第68回大河内賞大河内記念生産特賞
『導電性高分子を採用したデジタルインフラ向け高性能アルミニウム固体電解コンデンサの開発』
第68回(令和3年度)大河内賞 大河内記念生産特賞が決定し、パナソニック株式会社の『導電性高分子を採用したデジタルインフラ向け高性能アルミニウム固体電解コンデンサの開発』が受賞し、贈賞式が2022年3月22日、日本工業倶楽部会館(東京・丸の内)で開催されました。
大河内賞は、公益財団法人 大河内記念会が毎年、わが国の生産工学、生産技術の研究開発、および高度生産方式の実施等に関する顕著な功績を表彰するものです。その中で、大河内記念生産特賞は、生産工学上の優れた独創的研究によりあげられた産業上の特に顕著な業績に贈られるものです。
今回の当社の業績は以下の通りです。
開発の背景
近年、通信速度の高速化やサーバーのデータ量の増加に伴い、基地局やサーバーに関連する機器に搭載される半導体の消費電流が増加しており、回路部品として用いられるコンデンサに対して、大容量化と共に、高温耐性・長寿命への要求が年々高まっています。
開発技術の概要
本製品を製造する上での重要な技術は、大容量化のためアルミ表面をエッチングにより粗面化する工程、抵抗低減のため固体電解質として導電性高分子膜を形成する工程、更にこれらを含む製造工程を安価に実現するための当社独自の生産方式と、異なる品種を共通の生産設備で実現する生産工程の標準化にあります。特に本業績では、電極となる導電性高分子薄膜を、環境負荷が低い独自の重合材料で形成することにより、高温耐性・長寿命を実現する手法を確立しました。加えて、アルミ薄膜の加工から最終製品まで一貫した生産システムにより、各工程の最適化と標準化を進めることで、高性能な多品種製品を低コストで実現する生産方式を構築しており、高い生産実績とグローバル競争力を獲得しています。この他社に追随を許さない製品競争力は、アルミ表面の粗面化や低抵抗高分子成膜などの要素技術の卓越性に加え、自主開発による独自性の高い優れた生産システムにより、もたらされたものです。
開発技術の成果
本業績の導電性高分子を用いたアルミ電解コンデンサは、1990年に商品化して以来、高性能化と製造プロセスの革新を進めることによって、電圧及び温度変化に対する容量値の優れた安定性に加え、小型大容量、低抵抗な特性を確保しつつ、高温での長寿命化を実現しています。これにより、お客様のご要望に応える製品として、幅広く用いられています。今後、基地局やサーバーなどのデジタルインフラ市場において、高温環境での需要の高まりが想定されることから、電圧及び温度変化に対する容量値の安定性に優れた本コンデンサは、引き続き重要性の高い製品と考えられます。より高温かつ長寿命の製品実現のための材料開発も進展しており、独自性・一貫性を活かした生産方式により、将来にわたっても、高い製品競争力を維持し続け、グローバルな情報化社会の発展に寄与していきます。