第73回電気科学技術奨励賞を受賞

2025年11月25日、公益財団法人 電気科学技術奨励会が主催する第73回電気科学技術奨励賞(旧オーム技術賞)の贈呈式が、KKRホテル東京において行われパナソニック ホールディングス株式会社、およびパナソニック インダストリー株式会社から応募した2件が電気科学技術奨励賞を受賞した。

電気科学技術奨励賞を受賞したパナソニック ホールディングス株式会社のみなさん
(左から児玉さん、古賀さん、池田さん)
写真提供:(公財)電気科学技術奨励会

電気科学技術奨励賞を受賞したパナソニック インダストリー株式会社のみなさん
(左から小山さん、松崎さん、神谷さん)
写真提供:(公財)電気科学技術奨励会

電気科学技術奨励賞は、電気科学技術に関する発明、改良、研究、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人に対し与えられる。

電気科学技術奨励賞

『ハイブリッド通信技術(Nessum)の開発と実用化』

受賞者

古賀 久雄 パナソニック ホールディングス株式会社 技術部門 事業開発室 Nessum部
児玉 宣貴 パナソニック ホールディングス株式会社 技術部門 事業開発室 Nessum部
池田 浩二 パナソニック ホールディングス株式会社 技術部門 事業開発室 Nessum部

開発技術の成果

エネルギーマネジメントや遠隔監視の需要が高まり、多数の機器接続による付加価値創出を行うIoT・DX・GX時代では、ビルや工場、地下空間、船舶など従来困難だった場所でもネットワーク化が必要とされる。当社のNessum(旧HD-PLC)は既存配線を活用し、電力線・通信線などの有線に加え、無線・海中にも対応するハイブリッド通信技術である。Wavelet OFDMとマルチホップ技術を採用し、IEEE認証や時間同期に対応することで過酷な環境下でも安定通信を実現する。IEEE 1901、ITU-T G.9905など国際標準規格に準拠し、IoTインフラの効率化とセキュリティ向上を同時に達成する革新的技術である事が高く評価された。

開発技術の概要

電力線など通信専用ではない既存配線を活用しながら信号干渉を抑えるため、NessumはWavelet OFDMを採用しており、FFT-OFDM比でサイドローブを約-35dB低減し、信号漏洩を防ぐ。さらに数十kHz~100MHzの広帯域で柔軟なチャネル設定を可能とし、干渉帯域を回避する。またIEEE 802.1Xによるアクセス制御とIEEE 1588による±1μs以内の高精度同期によりセキュアな通信を実現しており、ITU-T G.9905準拠のCMSR方式により最大1024台・10ホップまで自動接続し、スター、ツリー、リングなど多様なトポロジーに対応する。加えてIEEE 1901c準拠技術により海中通信も可能とし、過酷環境下で安定通信を提供する革新的技術である。

Nessumが期待されるB2B領域

受賞者コメント


写真:古賀 久雄

古賀 久雄

この度は、栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。また、これまで共に開発に尽力いただいた関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。 Nessumは、有線・無線の両方に対応可能なハイブリッド通信技術であり、これにより既存製品の高度化のみならず、新たな価値を有する製品の創出が可能になると確信しております。今後も研究開発に邁進し、技術を通じてグローバル社会への貢献を果たしてまいります。

写真:児玉 宣貴

児玉 宣貴

この度は、名誉ある賞を賜り、心より光栄に存じます。これまでご支援いただき、共に開発に取り組んでくださった皆様に深く感謝申し上げます。今回の受賞技術は、パナソニックが長年にわたり開発・進化させてきた通信技術であり、開発と並行して国際標準化を推進することで、グローバルにご利用いただけるよう努めてまいりました。今後も、さまざまな業界に貢献できるよう、日々研鑽を重ねてまいります。

写真:池田 浩二

池田 浩二

この度は大変名誉ある賞をいただき、誠に光栄に思っております。受賞技術は既存のケーブルインフラをそのまま活用し、大規模かつセキュアなIPネットワークを構築できる点に大きな効果があります。この技術が社会のさまざまなインフラに広く展開され、持続可能な未来の実現に寄与できることを願っております。これもひとえに、関係者の皆様のご支援とご協力のおかげです。心より感謝申し上げます。

『モバイル機器向け多層用フレキシブル基板材料「R-FR10」の開発と実用化』

受賞者

小山 雅也 パナソニック インダストリー株式会社 アドバンスドマテリアルビジネスユニット
松崎 義則 パナソニック インダストリー株式会社 アドバンスドマテリアルビジネスユニット
神谷 浩史 パナソニック インダストリー株式会社 アドバンスドマテリアルビジネスユニット

開発技術の成果

受賞者らが実用化した「R-FR10」は、スマートフォンの高機能化に伴うフレキシブル基板の多層化・薄型化要求に応える革新的材料である。従来のFCCL構成では薄型化に限界があったが、前述の新構造を考案し、絶縁性確保のため添加剤を最適化した。さらに接着剤層をポリマーアロイ化し、耐薬品性・高耐熱性・屈曲性を両立させた。これにより従来比30%の薄型化を達成し、スマートフォンの光学手振れ補正用コイル基板として採用された点が評価された。今後は折り畳みディスプレイや補聴器など医療機器への展開を加速し、モバイル機器の進化と社会への貢献を目指す。

開発技術の概要

スマートフォン向けフレキシブル多層基板は屈曲性・薄型化・多層化が同時に求められる。従来のリジッドフレックス構造はプリプレグと呼ばれる接着剤層の厚みが薄型化を妨げ、加工条件も難しく工数が多かった。受賞者らが開発した「R-FR10」では、接着剤層とポリイミド(PI)層を見直し、PI骨格の変性と、銅箔にPI層を塗布するキャスティング工法の採用により、PI層成膜技術を確立し、薄型化を実現した。具体的には一般的な4層リジッドフレックスにおいて構成比約30%の薄型化と、製造工程の大幅簡略化による工数低減(約△30%)を実現した。
※プリプレグ:樹脂をガラス織布に含浸させ半硬化状態にさせたもの

モバイル機器向け多層用フレキシブル基板材料「R-FR10」の特徴

【関連リンク】

受賞者コメント


写真:小山 雅也

小山 雅也

この度は大変名誉ある賞をいただき、誠に光栄に思っております。また、開発に携わったすべての方に感謝申し上げます。本製品は現在カメラモジュールの高機能化に貢献している状況でありますが、「小型化、薄型化」に寄与する製品であることから医療分野やモバイル製品の更なる高機能化に寄与できると考えております。今後も引き続き、日本の材料メーカーとして様々な分野で貢献できる材料開発を推進して参ります。

写真:松崎 義則

松崎 義則

この度は大変名誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。 これまで製品開発・市場開発・製品量産化にご支援くださった多くの皆様に、深く感謝申し上げます。
本製品は、薄型/多層の市場ニーズに高充填/高精度板厚/フレキ材というユニークな特性を提供し、モバイル分野・医療分野において高機能化に貢献してまいりました。 これを機にさらなる貢献領域拡大と産業発展に寄与できるよう、引き続き邁進してまいります。

写真:神谷 浩史

神谷 浩史

この度は大変名誉ある賞をいただき、誠に光栄に思っております。これまで開発、量産にご支援くださいました皆様方には改めて深く感謝申し上げます。本商品は近年のモバイル市場における多機能化、薄型化の両方のニーズに対応した材料です。今後も多くの需要が見込まれており、大変有難く感じております。本商品の更なる安定化、増産に向けた対応や様々な産業分野の発展に貢献できるよう、技術開発を推進してまいります。