱と圧力(あつりょく)によって変化したものだ。これらの海底資源を利用しようと、世界各地の海で採掘(さいくつ)が行われているよ。
海にしずんでしまう島があるの?
海は、地球の雨量を調節したり、大量の二酸化炭素(にさんかたんそ)を吸収(きゅうしゅう)して気温を一定に保(たも)ったり、大切な役目をしているよ。海に吸収された二酸化炭素は、石灰質(せっかいしつ)のサンゴや貝殻(かいがら)となり海に蓄積(ちくせき)される。だけど、海が汚(よご)れてサンゴや貝がすめなくなると、サンゴ礁(しょう)がなくなり、大気中の二酸化炭素がふえてしまう。二酸化炭素には熱を蓄(たくわ)える性質(せいしつ)があるから、地球の気温が上昇(じょうしょう)してしまうことになるんだ。
地球の気温が上昇すると、海はどうなってしまうだろう。海水は温まると、ふくらんで大きくなる。氷でおおわれている南極(なんきょく)や北極では、氷が溶(と)ける。すると海の水位が上がって、陸地をのみこんでしまう。このまま地球温暖化(おんだんか)が進んだら、もしかすると何十年後かには、いくつもの海岸や都市が海の下に沈(しず)んでしまうかもしれない。何とかしないと、たいへんだよね。
南太平洋にあるツバルという島は、地球温暖化のために世界で最初に海にしずむ島といわれている。海抜(かいばつ)が低いツバルでは、近年、海岸がどんどん海に浸食(しんしょく)されている。高潮(たかしお)の被害(ひがい)を受けたり、畑に海の水がしみこんで作物が育たなくなったり、困(こま)ったことが起きているんだ。日本だって海に囲まれている島国だから、決して人ごととはいえないよね。
エルニーニョ現象(げんしょう)ってなに?
エルニーニョ現象って聞いたことがあるかな。 エルニーニョ現象とは、太平洋の赤道中央から南米のペルー沿岸にかけて、海面の水温が平年より高くなる現象だ。エルニーニョ現象は数年に一度起き、半年から1年半ほど続く。これには、太平洋の赤道あたりにふく、東風の動きも関係していると考えられている。エルニーニョ現象が起こると、大気の循環(じゅんかん)に影響(えいきょう)を及(およ)ぼし、天候にもさまざまな影響があるといわれているよ。
エルニーニョ現象が起きた年は、干(かん)ばつや洪水(こうずい)などが起きることが多い。日本では、梅雨が長びいて夏は涼しく、冬は暖かくなりやすいといわれている。ヨーロッパでは夏にたくさん雨が降(ふ)って、川の水があふれてしまい、アフリカでは雨が少なく、干ばつが起きるといわれている。地球温暖化や異常気象(いじょうきしょう)が関係あるともいわれているけれど、どう結びついているのかは、まだはっきりとわからないことも多いんだ。
赤潮(しお)、青潮ってなに?
赤潮とは、文字通り海の色が赤く染(そ)まったように見える現象(げんしょう)だよ。赤潮は、小さな植物プランクトンが異常発生(いじょうはっせい)して、海の水がくすんだ赤色になる。日本では1960年ごろから瀬戸内海(せとないかい)などに多く発生して、たくさんの魚が酸欠状態(さんけつじょうたい)になって死んでしまった。そもそもの原因(げんいん)は、工場や家庭が流した排水(はいすい)のせいだ。排水には、プランクトンが好む窒素(ちっそ)やリンなどの養分が含(ふく)まれている。これが海に大量に流れ込(こ)んだために、プランクトンが異常発生してしまったんだ。
このごろは、青潮も大きな問題になっている。青潮は、東京湾(わん)などの汚(よご)れた内湾で多く発生する。赤潮と同じようにプランクトンが異常発生し、その死がいが底に沈(しず)んで分解されると、硫化水素(りゅうかすいそ)が発生する。これが台風などの強い風で海面に上がると、海が青色になるんだ。硫化水素には強い毒があり、海水に酸素がなくなってしまって、魚や貝などが大量に死んでしまう。青潮も、汚れた水を流すことが原因で起きるもの。人がその原因を作っているんだね。
海が汚(よご)れると生き物はどうなってしまうの?
世界の海が今、汚染(おせん)の危機(きき)にさらされている。どうして海が汚れてしまうんだろう。その原因(げんいん)にはさまざまなものがあるよ。
■工場や排水(はいすい)
工場からの排水や、家庭から出る下水は、海を汚す大きな原因だ。排水は川や地下水となってしみこみ、最後は海に流れこむ。また化学肥料(ひりょう)や殺虫剤(さっちゅうざい)など化学物質(ぶっしつ)も、海を汚して生き物に深刻(しんこく)な影響(えいきょう)を与えてしまう。
■原油
石油が海に流れ込(こ)むと、海水面をおおって多くの生物が死んでしまう。タンカー事故(じこ)で一度に大量の原油が流れると、その海の周辺は汚れてたいへんなことになる。
■ゴミ
石油から作られるプラスチックなどのゴミは、いつまでも分解(ぶんかい)せず海を汚す原因になる。また、えさとまちがえて食べて、生き物が死んでしまう。
海が汚れることで、あらゆる生き物が命の危険(きけん)にさらされてしまうんだね。でも、それだけではない。汚染された生き物を、また別の生き物が食べることで、汚染物質は体の中に濃縮(のうしゅく)されてしまうんだ。それをまた別の生き物が食べると、さらに汚染物質が体の中にたまっていく。こうした食物連鎖(しょくもつれんさ)の頂点(ちょうてん)にあるのが、人間だ。人が海を汚していると、最後には人に返ってくるんだよ。